344話 さりげないアピールで宣伝をします
夜遅くにお店に滑り込んだ私たちを、神対応で迎えてくれたアピさんに、感謝しかない。
「アピさん…本当にありがとうございました。」
ゼイゼイと息を整えつつ、アピさんにお礼を言う。
間に合った…と言っていいか分からないが、何とか糸を買うことに成功した。
「いえいえ、お店のドアを叩かれたときは驚きましたけど、また来てくれて嬉しいです。プレゼントの具合は、どうですか?」
「ちょっとずつですけど、順調に進んでいます。」
「それは、良かったですね。」
あぁ…笑顔がとても癒しだ。
「あの…」
アピさんは、何か気になることがあるのか、目の前でソワソワとしている。
どうかしたのかな?
「どうかしましたか?」
「あの、気になっていたんですけど…」
「はい?」
なんだろう?
何か言いにくいこと?
「その、ガラス瓶は、どこの物ですか?」
ガラス瓶?
あぁ、そう言えば、ブラーさんから貰ったガラス瓶を走るのが邪魔だからと、腰のベルトの所に引っかけておいたんだった。
「この瓶は、ブラーさんから貰ったものなんです。」
「ブラーさんが…さすがブラーさんですね。とてもお綺麗です。」
私は、ベルトから二本のボトルを取り、アピさんに渡す。
それを大事そうに受け取って、顔を緩ませて、そのボトルを見ていた。
「とてもお綺麗なんですけど、なぜ似たようなボトルを二本も?」
アピさん。
よくぞ聞いてくれました。
「それは、一本は私に、もう一本はネロにくれたんです。ここに来るまでに走ったので、ネロが持っていると危ないから、私が預かっていたんですけど…ネロの方が少し小さいでしょ?」
ブラーさんの気遣いにより、ネロも持ち歩けるように、少しだけ私のより小さめに作ってくれたらしい。
さりげない気遣い感謝です。
「なんだか、おそろいみたいでいいですね。」
「みたいじゃなくて、お揃いなんです。」
「へ?」
細かい設定は、向こうで決めるだろうけど、せっかく興味を持ってもらったし、さりげなく伝えておこうかな。
「私とネロ…ニコイチみたいで、いいでしょ?」
ネロをグイっと掴んで、私の頬とネロの頬をくっつける。
ニコイチ感のアピール。
ネロも意図は理解しているのか、アピさんから見える所では、仕方なくニコイチアピールをしてくれた。
もちろんアピさんから見えないところでしっぽを私の後頭部にペシペシと叩きつけていたけれど。
「ニコイチ…」
「いいコンビとか、いいカップルとかそんな感じです。」
「えぇ、カップル?」
そっちを拾うのか…
良いコンビだって言ったけども…?
「私とネロは、いいコンビの方ですよー」
「あぁ…そうですか。でも、お二人の雰囲気は、カップルと言われてもあまり違和感がなかったので、既にそう言う関係かと驚いてしまいました。」
「だって、ネロ。」
「勘弁してくれ。」
私の所から抜け出して、プンスコと拗ねているネロ。
「あ、すみません!」
「気にしなくていいですよ。ネロは照れ屋なんです。」
「お前なぁ…」
そして、あきれ顔、
今日は、よく表情筋が動きますね。
「ニコイチ…ブラーさんの所では、今後このボトルが売られるのでしょうか?」
「詳しくは私たちも分からないですけど。もしも、発売されたときは、見に行ってみてください。ブラーさんも喜びます。」
商品の話を勝手にするわけにもいかないし。
そこら辺は、ブラーさんとクラト公子がやるだろうから、ちょっとだけ匂わせる程度にしておこうかな。
それにしても、身に着けていただけで、目に留まるとか…
ブラーさん、思ったよりも早めに行動に出た方がうまくいくかもしれません。
このお祭り騒ぎに乗じて、売り出せば、お祭りの屋台効果により、買う人も増えるかもしれないです。
「はい、楽しみに待っていたいと思います。」
あぁ…いい笑顔。
「今日は本当にありがとうございました。」
最後にお礼を言って、アピさんのお店を出る。
「ブラーは、やはり腕はいいんだな…」
「腕は…ってなに?腕は…って。」
ネロと二人で、ちょっとだけ手ごたえを感じ、ボトルの話をしながら、虹の街へと帰った。
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