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31話 語り部、それは世界を語る人


初の旅行先が決定して、行くのは明日からとなり、

私は本日、オフィスでやることが、無くなってしまい、お昼に退勤させられてしまった。

とはいえ、部屋に帰ってもやることがない。


…こっちに来て、コスモスを見て回ってなかったな。

商業エリアもあるって言っていたし、見に行ってみようかな。

センタービルから、広場に出る。


人が集まってる。何やっているんだろ?


よく見ると、広場のベンチに座って、子供たちを集め、本を読み聞かせている男の子がいた。

黒いショートヘアに黒い瞳の男の子。

子供たちが興味を持つ物語は何だろうと、気になり近くに寄っていく。


「今日はおしまい。また来な」


傍に行ったとき、ちょうど本は閉じられ、話は終わってしまった。

残念。


「今日はもう終わりだけど」

「残念、何の話をしていたか気になったんですけどね。」

「別に、普通の昔話だけど」

「その、普通を知りたかったんです」


普通というけれど、私はこの世界の普通を知らない。

学ぶのに、本の読み聞かせは、ちょうどいいと思ったんだけど、残念。


「お前、もしかして異世界人か?」

「そう、だね」

「どこ出身?」

地球ティエラ


私の言葉に、男の子は、じっと私を見て、すぐに目を見開いた。


「ティエラ…じゃあ、お前が。」


ん?面識あったかな?

男の子は、私のことをなぜか知っているような感じで話している。


「特別だ!何か聞きたいことあるか?語り部としての仕事をしてやるよ」

「語り部?」

「昔から語り伝えられている話を、現代に語り継ぐ仕事。結構いろんなことを知ってると思うぜ。」


そうだな…

何が聞きたいって、そりゃ…


「異世界の話が聞きたい」

「はぁ?そりゃそうだろうけど…」

「何を聞きたいって言われても、何も知らないから、きっと何を聞いても新鮮。だからお任せで」

「なるほどな、潔くていいんじゃないか?そうだな…原初の樹についてはどうだ?」


昔、世界そのものと言われるほどの大きい樹が立っていた。

その樹は、枝は天の果てまで、根は地中の果てまで貫いていた。

その樹を中心に、はじまりの世界ができた。

樹は、いろんな世界をつなぐほどに、大きく、さらに大きく成長していった。

その樹には、不思議な特徴があった。

それは、樹が成長するごとに、魔力マナも大きく成長していくということ。

気が付いた時には、魔力マナが尽きることなく永遠に生み出され続ける木になっていたという。

大量に生み出され続ける魔力マナは、次第に、光の粒となり目視できるようになる。

そして、その樹の根元に泉を作った。

人々は、その樹を魔力マナの源泉と呼んだ。


その地には、もともと竜が住んでおり、その樹を守護していた。

それが、原初の竜。

原初の竜は、その樹の溢れ出る魔力マナの力を使って、自分の体を光と闇に分け、さらに5体の小さい竜を創ったという。

そして、その竜たちは、世界を支えていったと言われている。


「どうだった?」

「これって、ほんとの話?」

「ほんとか、嘘かは言われてない。語り伝えられたものを語っただけだ。でも、そういう方が、ロマンがあって良くないか?」


ホントか分からないけど、語り継がれてきた話。

確かに、地球にも神話や伝説みたいな物があったけど、そういう物は、心がくすぐられる。


「確かに!他にはないの?」

「…まだ聞く気か?」

「せっかくなら、いろいろ知りたいでしょ!」


男の子は、少し考えるように黙り込み、そして私をちらりと見た。

そして、にやりと笑う。

この笑い方…


「また今度な。語り部は、基本一人のやつに何個も話をしないんだよ。」

「えぇ?今、完全にしてくれる流れだったじゃん。」

「その代わり、これやるよ」


そういって、本を一冊、私に手渡した。

これ、さっき読んでいた本とは、別のものだよね。

中身を開くと、全く知らない文字が並んでいた。


ふふん、こういう時のために、トラジスを持ち歩いているんだから。

トラジスの眼鏡をかけて、再び、本を見てみる。

……

あれ?読めないな。


「魔法のかかった古代の文字は、トラジスじゃ読めないよ。」


古代文字!?


「それが読めるようになったら、また世界が広がるかもな。コスモス保管の図書館なら古代文字の辞書もあるんじゃないか?」


辞書かぁ…なるほどね。

わかった、やろう。


「ちなみに言っておくと、その本、あまり人に見せない方がいいぜ?都合が悪いやつらとか、結構いるらしいし。」


なぜ、それを先に言わないかな。

それに、都合が悪い人ってなんだ。

そんな危険な物、私に渡してきたってこと?


「また、会ったら違う話をしてやるよ。」


そういって、去ろうとする黒い少年。


「待って!」

「あぁ?」

「私は千紘。有間千紘。あなたの名前、教えてよ」


キョトンとした顔で見返してきた少年が、にやりと笑う。


「俺は、ユオ。またな、チヒロ」


ユオは、名前だけ告げるとさっと消えていなくなった。

ユオの雰囲気、なんか初めて会ったって感じがしない。


面白い話も聞けた。

この本は、内緒にするとして、古代語の辞書を借りに行こうかなぁ。


やることが出来たし、部屋に帰ろう。

結構な分量ありそうだし、自分で翻訳しながらチマチマと読んでいこう。


結局、外に出てのコスモス観光が、自宅で読書に変わったのである。

読んでいただき、ありがとうございます!


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