349話 マシンガン説教とは何ですか?
「おーい、何やっているんだ?置いていくぞ?」
「案内人が、客を置いて行かないでください…それでは、ルアルさん、また会いに来ます。その時にいっぱいお話ししてくださいね。」
可愛い恋バナを聞かせてください。
最近、振り回されるばかりだったので、普通の恋バナを聞きたいです。
「はい!ぜひ、お願いします!」
最後にいい笑顔が見れたので、私的には大満足です。
クラト公子に急かされて、私は観光案内所を出る。
外に出ると、クラト公子とネロが待っていた。
次の観光案内所に向かって、歩きだす。
ゲート近くの観光案内所から、ナトゥラの観光案内所は近いため、徒歩での移動だ。
「なんの話をしていたんだ?」
「別に、何でもないよ。」
「ルアルが可愛い顔をしていたな…」
クラト公子…
そんな恨めしそうな顔をするくらいなら、最後までクラト公子がしっかりボトルの話をしてあげれば、良かったと思います。
そうすれば、クラト公子が言う可愛らしい笑顔とやらが、見られたはずなのに。
「残念でしたね。クラト公子。ヘタレを発動するから、見逃すんです。」
「ヘタレ?そんなことしてない。しっかり約束通りに渡したじゃないか。」
「もしかして、本当に忘れていただけですか…?」
「忘れていた…何を?」
本気か。
本気だったのか。
「あのボトル…渡しただけだと、意味が全く伝わらないんですけど…」
「あ…」
あ…じゃない。
本当に忘れていたんかい。
「やばい…ルアル、なんか言っていたか?」
「ルアルさんは、観光案内人の仕事をしているルアルさんに商品紹介をしに来ていると思っているみたいでしたけど…?」
「えぇ!?商品紹介?そんなことする訳ないだろ?毎回、ルアルに俺が時間をかけて選んでいるんだからな。」
それが、伝わっていませんって…
「クラト公子は、言葉足らずなんですよ。渡すだけでは、意味がありません。」
「渡せたことによる達成感で、すべてが飛んだ…」
だろうなとは、思ったけどね?
「まぁ…商品紹介はしっかりしてきましたけどね、私が。」
「ん?商品紹介をしてきた?」
「はい。一応、ブラーさんに相談を受けた身としては、しっかりとした商品意図が伝わらないと困りますので。チャームが欠けている事ぐらいは、話しておこうかと思って。」
「それ…限りなく…言ってないか?」
顔を引きつらせるクラト公子に、にっこりと笑顔で答えてやった。
「はい。私が言える範囲で、商品の魅力を紹介してきましたよ。もちろん、クラト公子がルアルさんの、対になるボトルを所持していることは、言ってないので安心してください。」
「だから、それ、ほとんど言っているようなもんだろ?」
「クラト公子が、はっきり言わないのがいけないんです。どうするんですか?これで、商品紹介をされたルアルさんが、別の話を観光客にしてしまったら…せっかく練った話が台無しになってしまいますよ?いいんですか?」
良くないでしょ?
「…これか。シンが言っていた、チヒロのマシンガン説教。」
…なんだ、その不本意なネーミングは…
それに、別にシン王子にもお説教した覚えはないんですけど。
「一観光職員が、世界の王子様にお説教なんかできるはずないでしょ。」
「さんざん言いたい放題だと、シンは言っていた。」
シン王子…
「それに、クラト公子には、まだ言いたいことはたくさんあります。」
「まだあるのかよ。」
「当たり前です。私とネロを巻き込んだんですから、何とかしてください。」
シン王子とアルビナ令嬢は、私とネロを盛大に巻き込んでくれたので、言いたいことは言わせてもらった。
クラト公子の恋路にも、片足くらいはツッコみだしたから、今後両足がどっぷり浸かるようなら、言いたいことは言わせてもらうつもりだ。
「まぁ…分かった。」
「ナトゥラの観光案内所に着いたぞ。」
ゲソッとするクラト公子を気にせず、ネロは観光案内所の方へと飛んでいった。
「ネロもドライだな…」
「それは、ネロなので、仕方がありません。」
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