358話 婚約発表の朝
「ん…朝…」
動物たちに囲まれて、幸せな一日を過ごした昨日。
そして今日、ついに、シン王子とアルビナ令嬢の婚約発表パーティが行われる。
私のイメージだと、婚約発表のパーティは、婚約披露宴と同義。
婚約しましたと言う、世間へのアピールを目的とするパーティ。
一体どんなパーティになるのかな?
「うん?なんか、外から音が聞こえてくる。」
ベッドを降りて、窓に近づき、外を見てギョッとする。
「なにこれ?」
「ん…なんだ?」
私の声にネロも目を擦りながら、窓の方へと近づいてきた。
「うわ…相変わらず、シンも令嬢もやることが派手だな。」
「そうだね。」
街を上げてシン王子とアルビナ令嬢の婚約を祝う週間が、婚約が発表されてから今日まで行われてきたわけだけど…そのお返しなのかな?
街には、グレードアップした装飾と空から降ってくるウェディングあふれる花ビラ。
「この花びら、今日一日中、降らすつもりなのかな。」
「まぁ、魔力で出来た花びらだから、降り積もることもなく綺麗に消えるだろうけどな。」
ほんと、魔力って便利だよね。
二人でボーっと外を眺めていると、呼び鈴が鳴る。
「…?クラト公子?」
「まぁ、この時間だろ?そうだろうな。」
「はーい。今行きます。」
パーティ当日まで、案内をかって出てくれるなんて、もう真面目の極みだね。
やれやれと思いながらも、待たせると悪いので、部屋のドアの方へと歩き、ドアを開ける。
「よ、待ったか?」
案の定、外で待っていたのはクラト公子で、乾いた笑いが出てきた。
「今日もお勤めご苦労様です…」
「俺もしつこいとは思ったんだけど。今日は、他の世界からも要人が来るから、一応な。」
要人?
「今日って、普通の婚約披露パーティーですよね?」
「あぁ、ただ、世界を開いたばかりだろ?だから、こぞって他の異世界からもお祝いの品が届いたんだよ。この世界に向けての発表だったが、外交も混ざったことによって、下手なパーティが出来なくなってさ。それで、みんな大忙しだったわけ。」
「本来、外交始まりたての世界なら、そこまで注目も集めないだろうが、プティテーラの外交パーティは、二つのゲートを繋ぎ、多くの世界がプティテーラに訪れていた。ただでさえ、異世界界隈で話題だったプティテーラの王族…次期王の婚約が決まれば、繋ぎを持ちたいと言うのが普通だからな。」
ただ嬉しいだけにならないのは、しょうがないことなんだろうけど。
「そう言えば、コスモスのゲートからも要人が来るらしいぞ。シンに一応伝えておいた方がいいと言われてさ。」
「コスモスからですか?」
「異世界転送装置を利用してくるらしい。」
誰だろ?
…っていっても、私もコスモス側のことを知っているわけではないからなぁ。
「挨拶した方がいいってことか。」
「誰が来るか分からないんだけど…」
もっと言うと、姿かたちもどこの世界出身の人なのかも多分、分からないだろうな。
私が知り合った人って、そんなに多くないし。
「誰が来るか分からないし、判断はネロに任せるね。要人ということは、私たちから挨拶することは、必須だろうから。」
「あぁ、俺も分かる範囲で、対応する。それにしても、コスモスも送り込んできたんだな。」
「外交パーティの時、情報不足により、やられたい放題だったから、仕方ないんじゃない?」
今思い出しても、あのパーティ、敵だらけだったもんね。
「なんか…悪かった。」
「クラト公子が、悪いわけではないので、謝らなくても結構ですって。私も外交知識に乏しかったんです。」
「それに、外交を開いたこともない世界に、外交で上をいかれるようじゃ、ダメだろ。仮にも異世界機構に所属していて、異世界のやり取りに長けていると言われているコスモスが。」
私とネロが、シレっというと、クラト公子はより顔を歪ませた。
「お前たち、怖い…」
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