351話 何かの縁を感じました
ラックさんに気球を出してもらい、改めて説明を受ける。
今回出してくれた気球は、一番初めに乗った普通の気球。
そして、今回の操縦者はクラト公子になった。
「私でも運転できますけど?」
「頼むからやめてくれ。」
という、私とクラト公子のやり取りがあり、ネロにも肩にポンと手を置かれて、首をフルフルと横に振られたことにより、今回の操縦は諦めるしかなかった。
「それじゃあ、気を付けて行って来いよ。クラト公子も二人のことをよろしくお願いします。」
「あぁ、任せておけよ。」
「じゃあ、行ってきます。」
一度乗ったこともあるので、スムーズに搭乗することが出来た。
いつもの通り、ラックさんは旅立つまで見送ってくれる。
「じゃあ、行くぞ。」
クラト公子の合図とともに、気球は上昇していく。
下にいるラックさんは、どんどんと小さくなっていった。
「ラックさーん!いってきます。」
「おぉ!楽しんで来いよ。新開放されたナトゥラもいいところだぞ。」
「ありがとうございまーす!」
下に向かって手を振ると、背中のあたりをクッと引かれる。
「だから、落ちないって…」
「そう言いながら、乗り出し過ぎだ。このままだと風にあおられたタイミングで、落ちる。」
毎度のことながら、とても過保護なネロ。
そして、気球の中に体をしまうと、大きく風にあおられ、気球が揺れる。
「おぉ…」
揺れに驚き、気球の中にぺたりと座ると、ジト目のネロがこちらを見てきた。
「わぁ…分かったって。ありがとう、ネロ。」
「分かればいい。」
「気を付けろよ?上昇すればするほど、揺れる可能性が上がるんだからな。」
気球を操縦している、クラト公子からもお言葉をいただいたので、大人しくしていようと思った。
「それで、どこに行くんだ?」
「世界を覆う滝を見たいです。」
「世界を覆う滝?それこそ、どこのだ?プティテーラを一周取り囲むほどの大きな滝だぞ?」
見れればどこでもいいんだけど…
「アクアルテ方面とかですかね?」
「アクアルテか…了解。あの辺は、ナトゥラの中でも一番自然が豊かな場所だ。緑とそして、いくつもの滝が連なった神秘な場所だぞ。」
「少しだけ見たことあるんですよね。その時も綺麗だったんですけど、世界を覆う滝付近は、見ることが叶わなかったので、今回はぜひ見たいと思って。」
「なるほどな。じゃあ、アクアルテ方面に向かうか。」
気球を操縦をして、ゆっくりと曲がり、向かう場所を決める。
エメラルドグリーンの風景を思い出す。
前回見られなかった、動物たちを見ることが出来るだろうか?
シン王子は、鳥やクマ…オオカミが出ると言っていたな。
立ち入り禁止区域だったし、見ることはかなわないと思っていたけど、せっかくチャンスを得たんだから、見てから帰りたいよね。
鳥はともかく、クマやオオカミなんて、そんなに見られる機会なんてないし。
「ナトゥラには、来たことがあるんだったな?」
「はい。大きい滝や、湖は、シン王子に案内してもらいました。」
「シンが世話になったと言っていた。月の約束と関係があるんだろ?」
ん?
クラト公子も月の約束にこだわりがあるのかな?
「俺は、月の約束にそこまで、こだわっていた訳じゃない。シンほどの執念もなかったしな。だけど、月の約束というプティテーラの謎を解いたのが、プティテーラに来たばかりの観光職員だと言うことに驚いているんだよ。あれだけこだわっていた、シンですら、ここまで分らなかっただろ?」
うーん。
私が月の約束の謎に迫れたのも、たまたまと言えば、たまたまだしなぁ…
私も気になってはいたし、その先の真実とやらを知れたことは、良かったけど、私が解けたのは、外部からの視点で見ることが出来、月の約束について、客観的視点に立てたからだし。
「灯台下暗し…ですかね?」
「なんだ、それ。」
「遠すぎても見つけることが出来ないけど、逆に近すぎても見つけることが出来ない…みたいな?…とはいっても、シン王子の今までの蓄積がなければ、どうにもならない事だらけでしたし、やっぱり、シン王子の執念勝ちですよ。もしかしたら、ちょっとだけ頭が使える私たちがこの時期にプティテーラに来たのも、何かの巡り合わせかもしれませんしね?」
私が、そう言うと、クラト公子は、一瞬キョトンとした顔をして、その後、盛大に笑った。
「自分で言うか?」
「…私もそう思います。」
自分で何を言っているんだ…という感じだけど。
それでも、縁を感じずには、いられないでしょ?
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