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334話 夜空を詰め込んだ小瓶


「で、出来たぁ…」

「……」


ひたすら、その人に合うデザインを考え、瓶のふたにオブジェを張り付け、水とノリを入れて、ラメを入れ、かき混ぜての作業を繰り返し、ようやくお土産作りは終了した。

ネロも頭と手をたくさん使って疲れたのか、机の上で丸まった。


「おつかれ様だな。」

「ようやく終わったみたいだね。」


終わったことに気が付き、クラト公子とブラーさんが声をかけてくれる。

ブラーさんのツンツンも健在だが、慣れてくるとそっちの方がしっくりくるんだよね…と全く働かない頭は、思ったのだった。


「おお…本当にいろんなデザインを作ったんだな。」


テーブルの上に乗っている私とネロが作ったドームアートを覗き込みながら、クラト公子は笑った。


「ははは…」


夢中になって、ドームアートを作っている時は良かったのだが、いざ作業を終えてみると、肩はバキバキだし、座りっぱなしで作業をしていたため、おしりと背中も痛い。

目はしょぼしょぼとしているし、手や指も若干プルプルしている。

クラト公子は、私の様子に気が付いたのか、さらに大きく笑った。


「チヒロ、ボロボロじゃないか。」

「うう…そこら中が痛いです。」


左手を肩に持っていき、肩の筋に沿ってギュッと押すと、ツンと頭の方まで響いて来て、悲鳴を上げそうになる。

自分で押しておいて、力加減を間違えた…

もう一度、ゆっくりと肩をもむようにすると、ツンと響くものの今度は痛気持ちいい。

腕もパンパンなので、しっかりと揉みこみながら、体に空気を取り込むために、大きく伸びをした。

ネロもしっぽをペシペシとしながら、体を伸ばしている。


「おつかれ様。そこまで体をボロボロにしたんだから、喜んでもらえるといいな。」

「あはは…そうですね。」


行儀は悪いと思うが、机に突っ伏して体の力を抜く。

机に頬を付けながら、ブラーさん達が座っていた反対側の席に目を向ける。

そこには、小瓶が置いてあった。

私は、目を見開き、そのボトルを魅入る。

そこにあったのは、瓶の中でオーロラのように色が混じり合い、まるで星空のようにキラキラと輝く可愛らしいボトルだった。

私は、机からガバリと起き上がる。

私の隣で丸まって寝ていたネロや、私のことを覗き込んでいたクラト公子がギョッとした顔で私を見ていた。


「あの…ブラーさん!」

「な、なに?」


私の勢いにブラーさんは、若干引き気味である。

でも、そんなことは気にしない。


「ブラーさん!そこにある瓶は、先ほど言っていた新作ですか?」

「え、あぁ…そうだよ。」


もう一度、瓶の方をよく見る。

瓶の中でおぼろげに混じり合う色の中に、キラキラと輝くラメが不規則に浮かぶ。

まさに天の川。

オーロラと、星空。

この小さな瓶を見ていると、夜空を見上げている気分になる。


「綺麗…」

「まぁ、作り方も簡単だし、時間もあまりかからないから、ドームアートを作る暇つぶしに、これも作っていこうかなって。」


これが時間の合間にできた物なのか…



「ブラーさん。職人としての考えは私には分かりません。ですが、これを温めておくのは、もったいないです。」

「でも、ガラスが完成する合間に作った物だし。今日作った物も、二人がドームアートを作っている最中に作った趣味の物だ。新作とは言ったけど、これを売ろうとは思っていない。」


新作ですらなかったと…


「でも、そんなに気に入ってくれたのなら、それをあげるよ。ねぇ、クラト?」

「あぁ、別に構わないよ。」


くれると言うのであれば、遠慮せず頂こう。

だって、一目見て、綺麗だと思ってしまったのだから。

それにしても、もったいない。

ブラーさんから、受け取った夜空の瓶をじっと見つめる。


「チヒロ、今考えていることを教えてもらっても?」


すると、クラト公子がこれまた真剣な顔で私を見てきた。


「チヒロがその顔をするときは、何か考えがあると見える。さっきの店の内装についてもそうだった。面白いことがあるのであれば、ぜひ聞きたいんだけど?」


クラト公子は、いたずらっ子のような顔をして、ニヤリと笑った。

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