329話 元の世界を思い、ふるさと自慢
「で?で?チヒロのいた世界では、どんなことが流行っていたの?」
どんなこと…
はっきりいて、流行の移り変わりが早すぎて、こう考えてみると何が流行っていたのか一概には言えない。
そして、私が異世界に飛んでいる間にも、向こうの世界では別の物が流行っているんだろうな。
「流行り…私がいた時には、タピオカとか流行っていましたけど。」
「た…ぴ、おか?」
「その、たぴ…お、かってなんだ?」
タピオカって、なんだ?
あのもちもちの触感って確か、芋だっけ?
でんぷんの塊だったような気がするんだけど。
「紅茶にもちもちとした丸い塊を入れて飲むんです。太めのストローをで飲み物と一緒にもちもちしたものが出てくるのが流行ったんですよね。」
「もちもちした物体と紅茶…」
「そ、それは…美味しいのか?」
まぁ、王族貴族の間では、紅茶って欠かせないものだもんね。
創作することがないんだろうな。
「はい。おいしいですよ。あとは、食べ物で言うとマリトッツォとか?」
「まりと…それは?」
「これは、一番ベーシックなのは、丸い手のひらサイズくらいのパンを使うんです。
パンの側面を横に向かって切って、その切ったところにクリームをはさむんです。クリームサンドみたいなものだと思うんですけど。」
私もマリトッツォをそこまで詳しくない。
テレビの特集で見たくらいの知識しかない。
「パンにクリームか…」
「はい。アレンジに、フルーツを挟むと生クリームの甘さとフルーツの酸味でちょうどいいんですよね。」
後は何だろう?
文化とかだと、それぞれ個人の好みが色濃く出るしなぁ。
「あとは、動画投稿とか流行っていたんじゃないですかね?」
「どうが?」
「とーこう?」
プティテーラに録音機器や、録画機器ってあるのかな?
コスモスでは、スマホのようなデバイスを貰ったわけだし、異世界にもそういう技術はありそうだけど。
「これを見てください。」
私が取り出したのは、コスモス就職祝いに貰ったデバイス。
「これをこうして…」
私はデバイスで動画を取り、デバイス内のアプリでその動画を編集する。
そこまでうまくないけど。
あくまで、こういうのがあったよ…っていう参考動画だし。
「見てください。」
私が作ったのは、ネロ。
寝転んでいるネロを動画の編集で一瞬で消す。
次に現れた時には、ネロが小さくなり私の手のひらの上にいるという編集。
カットして、ちょっと効果を加えるだけの簡単な物。
それでも、こういう動画を始めてみると、どういう原理か気になるんだよね。
案の定、クラト公子とブラーさんは、楽しそうにしてくれる。
ネロも不思議そうに画面を見ていたし。
「こういう動画を共有して、いい動画は拡散さえていたりしましたね。あと、写真を投稿してたり。」
こう思うと、動画共有や写真投稿って面白い文化だよね。
なかなか人と会わなくても、自分がいいと思っているものを世界に発信できるのだから。
「こんな感じで、自分がいいと思ったものを、いろんな人に知ってもらう機会が結構ありましたね。私の世界では。あと、イラストのついた本とか。」
「挿絵が付いた本なら、プティテーラにもあるぞ?」
「違いますよ。すべてのページにイラストが描かれているんです。たとえば…」
私はブラーさんから紙とペンを借り、紙をペンで分割していく。
分割した四角の中に、猫を書き入れ、吹き出しを付ける。
そして、四コマ漫画を作った。
「なんだ、これは?」
「漫画っていうんですけど、こういう風にキャラクターがしゃべる様子がイラストで描かれているんです。私は、漫画が好きだったんですよね。」
まぁ、絵はあまりうまくないから、全部同じ方向を向いた同じ大きさの猫が、吹き出しを出してしゃべっているだけなんだけど。
それでも、物珍しそうな顔をしてみてくれるんだから、新しいものというのは偉大だよね。
「他にもいろいろありますけど、あげだすとキリがありませんね。」
自分の住んでいた環境を思い出し、ちょっとだけ故郷自慢。
クラト公子やブラーさんの新鮮な反応に、ちょっとだけ誇らしくなった。
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