34話 お菓子の国は、ホントにお菓子で出来ていた
ポーン
転移先へ、到着を告げる音が鳴る。
体感時間、ほぼ一瞬。
相変わらずの移動の速さに感心してしまう。
ここから先が、異世界なのか
お菓子の国 ミシュティ
どんなところなんだろう。
「行くぞ」
なかなか踏み出さない、私を見てネロは、異世界転移装置から外へ出ることを促す。
「まって…。…!わぁ…」
装置の扉が開くと、そこは夢の国。
入り口には、クルクルとねじを巻いたカラフルなキャンディーが、アーチ状のゲートを作っており、そのトップにはホワイトチョコレートの看板が付いていて、文字が書かれている。
国を守るように建てられている塀は、白いチョコレートブロックが積み上げられている。
トラジスの眼鏡をつけ、看板を見ると、ミシュティと書かれていた。
入り口だけでも、お菓子の要素満載。
キャンディーのアーチを通り、中に入ると、これまた壮観。
まるで、テーマパークの様。
一番、目についたのは、国の中央にあるお菓子の城。
遠くから見るだけでも、夢が詰まっているのが分かる。
後で絶対に見に行ってやる。
楽しさと期待に胸を躍らせていると、ネロから声がかかる。
「観光案内所がある、そこに声をかけるぞ。」
ネロの言葉に頷き、アーチを入ってすぐの右手側に、目を向ける。
そこには、パステルカラー調のアイシングクッキーで出来た小さな家。
ハートや星の型抜きクッキーが所々に飾りつけされている。
ドアの所には小さいプレートが掛けられていて、そこには、観光案内と書かれていた。
ドアをノックし、ゆっくりと中へと入る。
部屋の中の机や椅子もしっかりお菓子で出来ている。
受付のカウンターのようなものがある。
ここから声をかければいいのだろうか。
どんな人が出てくるんだろう…
「こんにちは…」
「はぁい」
部屋の奥の方から、甘くふんわりとした声がした。
パタパタと音をたてて出てきたのは、服装がきっちりとした、雰囲気がふんわりとした女性。
身長は高く細身、髪はパステルピンクのロングストレート。
白のワイシャツに、金のボタンが2つ付いたネイビーのスーツベスト、下は金の横ラインが裾に入ったセットアップのネイビーのパンツスーツ。
かっこいい…
「お越しくださりありがとうございます。」
ご丁寧な挨拶をされてしまい、慌てて私は自己紹介をした。
「はじめまして、コスモスの観光部・企画宣伝課から来ました、有間千紘と言います。」
「同じく、ネロです」
ネロの丁寧な対応に驚き、思わずネロの方を向いてしまいそうになった。
「あら、コスモスの方でしたか。私は、ミシュティ観光職員のベニエと言います。本日は、お仕事で?」
「私が、初めての異世界旅行なので、観光半分、お仕事半分です。」
「そうでしたか、初めての場所にミシュティを選んでいただきありがとうございます。」
入り口での対応がすごく丁寧で、サービスも行き届いている。
こういう所も、なんかテーマパークっぽいって思う。
夢を壊さないように働く人たちって感じ。
「では、こちらが観光マップになります。お渡ししておきますね。」
「ありがとうございます。」
「何かありましたら、ここに声をかけていただくか、電話でも承っていますので、ぜひお気軽にご連絡ください。」
ベニエさんにお礼を言って、観光案内所を出る。
ベニエさんは、ミシュティがほんとに好きなんだろうな。
だって、ミシュティの話をするたびに、花が開いたように美しく笑うんだ。
「どこいく?」
「マップを見ろ。」
ネロに言われて、マップを開く。
ミシュティの主なエリアは六つ。
エリア1、アミューズメントエリア
エリア2、城エリア
エリア3、花の庭園
エリア4、商業エリア
エリア5、噴水広場
エリア6、森エリア
どれも楽しそうだし、どこも惹かれる。
「ネロは、どこから行きたい?」
「お前は?」
回るなら効率よく回って、楽しみたい。
だとすると一番近い
「エリア5の噴水広場だな」
ネロの言い当てに、良く分かったなぁ、と思いつつ、私は大きく頷くのだった。
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