354話 オオカミさんをモフりたい
しばらくナトゥラ上空を飛び続けると、気球の横を飛んでいた天の使い達が、飛ぶ方向を変えて、翼を大きくたなびかせる。
「おぉ…迫力満点ですね。」
「バルーン形態のままだったら、風にあおられて、詰んでいたな。」
小型飛行機形態でも、揺れを感じるくらいだし、そうなんだろうな。
「ここで天の使いとは、お別れですかね?」
気球の周りをバサバサと飛び回っていた天の使いが、気球から離れていく姿に少しだけ寂しさを覚える。
「普段だったら、天の使いをこんなに近くで見ることもないぞ。」
「そうなんですか?だったら、運が良かったんですね。」
ナトゥラの新エリア開放という、普段はできない体験をしたと言うのに、さらに天の使いという、普通ではお目にかかれない鳥まで見られたんだから、運がいいでしょ。
「運がいいついでに、他の動物も見れたらラッキーですね。」
「オオカミやクマも普段は解放されていないエリアにいるし、立ち入りをしている職人たちでも、なかなか見ることが出来ないんだからな?そう簡単に見つけられたら、困るぞ?」
そっかぁ。
他の動物を見ることは、難しいかなぁ。
プティテーラならではの生物を見られたことだし、こればっかりはしょうがないかなぁ…とあきらめムードの私。
「あれ、そうじゃないか?」
気球の中に座り込み、寛ぎモードにでも入ろうかと思った時に、ネロが指を指した。
「なに?」
「下にいるの、なんかの動物だろ?」
え?
私は、ネロが示す方を見る。
するとそこには、白い大きな物体の集合体。
「ほんとだ。なんかいる。」
「しかも群れだな。少し低空を飛んでみるか。」
そういって、小型飛行機を下降させると、さっきまで上空に居すぎて見えなかった物体が見えるようになってきた。
真っ白い個体で、フォルムから見るにオオカミさん。
オオカミと言っても、私が知っているサイズ感ではないけれど。
二メートルくらいあるのかな…
「おぉ…本当にいたよ。」
「でか…」
一番先頭のオオカミさんは、私たちが乗っている小型飛行機型の気球なんて、腕で薙ぎ払えてしまえそうなサイズ感。
「こいつは、ホワイトムーンウルフだな。」
白い月のオオカミってことかな?
「この狼たちは、月に向かって吠える習性があるんだよ。それで、その名前なんだろうな。」
「月に向かって吠えるなら、このオオカミさん達は、発見しやすいのでは?」
音を頼りにすれば、わざわざ探さなくても、見つかる気がするけど?
「ナトゥラは基本的に夜の滞在は許可されていない。それに月に向かって吠えている時は、いつも以上に凶暴だからな。近づかない様に決められているんだよ。」
あぁ…そっか。
「じゃあ、夜以外は、そんなに狂暴ではないんですね。」
気球越し眺めるオオカミさん達は、気球の存在が珍しいのか、キョトンとした感じで見つめて来ていて、凶暴さなど欠片も見当たらない。
「いやいや…野生のオオカミだぞ?そんなわけあるか。」
「でも、全然攻撃してくる気配がありませんけど…それに、奥の方にいるオオカミさんは、お腹を見せて寝転んでいますけど…」
正直、オオカミって、こんなに大人しいんだと思わずにはいられないんだけど。
手前の方のオオカミは、一応警戒をしているのか、気球の方から目を離さず、ジッと見つめてきているが、群れの後ろの方にいるオオカミになると、綺麗にお座りをしている子もいれば、地面にゴローンと横たわっている子もいる。
そして、顔をクシクシと撫でつけている子もいるし、何匹かでじゃれ合っている様子も見られる。
これは、どう見ても狂暴さが見られないんだけど。
そう…これは、ネロが寛いでいる時と大変似ている…
「うわぁ…ネロがいっぱい。」
「誰が怠け者だって?」
「誰も、そんなこと言ってませんけど…」
自分でツッコんでいるのであれば、自分がそう思っているのでは?とは、言わないでおいてあげよう。
ただ、このオオカミさん達の集団を見ると、こう…
モフモフしたい気持ちが出てくるよね。
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