364話 企んではいますけど、何か?
「いやいや、チヒロがそう言う顔をしている時って、何か企んでいる時だよね。」
ちょっと、待ってください。
そんなことないですけど?
「それで?何をしようとしているの?」
私が何か企んでいること前提に話を進めてくるんですけど。
この王子。
まぁ、企んでいますけど。
「いえいえ、何も。ただ、プティテーラの滞在も結構長くなってきましたし、せっかくなので、異世界交流をしたいなと思いまして。コスモス職員として、仕事も果たさないといけませんしね。」
「…なにか、恐ろしいことを考えている?」
「いえいえ。シン王子とアルビナ令嬢の婚約発表の邪魔は、しませんよ?」
そんなことする訳ない。
シン王子とアルビナ令嬢のことは、それはそれは苦労したのだから、収まる所に収まってほしいもの。
「そう?まぁ、何かあったら、僕に声をかけて。この会場にいるから。」
「ありがとうございます。」
ナンナル王子と別れ、私は壁沿いに置いてあるドリンクを取りに行った。
「人と関わるんじゃなかったのか?」
「関わるけど?」
「これじゃあ、外交パーティの時と同じで、壁の花だぞ?」
「どの人に声をかけるかが重要じゃない?社交界にも、いるんでしょ?世の中を回すほどの影響力を持った人たちが。」
出来れば、その影響力を持った人の周りの人たちに声を掛けられると、理想なんだけど。
新しい物に飛びついてくれそうな人たちに声を掛けたいな。
「男に声をかけるのもありじゃないか?」
「そうだね。」
ブラーさんのボトルは、好きな人にプレゼントする物。
プティテーラの雰囲気では、アイネさんとマニさんの例があるため、男性からアプローチをすることが多いみたいだし、男性に興味を持ってもらうことは大事だろう。
「おい、あそこにいるの。」
「あ!朝から、お世話になったし、挨拶をしに行こう。」
私たちと同じように壁沿いでドリンクを選んでいた、男性の方へと歩いていく。
「ごきげんよう。お会いできて、光栄です。」
私が後ろから声をかけると、びっくりしたように振り返り、眉間にしわを寄せる。
「ちょっと、驚かせないでくれる?」
「すみません。ブラーさんのことが見えたので、思わず。」
えへへと笑っていると、ジロジロ、ウロウロと私とネロの周りをグルグルと周り、全身をチェックしている。
「へぇ、いいじゃん。さすが、俺。アピもなかなかやるね。」
服装チェックが本当に入ったんですけど。
貰ったものを身に着けていて、よかった。
着ていなかったら、本当に頭をスパンといかれていた所だろう。
「ドレスもアクセサリーも本当にありがとうございました。」
「別に。広告塔として、しっかり働いて返してもらうから。」
「それについては、了解しています。クラト公子からも聞きましたし。」
あっけらかんとして言うと、ブラーさんがまた険しい顔になった。
「なんで?とか思わないの?」
「それについても、この会場に来て、自分たちなりに納得しましたので、ちゃんとやりますよ。広告塔。」
やると言っても、どこまでできるか分からないけど。
さすがに格式高い人たちには、気後れしてしまうし。
「へぇ、じゃあ、任せようかな。それにしてもさ、首輪とか手錠とか、チヒロに話を聞いている時は、全然わからなかったけど、その話を聞いた後に、実際付けているところ見ると、なるほど…って思うね。本当に見えてきたし。」
「だから、その話は忘れてくださいって…そういう考えもあります…ってだけなので。」
その話はもう忘れて欲しい。
だって、このアクセサリーたちは、クラト公子を通じて、ブラーさんから貰ったものだ。
目の前に、いるんだから、そういうことを言うのはやめていただきたい。
恥ずかしいから。
「でも、今、僕が依頼しているわけだし…」
「大衆の面前で性癖を開花させないでください。」
「冗談だって。それで、今僕に声をかけてきた理由があるんでしょ?何?」
本当に冗談ですよね?
ケタケタと笑っている様子を伺いながら、小さくため息をつく。
「ボトルの名前って決まっていますか?それから、サンプルを今持っていたら、何本か頂きたいんですけど。」
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