343話 シン王子とクラト公子は正反対?
ブラーさんとクラト公子と別れ、火の街を歩く。
作ったドームアートは、明日中に私たちが宿泊した施設に届けてくれるらしい。
さすがに、ガラスで出来たものをあの量持って帰るのは無理だし、助かった。
「クラト公子の想い人が、ルアルさんってよく分かったね。」
「あぁ。さっき言った以上に何かある訳ではないけどな。あくまで勘だ。」
そうか…ルアルさんか。
「アルビナ令嬢とは、正反対だね…」
凛々しくかっこいい。
女性も憧れるアルビナ令嬢。
それに対して、ルアルさんは、可愛い癒しって、感じだったなぁ。
「シンと公子も正反対だ。」
「あはは…」
シン王子は、一見クールそうに見えて、中身は熱く、恋愛においても割とオープン。
それに対して、見た目は軽そうに見えて、実際は恋愛下手なクラト公子。
「でもさ、口下手な所は似ているよね。」
なぜか、アルビナ令嬢に気持ちが伝わらないシン王子と、まず気持ちを言わないクラト公子って感じが。
「口下手と言っても、種類が違うだろ…」
「それはそうだけど。」
でも、アルビナ令嬢とクラト公子の婚約が決まっていたら、大変だったんだろうな。
「まぁ、令嬢と公子の婚約が破棄されたことは良かったかもな。」
「あぁ…そうだね。」
ここまで性格が反対なんだ。
上手くいかなかったかもなぁ…
「でも、意外とクラト公子の気遣いがアルビナ令嬢に刺さると言うこともない?」
「公子が耐えられないだろ。あの強い令嬢に。尻に敷かれる未来が見えるぞ。」
「でも、シン王子もそんな感じになりそうだけどなぁ。」
想像したら、アルビナ令嬢って結構強いと思うけど。
「いや…令嬢も恋愛下手だろ?シンに振り回される未来が見える。」
あぁ…シン王子が何か言うたびに、顔を真っ赤にしてシン王子をベシベシと叩くんだろうなぁ。
「アルビナ令嬢は、照れ屋だもんね。」
「あれを照れ屋というのか…物は言いようだな…」
あれぐらいのテレは、捌いてこそ…でしょ。
それにしても、クラト公子も照れ屋だったなぁ。
「もしかしてさ、アルビナ令嬢とクラト公子って似ているんじゃない?」
「あー、なんか分かるかも。」
「じゃあ、もしかするとシン王子とルアルさんも似ているかもね。」
「あのお騒がせ王子と、観光案内人がか?」
ルアルさんの気持ちがどうか知らないけど、あの普段はふんわりとした可愛らしい雰囲気の女性が、いざとなった時に男の人を口説きに行っていたら、私は惚れるかもしれない。
ギャップ萌えとかで。
ギャップって、いいよなぁ。
「まぁ、今回はクラト公子の意外な一面も見られたことだし、面白かったよねぇ。」
「公子が泣くぞ。」
「え?褒めているんだけど。」
「悪意を感じる。」
失礼な。
クラト公子もギャップ萌えでしょ。
軽くてチャラそうに見えて、恋愛下手の一途な男性。
良いんじゃないでしょうか。
「チヒロ、このまま帰るのか?」
「ん?そうだね。もう暗いし帰ろうかと思ったけど、何かやり残したことあった?どこか寄っていく?」
「いや、ブラーの店に行って、早く終わったら、アピの所に糸を買いに行くと言っていなかったか?夫人の分の。」
……
「そうだった…まだ、やっているかな?」
「いや、知らないけど。」
「こんなに遅くまで、ブラーさんのお店にいる予定じゃなかった!」
忘れてた…
というか、舟はもう目の前なんですけど。
「何でもっと早く言わないのさー!」
「忘れているとは思わないだろ!」
「明らかに反対まで歩いて来ているんだから、忘れていると思うでしょ。」
「そんなの知るか。忘れていた方が悪い。」
もう。
また戻らないといけないじゃん。
私とネロは、来た道を走りながら戻っていく。
もちろん、ネロは私の目の前をぷかぷかと浮いているけれど。
「もう、ネロ浮かないで!」
「無茶言うな。」
あたりも人が減ってきていているが、大々的に言い合いをしていると、目立つし近所迷惑になりかねないので、こそこそと。
何とか、アピさんのお店まで戻ってきて、事情を話すと、にっこりと笑って、私たちのことを対応してくれた。
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