346話 ヘタレ王子とヘタレ公子?
「それで、今日の予定はどうするつもりなんだ?」
「クラト公子…もしかして、今日も付き合ってくれるつもりですか?」
やはり、クラト公子は、お暇説を推そうかしら?
「まぁまぁ…せっかくだし一緒にプティテーラを周ろうよ。」
何がせっかくなんだろうか?
いくらシン王子に頼まれたとはいえ、ここまで連日一緒に行動するとは、シン王子も思ってなかったと思うけど。
それになぁ…
「今日は、プティテーラについて聞きに、観光案内所に行こうと思ってて。」
「観光案内所…?それってどっちの…?」
ごくりと息をのむクラト公子。
だよねぇ、気になるよねぇ。
プティテーラのことを聞きに行くんだ。
それは、もちろん。
「ゲート前の観光案内所ですけど?クラト公子も一緒に行きますか?」
「えっ?」
何だろう…その反応。
「いや、俺がいるし、観光案内所に行かなくても別に案内できるよ?」
「観光案内人というプロがいるのに、なぜクラト公子を頼る必要が?それに久しぶりに会いたくなってしまいまして。ルアルさんに。」
私がルアルさんのことを告げると、クラト公子の体がビクッと反応し、顔を引きつらせる。
「ねぇ…ブラーさん。」
「なに?」
だらだらと変な汗を流しながら、あーだこーだとブツブツ言いだしたクラト公子にばれない様にブラーさんに近づく。
「あの…クラト公子の状態が異常なんですけど…」
「あの様子…本当に好きなのか?」
ルアルさんを恐れているようにすら、見えるんですけど。
「あぁ、昨日二人が帰った後に、二人の案を採用して作ったんだよ。ペアボトルを。」
「へぇ、クラト公子、思ったより行動が早かったですね。」
なかなか思いを伝えられない恋愛下手と聞いていたから、もう少し時間がかかると思っていたけど、やるときはやる男だったか。
「馬鹿か。そんな訳ないでしょ。あのクラトだよ」
あぁ…そうなんだ。
「なら、なんでボトルを?」
「ボトルを作るところまでは決意したんだよ。ボトルを。」
「はぁ…?」
ボトルをブラーさんに作って貰ったら、後は渡すだけでは?
なぜそこでため息をつく。
そして、なぜ私は罵倒された?
「恋愛において、クラトが決意することが珍しいから、僕もはりきっちゃってさ。昨日のうちに完成させたんだ。そうしたら、クラトが、ありがとうってすごい笑顔で僕にお礼を言って来てさ。」
ほうほう。
良い話じゃん。
良い友情話だけど?
「僕も嬉しくなって、いつ渡すんだ?って聞いたら、次会った時に渡すって言ってさ。じゃあ、いつ会うんだ?って聞いたら、いつか会うでしょ。って言ったんだよね。それとなく、いつも会いに行くクラトが、いつか会うっておかしいでしょ?あれ、渡す気ないよ、絶対。」
おいおい…
そこまでこじらせているのか、クラト公子。
「それで、当分会いに行くのを止めようと思った矢先に、二人がルアルに会いに行くって言ったから、焦っているんじゃないかな?」
それであんなに顔色悪く、ガタガタ震えて、何かにおびえるような子ウサギのようになっているんですね。
いつものさわやかな男気は、どこ行った?
「あぁ…なるほど。」
ルアルさんに会う心の準備をしてなかったけど、唐突に会う機会を得てしまったってことだよね?
「公子とシンは反対だと言っていたが、ヘタレた部分は変わらないかもな。」
確かに。
私も散々シン王子には、ヘタレ王子さっさと何とかしろよ…と心の中で…いや、いろんな勢いで言ったことがある気がする。
そういう時のシン王子と今のクラト公子は同じ匂いがするぞ?
シン王子の時は、盛大に巻き込まれていたから、ぶっちゃけてしまっていたけど…
「あの…クラト公子?私たちは、ルアルさんに会いに行きますけど、クラト公子が今日私たちに付き合って、ついてこなくてはいけない…ってことではないですよ?」
あまりにもブルブル、ガタガタと震えるので、ちょっとだけフォローをしよう。
「え…いや…あー…いや…。」
なに?
どっち?
「行く…」
がくんと肩を落としたクラト公子に、そこまで嫌ならもう少し心の準備をしてからでも遅くないのでは?…と思うのだった。
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