360話 ネロの美容室から離れられない
アピさんとファイさん、そしてブラーさんのデザインしてくれたドレスを洗面台の方で着る。
さすがにクラト公子の前で、服を脱ぐわけにいかなかったので…
フワフワとなびく袖に手を通すだけで分かる。
「どれだけいい素材を使ったんですか…」
確かに見立て通り、私の顔や体型に合わせて、服をデザインしてくれたらしい。
自分で言うのもなんだが…似合っている。
着る人に対して、最大限の気遣いをしてくれたんだろうな。
アピさんも、ファイさんも、ブラーさんも忙しいだろうに。
全てを着ると、さっきまでの寝起きでだらしなかった様子が全く感じられない。
髪の毛は、どうしようもないし、アクセサリーもネロにやって貰おう。
ドレスを着て、洗面台の方から、ネロとクラト公子がいる部屋へと戻る。
「おぉ、似合ってるな。」
照れずに、女の子にそういう事が言えるクラト公子に感動します。
リア恋を釣り上げそうなルックスしているんだから、少しは気を付けた方がいい。
ネロも私の方をじっと見ているので、ニヤリと笑ってネロに問いかける。
「どう?」
「いいな。似合ってる。色も服のデザインも、チヒロのために考えらえれただけあるな。」
似合っているって、そういう事ね。
でも、確かにそうだ。
異世界に来て、オーダーメイド品にお世話になるとは思わなかった。
「あの、このドレス着たはいいんですけど…本当にいいんですか?」
「名指しでものを貰っているんだから、着ないのはあいつらも可哀そうだから、パーティにはそれを着て行ってくれよ。」
そうだけどさぁ…
「そして、コスモスの外交と共に、しっかり火の街の製品を紹介してくれよ。歩く広告塔…いいじゃないか。」
「装飾品がいいんだから、それらに着られない様にしろよ?」
クラト公子はともかく、ネロに言われたくないんだけど。
キッとネロの方を見ると、ネロもおそろいのパステルグリーンのシャツを着ていた。
首元にさりげなくフリルが付いていて、ジャケットは白。
なんだか、某童話に出てくる白いうさぎみたいな…
メルヘンだけど、締まる所は締まっていると言うか…
「なんか…似合うね。」
「…勘弁してくれ。」
カッコいい要素は、すべてそぎ落とされてしまった様だけど。
とても可愛い感じが似合っている。
ネロも自分がメルヘンの服を着ていることを自覚しているみたいだが、脱がない辺りちゃんと、役割を理解しているのだろう。
「二人とも似合っているって。さすがだな。アピに衣装デザインの仕事を紹介してみようかな。ブラーのアクセサリー職人というのもアリだな。」
クラト公子は、自分の街の人たちに新たな可能性を感じ始めている。
とてもいい上司ですこと…
「さて、メイクと髪の毛だけど、どうする?」
「ネロにやって貰います。」
「ネロに?」
ネロをムギュっと捕まえて、頭を撫でると、ペシペシと一生懸命、撫でる手を叩こうとする。
「ネロって、とっても器用なんですよ。プティテーラで開かれたパーティの髪型は、全部ネロにやって貰いました。朝、暇な時も、ネロがセットしてくれますし。」
「…それ、器用で済ませていいのか?」
でも、ネロが何でもこなせる超人猫というのは、今更だ。
「大丈夫です。ネロですし。」
クラト公子に向かって、グッドポーズをし、ネロを連れて鏡の前に行く。
「また俺か…」
「お願いしまーす。」
「少しは自分でやれよ。」
呆れた顔をするネロだけど、そっと私の髪の毛に触れて、スッと梳いてくれた。
さすがに私も自分で出来ないわけではないのだ。
元の世界では、年頃の女の子だもん。
髪のアレンジはちゃんとやっていたんだ。
でも、ネロがあまりにも丁寧に髪の毛に触れてくるので癖になると言うか…
それに、ネロの髪の毛のアレンジも、私の要望に答えつつ、私のことをしっかり考えてアレンジをしてくれる。
そうこうしているうちに、ネロの美容室から抜け出せなくなっているんだけど。
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