331話 ツンデレは尊い
翌日、ガラス細工の続きをやるべく、私とネロは火の街に訪れ、クラト公子と合流。
その後、ブラーさんと合流した。
「来たね。待ちくたびれたよ。」
ブラーさんのトゲトゲは健在だけど、ブラーさんの性格を知ってしまっているため、今はとても微笑ましく思ってしまう。
クラト公子も、ブラーさんの言葉を聞いて、クスクスと笑っているので、きっと同じ気持ちなのだろう。
「何笑っているんだよ。」
不満たっぷりの顔で返されたけど、それも今のお店の中を見ると、あまり気にならない。
工房の中に案内されて、綺麗に整頓され、道具が綺麗に並んでいることに気が付く。
しっかり準備万端で待っていてくれたんだろうな。
だから、ブラーさんのトゲトゲした言葉も、思わず嬉しくなってしまう。
「いえ、ありがたいなと思って。」
「僕の話、聞いてた?待ちくたびれたって言ったんだけど?」
「はい、ありがとうございます。」
「なに?なんで、そこでありがとうございますな訳?話が通じてないの?もう知らない。」
ブラーさんは、ムキーっと声を上げながら、工房奥の方に姿を消す。
「チヒロ、ブラーの扱いがうまくなったな。あんな性格だから、誤解されやすいんだけどさ。」
「ブラーさんを見ていると、分かりますよ。いい人なのは。」
ブラーさんは、部屋の奥から出てくると、手には昨日作った、ガラス細工たち。
もう知らないと言って、戻ってきたら、私たちのことをしっかり考えてくれているわけだから、本当に素直じゃないね。
私に向けられている感情に、百パーセント自信がある訳じゃないけど、ブラーさんは、私たちのことをしっかり考えてくれているのが、分かる。
それが、ツンツンした態度になっていても。
「何、不愉快な顔でこっちを向いている訳?やめて、その微笑ましいと言った顔でこっちを見るの。」
いや…だってね…
微笑ましいと言うか、こう素直じゃないけど、本人が気づかない素直さを発見してしまうと、なんだか嬉しくて笑ってしまうでしょ。
今だって、文句を言いながらも、私たちのガラス細工を取りに行ってくれたわけだし。
それをテーブルの上に丁寧に並べているのを見ると、ニヤニヤしてしまうのはしょうがないことだと思う。
見ていて面白いから、絶対に指摘しないけど。
「お前、いい性格してるな。」
私の肩に乗っているネロが、ため息をついた。
私が言わないのを、呆れているみたいなんだけど…
「ネロも黙っているんだから、同罪でしょ。」
「俺は、余計なことを言って、ブラーが拗ねるのは、面倒くさいなと思っているだけだ。」
いやいや、ネロも口元が緩んでいますけど。
そうか…
ここにもいたか。
素直じゃない大魔神が。
ネロも照れるとすぐにそっぽを向くし、ムスッとする。
ツンとする割に、そばには来いと言うのだから、まったく素直じゃない。
クスッと言う笑い声が聞こえたので、そちらを見てみると、クラト公子は私とネロの方を向いて、口元に手を当てて笑いを堪えている。
私が見ていることに気が付き、にやっと笑った。
「お互い、大変だな。」
「…まったくです。」
クラト公子もネロのことを、素直じゃないけど素直な奴だと思ったのだろう。
大正解だ。
ネロは、ツンデレ大魔神なんだ。
そうか、ブラーさんを見ると、なんだかほっこりするのは、ネロのせいか。
ちょっと納得。
「ほら、さっさと席について。ドームアートの説明をするんだから。」
ブラーさんは、あまりの空気に居たたまれなくなったのか、急かす様に私たちを椅子へと促す。
ここは、私たちも素直に従っておこうと思い、促された椅子へとそれぞれが座った。
私とネロが隣に座り、四角いテーブルを挟んで、クラト公子が座る。
「やっと席に着いたか。じゃあ、ドームアートの説明をはじめるよ。」
ここまでの道のり、長かったなぁと思いながらも、ドームアート作りの続きに胸を膨らませるのだった。
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