323話 思い立ったら即行動です
よくよく考えたら、なんでこんな事になったのだろう?
机の上に広げられた、お店の設計図。
それを真剣に見つめながら、意見を出し合う、ブラーさんとクラト公子。
私たち、ここに何しに来たんだっけ?
「それで、お店の雰囲気はこんなもんでいいの?」
「あぁ…はい。」
さっきまで、ツンツンしたハリネズミだったブラーさんが、私に意見を聞いてくれることにソワソワする。
「あの、今すぐ、リフォームなんてできないと思いますし、今日はその辺で終わりにしても…」
私は、お土産探しに来たというのに、なぜか話が逸れに逸れまくっている。
ドームアートづくりの話は、一体どこに消えてしまったと言うのか…
「何を言ってるの?こういうのは、思い立ったらすぐ行動でしょ?プティテーラが、外交を開いたばかりの今がチャンス。観光客の人たちの気持ちをしっかりつかみ、プティテーラにも異世界にもドームアートの存在を広めてやるんだから。」
言っていることは、確かにその通りなんだけど。
店の立て直しなんて、すぐにできることじゃないでしょ。
一応、私とネロもドームアートを作りに来たお客さんだと言う事を、ブラーさんは多分忘れているんだろう。
お客さんを使った宣伝効果というのもあるのになぁ。
あと、今だったらシン王子とアルビナ令嬢の婚約発表の献上品とか?
俗っぽい話にはなるけど、宣伝効果としては抜群だと思う。
それに、純粋にこのドームアートを貰ったら、シン王子もアルビナ令嬢も嬉しいと思うんだけどなぁ。
「あの…」
「今度は何?」
そんな食い気味に話を遮りに来なくても…
気合十分なブラーさんは、とにかく真剣で…
これはもう、黙って見てるしかないかもなぁ。
「なぁ、お土産、このままで行けるのか?」
「うーん。なんか、話を切り出す順番を間違えたかもしれないねぇ。」
ネロも、ブラーさんとクラト公子の様子を見てどうした物かと言った感じだ。
まぁ、さっきよりも二人とも楽しそうだし、それはそれでいいんだけどね?
「チヒロ、ネロ。この設計図はどう?」
このやり取りも何回目だろうか。
緊張した面持ちで、図面が書かれた紙を私とネロに見せてくれる。
紙を覗いて確認してみると、今までとは全く違うお店の図。
ドアを作り、お店に入りやすくしたうえで、窓をつけ外からチラリと中が見えるようにする。
中の雰囲気を明るくし、天井から吊下がったガラスの球体がキラキラと輝くように設置。
店内も通路を広くし、動きやすくしたうえで、ディスプレイをするための棚を設置。
そして、なにより長くて面倒くさい廊下をドームアートの展示場として置き、その先にドームアートを作る体験スペースを作る。
廊下の方は、店内と逆に光を抑え、夜を表現。
キラキラと輝くガラスたちによって、星のような輝きが出るようにと考えられていた。
「いいですね。ワクワクします。」
「入りやすいうえに、見やすい。興味をそそる工夫もあるし、なにより楽しそうだ。」
設計図からでも伝わるワクワク感。
「じゃあ、さっそく作り変えるぞ。」
「そうだな。善は急げというしな。」
ん?
今なんて?
「ちょっと、待ってください。今から、店の中をリフォームするつもりですか?」
焦った私を不思議そうに見つめる二人の顔。
なんでそんな顔をするの?
「あの…私一応、ドームアート作りに来たんですけど…」
「あぁ、だから、店が出来たら、続きを教えるって。」
続きも何も、最初から何も教わっていないのだが。
お客さんがいるのに、お店のリフォームを始めるな。
「店のリフォームって、時間がかかりますよね…?今日中には、ドームアートを作ることが難しいってことでしょうか?」
「何を心配しているかと思えば、そんなこと?」
そんなこと…ではない。
「心配するなって。」
不安そうな顔をしていた私に、クラト公子が声をかけてくれる。
それでも、心配はなくならないけど。
「心配って…そりゃあ、しますけど。」
「大丈夫だって。火の街は、職人の集団だからさ。」
華麗なウインクをバチコンと決めてくれたクラト公子とブラーさん。
うーん…
私たちって、本当にここに何しに来たんだ?
正直、ここに来た目的を疑問に思いつつ、お店の出来も気になると言えば気になるし、完成まで待つことにしたのだった。
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