348話 半分に欠けたチャームの行方
「ルアルさん、ありがとうございました。」
私たちは、ルアルさんおススメのナトゥラ観光へ行くことに決めた。
次の目的地は、ナトゥラに行くために、もう一つの観光案内所に行って、気球を借りに行かないといけない。
「いえいえ。楽しんできてくださいね。クラトもしっかり案内するんだよ?」
「分かってる。」
ルアルさんとクラト公子、そんなに悪い雰囲気じゃないよね?
さっきまでは、いったい何だったのだろう?
「ほら、ナトゥラの案内所に行って、気球を借りないといけないだろ?さっさと行くぞ。」
そして、急にやる気になるクラト公子。
「分かりました。行きますって。」
ブラーさんのボトル、渡さないのかな?
「あ、そうだ。ルアル。」
「なに?」
「これやるよ。」
ポケットの中から、ブラーさんから貰ったボトルを出し、机の上にコトンと置いた。
「なにこれ?」
「おしゃれなボトルらしいぞ。」
「かわいい。」
ボトルを持ち上げて眺めるルアルさんは、とても可愛い。
「だよな。」
ルアルさんの顔を見て、顔をほころばせるクラト公子も可愛い。
やるじゃないか。
クラト公子。
クラト公子もやるときはやる男だったと言うことか…
「案外、平気そうだな。」
「ね、さっきまでヘタレ公子だったくせに、全然平気そうで心配して損した…」
「心配してたのか?」
それは、一応心配してましたとも。
ルアルさんの所に行くって決めたの、私だったしね?
ネロと二人で、クラト公子とルアルさんの様子を見守る。
「これ、もしかして、ブラーの所の?」
「そう。」
「へぇ、ブラーこういうのも出し始めたんだ?いいね、かわいい。」
和やかムードの会話に思わずほっこりしてしまう。
「観光案内人として、こういう可愛い物は紹介しやすいな。もうすでに発売されてるの?」
「いや、まだ。」
「そうなんだ。ありがとう。観光案内人として、いい仕事が出来そう。」
あれ?
これ、好意として、ルアルさんにうまく伝わってる?
観光案内人にいい商品紹介した…みたいになってませんか?
もしかして、クラト公子ったら、プレゼントを渡す意図をうまく伝えられてないとか?
それはダメじゃない?
それにさ…ブラーさんのボトルって、二本一対だよね?
クラト公子のボトルは、どこに行ったんですか?
その話をしないと、お揃いの意味ないでしょ。
それだと、チャームが半分に割れた、ちょっと変わったボトルになってしまうんですけど。
「さて、そろそろナトゥラに行くか。」
とてもいい笑顔で、クラト公子は次を促してきた。
この公子。
もしかして、渡せたことに満足して、ボトルの説明をするのを忘れている?
「じゃあな、ルアル。また来る。」
「え?あぁ…うん。またね。」
クラト公子は、そのまま観光案内所を出てしまった。
ルアルさんも困惑だよ。
クラト公子から受け取ったボトルをじっと見つめて、複雑そうな笑みを浮かべた。
おっと…?
「あ…すみません。ナトゥラの旅も楽しんできてくださいね。」
「あの…ルアルさん。もしかして…クラト公子のこと…?」
私が公子の名前を出すと、ピクッと体を震わせ、そしてにっこりと笑う。
「あー…気が付きますよね。観光案内所って、世界の端にあるから、観光客の方々以外とは、そんなに会うことがないんですけど…クラトは、時間があれば会いに来てくれて、いろんな話をしてくれるから、私、どんどんクラトが来てくれることが楽しみになってしまって…」
おいおい…
クラト公子、脈ありだよ。
「でも、クラトは、仕事として、ここに来てくれていることは、分かっているので、なんだか複雑というか…ダメですね…」
そして、クラト公子の想いは、伝わっていないんですけど。
ちょっと、クラト公子。
ルアルさん…
あー…言いたいけど、私が言うのは違うよね。
「ルアルさん。その、ボトル…星空みたいですね。」
「え?あ…はい!」
「私も、ブラーさんから貰ったんです。そのボトル。コンサル料で。」
私がブラーさんから貰ったボトルをルアルさんに見せた。
「ほんとだ。夜空のボトルですね。」
「はい。ちなみになんですけど、これ、ネロとお揃いなんです。それでですね…このチャームをネロの物と合わせると、ハートになるんですよ。」
「え…?」
私は、半分になっているチャームの部分を指さして、微笑む。
「ルアルさんのもチャームが半分に欠けていますよね。」
「ほんとだ…」
「その半分、誰が持っているんでしょうね。」
ハッとした顔で、ドアの方を向くルアルさん。
このくらいは、言ってもいいでしょ?
「フフ…誰が持っているんですかね…」
そして、ドアの方を見ながら、照れくさそうに笑うルアルさんが、とても可愛かった。
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