35話 宝石のような飴の石
観光案内所から出て、噴水広場に向かう道を歩く。
道は、両端にマシュマロがずらっと並び、その間に、白いさらさらの砂糖が敷き詰められ、真っ白い砂の道を作っていた。
砂糖の道の両サイドには、カラフルな綿菓子の木が植えられていて、お菓子の並木道みたい。
…そしてさっきから気になっているのだが、目の端っこにちらちらと映っている獣人のカップル。
獣の耳やしっぽが生えているから獣人と判断しただけなんだけど…。
獣人カップルは、この綿菓子の並木道で愛をささやきあっている。
いや、なぜ、ここで??
まぁ、分かるよ。
カラフルな、この並木道はとてもメルヘンで気分が盛り上がるのはわかる。
入ってすぐの所にある、興奮ポイントその1というのも分かるんだけど、一応ここ道路だし、道路のちょっと奥に、大きい噴水見えるし、より奥にはお菓子のお城が見えるのに…
なんで、こんな人目につくところでささやき合う?
お城でささやき合うと、成就するって言い伝えがあるなら、せめてそこまで待てばいいのに…。
あ、そこでも愛をささやき合うのか…
愛や、恋に燃えた気持ちは止めることはできないということか。
周りの人たちも、スルースキルがカンストしているのか、全然気にしている様子ないし
私だけ??
「人族と違って、魔物や獣の血が色濃く入っていると、ああ言うアピール激しいんだよ」
「え?あれ普通なの?」
「人前でやるかはともかく、駆け引きとかあんまり考えないんじゃないか?」
「じゃあ、どこでアピールしようが関係ないんじゃ…」
そういうのは種族の特性なんだろうな。
本人の性格もあるだろうから、全員がそうってわけでもないと思うけど。
「それに、弱いものが淘汰されていく獣の世界で、ああやって恋人ができるっていうのは、お互い相当努力したんじゃないか?」
へぇ、意外といい話。
じゃあ、思う存分イチャイチャしたいわけだよね。
周りも、そういうことが分かっているから、気にしていないのか。
温かい世界だなぁ
「まぁ、他に強いやつや秀でたやつが出てきたら一発で略奪される可能性があるから、今のうちに楽しんでおけよって周りは思っているんじゃないか?」
台無しである。
さっきまでいい話だったじゃん。
やっぱり、種族間の価値観って違うもんだね。
異世界で生活する人たちを知るには、まだまだ難しいかもしれない。
並木道を歩き、そこを抜けると開けたところに出る。
エリア5の噴水広場に到着である。
広場中央には、西洋風の大きな噴水。
噴水のオブジェは、透き通ったガラスの様なもので来ていて、上段、中段、下段と3段の器に分かれ、下に行くにつれて徐々に器が大きくなる。
ガラスの一番上から、水が噴き出し、流れ落ちると、噴水の水の形が徐々に膨らんでいくようになっている。
下の部分は、白い淵ができており、水がたまるようになっている。
マップで説明を見ると、噴水のオブジェは透明や白の飴で出来ており、噴水に流れる水は、甘い炭酸水の様だ。
水が溜まっている所を覗き込むと、底にキラキラした宝石のような石が沈んでいる。
光に反射して、炭酸水が少し色づいているように見えた。
あの底に浮かんでいるキラキラした石はなんだろ?
「宝石みたい」
「カラメオという宝飴の石で、ここの特産らしい」
「へぇ、こういうものをプレゼントでもらったら、カップル大興奮なんだろうな。」
「カラメオの加工品もこの国では流行っているらしいな」
「特産品もあるし、観光地もしっかりあるのに、旅行客が減る理由ってなんだろ」
「さあな、道端で所かまわず愛をささやかれるのが嫌なんじゃないか?」
そんな元も子もないこと言わないでほしい。
恋愛をゴリ押ししてるとまでは言わないけど、“そういうジンクスあります”で売っている観光地でいちゃつくなは、難しいでしょ。
気になるけどね!
「そういう習性があるから気にしないんでしょ」
言い方には、夢があまりにもなかったが。
それに、広場を見ても、結構にぎわっているように見える。
データ上だし何とも言えないけど、あまり問題があるように見えないんだよなぁ。
気になりつつも、私たちは次のエリアへと向かうのである。
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