322話 お店のリフォームを提案します
「どういう事?僕の店を壊すってこと?」
あぁ…
ブラーさんの愛らしい顔が、般若のようになっている。
だよねぇ。
あんなに、ルンルンとお店を見せてくれたんだもの。
思い入れもあるよね。
それを壊す発言なんてしたら、怒るのも当然だよ。
「あの…」
私は、説明をするべく口を開こうとしたとき、ドゴッと重苦しい音が目の前から聞こえた。
その音は、クラト公子がブラーさんの頭にチョップを入れた音。
凄い音がしたんだけど、大丈夫だろうか?
ブラーさんの頭。
相当痛かったんだろうな…
ブラーさんは、しゃがみ込み頭を押さえて震えている。
「ちょっと、クラト。痛いんだけど。」
「ブラー。ちょっとは落ち着け。チヒロは別に何もなくそういう事をいう奴じゃない。なにか訳があって、そう言ったんだよ。」
ブラーさんは、頭を押さえたまま、クラト公子を睨みつけ、クラト公子はブラーさんを上から見下ろす。
そんなピリピリした空気を出さないでください。
私が居たたまれないので…
「それで、チヒロ。なんであのような事を?」
「えっと。このお店の中は、こんなに素敵なものであふれているのに、お客さんがまばらなのは、この店が分かりにくいからです。」
「分かりにくい?」
どういえば、この二人に分かりやすく伝わるかな?
ちょっと、突飛な言い方をしてしまったから、怒らせてしまったし。
「そのまま、言えばいいだろ?遠回しに言って、思った事が伝わらないなら意味がない。言いにくいなら、俺が言ってやろうか?」
言葉を探していると、ネロが隣から口を出してきた。
確かに、その通りなんだよね。
仕方ない。
真摯に伝えてみよう。
「この店の中は素敵でも、初めてくるお客さんは、この店のことを知りません。それに、店に入るまでに、あの長い廊下。中に入っても、あの長い廊下をしばらく歩いていたら、不安になります。ここは入ってもいい場所なのだろうかと。」
私だったら、分かりにくいお店は入りたくない。
だって、怖いもの。
案内がしっかりしていて、たどり着きやすい方が、安心してお店に入れる。
怖い思いをしてまで、よく分からないお店になんて、入ろうと思わない。
クラト公子がいて、ブラーさんに案内された時ですら、あの長い廊下は何事かと思ったくらいだ。
一人で歩いていたら、きっと耐えられない。
「だから、お店を壊すと言うよりは、リフォームですかね?でも、この店の形にこだわりがあるのであれば、私は口出しできませんし、するつもりもないです。他にも方法はあると思いますから、試行錯誤してやるのも悪くはないと思いますよ。」
言いたいことだけ言って、ちょっと無責任かもしれないけど、この店の在り方にこだわりがあるのであれば、口出してもいいことなんてないだろう。
お互いに面倒くさいことになるくらいなら、この話はここまででいいかなと思う。
チラリとブラーさんとクラト公子の様子を見る。
二人とも顎に手を当てて、何かを考えているように見える。
「なるほどね。それで、壁を壊すと言ったのか…」
「それで、壁を壊してどうするつもり?」
私が言ったことについては、納得してくれたみたい。
さっきまでの殺伐とした空気はなくなり、どちらかというと話を聞く体勢になってくれたみたいだ。
「そうですね。あそこの壁を壊して、ドアにして、そこからお客さんが入れるようにすれば、あの長い廊下を回避できますよ。それから、窓を作って、外からどんなものが置いてあるのか、見えるようにするのもアリですね。どんな店か分かりやすいですし、チラ見せは、気になるという好奇心をくすぐります。」
頭の中で、こういう店だったら入ってみたいというものを思い浮かべる。
部屋の中が少し暗くてもいいかもなぁ。
星空みたいにキラキラして面白そう。
でも、ライトに当たって輝く、ガラス球もあり。
私が思い描いているものを取りあえず、二人に伝えて見て、あとは二人が私の意見を参考程度に、使ってくれればそれでいいかな?
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