33話 旅行するにも、手続きが必要
「来たな」
あれ?オーロックさん。
「今日、初旅行の仕事って聞いて、冷やかしにな」
「そこは、普通にお見送りで来てください」
「わるいわるい」
思ってないな、この人。
「俺も普通に仕事なんだ。観光者ライセンスを見せて」
あぁ、これは入場手続きだな
空港でパスポートチェックされるやつ。
「おし、異世界転移装置の説明をするぞ。」
オーロックさんの話し曰く、
異世界転移装置は、転送装置の異世界版。
装置の中に入って、自分のランクで行ける異世界一覧から探し、行先を設定すると、その場所へ転移させてくれる。
装置を通って、異世界に行くことで、観光者ライセンスに自動で記載される。
持ち込むものについては、あらかじめ申請しておき、スキャンで確認される。
ちなみに、本人確認はこの段階でされている。
全てを申請する必要はないが、武器などの装備品や、異世界に影響を与えそうなものを持ち込み、尚且つ申請がなかった場合は、自分が転移するとき、物は一緒に転移されない。
転移するときに、毎回持ち込んでいる物については、申請忘れをしないためにも、あらかじめライセンスに登録しておくと、毎度申請する必要がなくなり、楽になる。
転移されなかった物は、観光者ライセンスに連絡が行き、保管はされるが、異世界に転移させるサービスはないため、帰ってきてからの受取となる。
分からない場合は、転移前に口頭で渡航課の職員に聞いてもらうことも可能。
帰ってくるときも同様で、装置の中に入り、行先を設定すると、その場所に転移され帰ってくることが可能。
よく行く場所には、お気に入り設定ができて、リストからすぐ飛べるようになる。
「分からないことはあるか?」
「いえ、大丈夫です!」
「まぁ、分からないことは…」
「俺に聞けっていうんだろ。その言葉は聞き飽きた」
オーロックさんの言葉を遮り、ネロは不機嫌そうに口をはさんだ。
「まぁまぁ、経験者は頼られても仕方ないさ。それに、ネロの初転移だって、アルバートが世話焼いていただろ?」
「あれは、確かに転移といった意味では世話になったが、他のことに関しては、俺が世話を焼かないといけなかったから、お互い様みたいなものじゃないか。」
「初々しかったけどね、あの時のネロは。」
へぇ、ネロの初旅行の相棒は、アルバートさんだったのか。
面白い話を聞けた。
今度、アルバートさんにその時の話を聞いてみてもいいかな?
「聞くなよ?」
「へぇ?」
「今度聞いてやろうって顔してたから。」
なぜバレる…
鋭いなぁ。
「だって、ネロの初々しい話って、気になるじゃん」
ジトっとした目でネロは私のことを見つめてくる。
これはバレないように聞かないとな。
「さて、異世界転移装置についての説明は済んだけど、何か気になることある?」
「今回みたいに一緒に行く場合も、一人ずつ行先設定するんですか?」
「いい質問!」
同行者がいる場合、誰かが行先を設定すればいい。
異世界を移動する記録は付けるため、本人確認や、持ち込みの確認はするが、同じ場所に行く場合は、同行者設定というものをすれば、行先は一人が行先設定をするだけで済む。
行ける場所は、ステータスのランクにより決まるため、同行者の中でステータスが一番低い人が行先を設定する。
そうすると、同じタイミング、同じ場所に転移することが可能。
ステータス以上の異世界には、基本的に行けないため、行先をミスした場合、転移できずに置いてかれてしまう場合があるので注意が必要。
なるほど。
今回は、私がネロを同行者にして、行先を決めればいいんだな。
「あとは平気か?」
「はい」
「じゃあ、異世界転移装置の中に入ってくれ。本人確認、持ち込みについても、問題ないな。ネロを同行者にして、行先を設定してくれ」
転移装置の中に入り、オーロックさんの案内に従って、選択をしていく。
行先を選択し終えると、転移が始まる。
「じゃあ、気を付けて行って来いよ。いい旅を。」
オーロックさんのほうを見ると優しそうな顔でほほ笑んでいた。
初めての転移に緊張をするも、異世界旅行(仕事)を楽しもうと決めた。
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