340話 相手に夢中になる恋愛も、またいいものですよ
「どんな話なんだ?」
「そうですね…」
大きな川の東側に、一人の女性が居ました。
その女性は、毎日一生懸命に布を織る仕事をしていました。
遊びもせず、ひたすらに仕事に向き合う女性に、その父は何かしたいと思い、旦那さん探しを始めます。
そして、父は一人の男性に出会います。
その男性は、大きな川の西側に住んでいて、毎日一生懸命に牛の世話をする男性でした。
父親は、その仕事熱心な男性に、ぜひ娘と結婚をしてほしいと言います。
「そして、二人は結婚をするんですけど…」
「それで…?」
結婚してから、一生懸命働いていた二人は、毎日二人で一緒に過ごし、働かなくなりました。
それについて、怒った父親が、二人を引き離してしまいます。
大きな川の東と西に。
そして、父親は言いました。
一生懸命に働くのなら、一年に一度だけ、二人が合うことを許そう…と。
二人は、それから一生懸命に働き、一年に一度、逢瀬を共にするのです。
「という話ですね。これが私の世界で有名な七夕伝説…諸説ありますけど。こんな感じです。」
「恋愛に現を抜かして、己の仕事を見失い、結局、離れ離れにされたという話か?」
さすがネロ。
容赦のない言い方、ありがとうございます。
「まぁ、この話にもいろいろあるんですけど…ポジティブに捉えると、己を見失うほどの相手と出会い、一年にたった一度会うためだけに、その約束を守り続ける男女の恋愛とも取れるでしょ?」
「いいように捉えすぎじゃないか?」
顔を引きつらせる男性三人。
まったく、ここにいる男どもは…
「そもそも恋愛というものは、そういうものですよね?好きな相手を見ると、一直線。他のことが目に入らない。燃え上がる恋。」
何が邪魔して来ても、絶対に大丈夫だと思う謎の自信。
恋愛まっしぐらの時は、本当にそんな感じだったよ?
「まぁ…シンとアルビナ嬢を見ていると分からなくはないけどな。」
「でも、あの二人の場合、己の職務は全うするだろうね。仕事をおろそかにすることはないさ。」
シン王子とアルビナ令嬢は、己の仕事を全うしたうえで、お騒がせカップルだったよ?
なんでそんなにすれ違うの?と言いたくなるレベルで、あの二人は青春をしていたと思う。
まさしく、あの二人は、少女漫画だった。
「初めての恋愛なんて、そんなものでしょ?その人との時間が欲しいし、少しでも長く一緒にいたい。この七夕の二人の場合、いままで一生懸命に働いた分、そして初めての異性だった分、限度なく互いを求めあったんでしょうね。恋人であり、夫婦。そう言う燃え上がる恋愛というのも、一般的には受けるんじゃないですか?」
使命を果たし、己の道を全うしたアイネさんとマニさん。
でも、俗っぽく自分の欲に忠実だった、織姫と彦星の恋愛も人間の欲に忠実な感じがいいと思う。
織姫と彦星が人間かどうかは、置いておいて。
「確かに、恋愛というのは周りが見えなくなると言うのは、分かるかもしれない。自分のことを見て欲しい、そう言った欲があるのも確かだ…あながちチヒロの世界の枷もバカにできないな。」
ネックレスや、腕輪を枷というのは、どうかと思うけど。
それでも、自分の物というしるしを残したい気持ちは、私も分かるし。
まぁ…いざ、その枷を付けて、相手が自分だけになったとして、その人全ての責任を終えるかと言われると、全く負える気がしないので、どちらにしても地獄なような気がするけれど。
「それで、今の話をどうストーリーにするんだ?」
もちろん、いいところを取って、うまくつなげる。
「そうですね…離れていても気持ちは重なっている…とかどうですか?」
織姫と彦星が一年間相手を思いながら、仕事をするように。
離れていても、貴方のことを想っている…繋がっていると。
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