339話 夜空にまつわる約束の話
「それで、どんな話にする?物語を作るのは簡単なことじゃないぞ?」
「そう。そして、商品と物語が連想できないものもダメ。」
ダイヤモンドみたいに、宝石と永遠の輝き、そしてそこから永遠の愛に結び付けていくような連想が必要。
「ボトルを見て、皆さんはどんなことを連想しますか?」
私の中では、こう思うと言うものはあるけど、ある程度共通のイメージがないとダメ。
「イメージか…」
私の中では、夜空をイメージするんだけど…
それをイメージする人はいるだろうか?
キラキラ輝く星空の川。
「俺は、夜の空をイメージする。」
口を開いたのは、ネロ。
「キラキラと光るものは、星。色が混じり合う様子は、夜の不確かな空。研修でおいて行かれた場所で見た空がこんな感じだった。覚えているか?」
ネロの方を見ると、私の方をじっと見ていた。
覚えているか…って?
研修…?
まさか、私の就職試験の研修?
あの、無人島の?
ネロが言い出すとは思わなかったけど…確かに無人島で見上げた空に似ているかもなぁ。
あの時の星空は、綺麗だった。
星の輝きは、何ものにも邪魔されない。
辺りが真っ暗だったからこそ、そう思ったのかもしれないけど。
「覚えているよ。あの時、約束したもんね。」
今度、私のいた世界に連れて行くと約束した。
不安だったけど、楽しかった就職研修。
忘れるわけがない。
でもネロがあの時、見た夜空を覚えていてくれているとは思わなかったし、印象深いと思ってくれているとも思わなかった。
なんだろ…嬉しいな。
胸の中がポカポカする。
二人で見上げた夜空が印象的だったなんて言われて、嬉しくない人いる?
いないよね。
「夜空か…確かにナトゥラの夜の空はこんな感じかも。」
「あまり夜のナトゥラに行く機会なんてないから、知られていないけど、綺麗なんだよな。周りの光に邪魔されない夜の空って。」
分かります。
私も東京の空よりも、地元の空の方が綺麗だと感じたので。
そもそも、東京はほとんど星なんて見えないしね。
東京に来たときは、星空を見上げるのを止めるくらいだった。
まぁ、人工的に光るネオンの光も十分綺麗だったから、これはこれでありかなとは思っていたけど。
それでも、本物の夜空を見上げると、思わず見とれてしまう圧倒的な凄さがあると思う。
「じゃあ、夜空に例えるとして…なにかストーリーに結び付けられそうなものは、ありますか?」
「星には、神話や伝説があると聞くが、プティテーラにはないのか?」
ネロの問いかけに、クラト公子とブラーさんが困った顔をする。
「プティテーラの伝説は、アイネとマニが搔っ攫っているからなぁ…」
「星や夜の伝説というのは、あまり聞かないよね。」
どれだけ影響力凄いのよ…
アイネさんとマニさん…
人の数だけ思想があるはずなのに、あまりにも影響力が凄すぎでは?
根強い話になっているし、影響力が凄いのは分かっていたけど、ここまでとは思わなかった。
「じゃあ、せっかく異世界とのゲートも開いたことですし、異世界のお話でも使ってみます?」
「異世界の話?」
「確かに、タイミング的に異世界の話は話題性があるだろうけど…夜空の話でなにかいい話でもあるのか?下手な話だと、月の約束に飲まれて、話が浸透する前に消えるぞ?」
クラト公子とブラーさんの不安そうな顔…
月の約束と同じくらいインパクトがあるものかぁ…
私の元居た世界には、夜の空についての話もいろいろあるし、星の伝承もたくさんあるけれど。
私の世界でビックイベントとして一日を持っていってしまう、お騒がせ夫婦の話でもしてみようかな。
子どもから大人までなじみ深い話。
諸説あるし…詳しく話すと夢が無くなりそうだから、今回は、一般的に知られているロマンスの話。
一年に一度だけ星の川を渡り、愛しい人に会うことを許された、約束の話。
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