320話 お土産はドームアートに決定!
やる気になったブラーさんについて、家の中に入る。
クラト公子は、ニタニタと笑っていた。
「クラト公子…何笑っているんですか?」
「え?あぁ…ブラーって相変わらず、チョロ…いや素直だなぁと思ってね。」
ブラーさんの背中を見ながら、クスクスと笑うクラト公子。
この人、確実にチョロいって言ったよね。
いい笑顔で、ブラーさんのことをチョロいと言ったぞ、この公子。
「チョロいって、言ったな。」
「チョロいって言ったね。」
ネロと私は、聞き逃したりしませんから。
「おいおい。ブラーに聞こえたら、面倒なことになるから、いくら俺が言い間違えたとしても、ここだけの話にしてくれよ?」
焦るクラト公子は、やっぱり面白い。
私は、クラト公子に向かってグットポーズをした。
「ちょっと、何をやっているのさ。早くついて来て。」
私たちが後ろをついて来ていないことに気が付いたのか、ブラーさんの顔が少しムッとしていた。
「すみません。今行きます。」
急いで、ブラーさんの傍に行き、再びヒナのようにブラーさんの後をついて行った。
しばらく進むと、赤い扉が現れる。
その扉を、ブラーさんは引いて、私たちの方を振り返った。
「さぁ、ここが僕の店だよ。」
扉の中は、不思議な空間が広がっていた。
ガラスで作られた丸い球が、天井からいくつも吊るされている。
部屋の中には、机が並べられていて、その机の上に、いろんな形をした、ガラスが置かれていた。
「綺麗…」
扉を開けて、こんなにきれいな空間が広がっているとは、正直思わなかった。
天井から吊るされたガラスの玉は、大小大きさが異なる。
ガラスの球体の中には、ラメが舞っていたり、お花が浮かんでいたり…
ただでさえ透き通るキラキラとしたガラス玉の中に、装飾を施して、綺麗な球体が出来ている。
机の上に置かれている瓶たちも、中を見ると、人形が入っていたり、お城が立っていたり、ガラス瓶の中に装飾が施されていた。
「でしょ?ガラスって言うのは、ロマンがあっていいよね。こう…見ていて癒されると言うか、綺麗というか。」
ブラーさんの言っていることが、何となくわかる。
うん…これは綺麗だ。
「どうだ?お土産にちょうどいいだろ?」
「はい。これは、見ているだけでも、楽しくなってしまうお土産ですね。」
「だろ?」
机の上に飾ったら、癒されるだろうなぁ。
企画宣伝課のオフィスの机の上に置いて、事務対応をすれば、少しは、癒されてくれるかもしれない。
あの忙しい修羅場も乗り越えられるかもしれない。
…うん、多分、いけるでしょ。
「僕のコレクション達を見て、感動して声も出ない?」
「はい!すごいですね!ブラーさん。こんな作品たちにお目にかかれるなんて、私は幸せかもしれません。」
私は、目を輝かせてブラーさんを見た。
ブラーさんの顔は、引きつっていた。
なんで?
「感動して、しっかり声が出たな。」
「これ以上ないくらい、元気いっぱいな声でいいんじゃないか?」
ネロとクラト公子は何を言っているの?
「もういい。それで、結局、このドームアートを作るの?」
「もちろん、やります。いっぱい作りたいです。」
「なに?その、子どもっぽい言い方。」
だって、コスモスの人たちに渡すなら、とにかくたくさん作らないと。
企画宣伝課の人たち、他にもお世話になった人たちがいるし。
「それで、どのくらい作るつもりなの?」
私は、頭の中で渡す人たちを思い浮かべて、諦め、ネロの方を向いて首を傾げた。
「俺を見るな。」
「いくつ?」
「お前が渡したい人たちに渡せばいいだろ?」
「そんなこと言ったら、絞れなくなっちゃう。」
ミシュティで渡した人たちには、お土産を渡したいもの。
「じゃあ、全員分つくるしかないな。」
「だよね。」
私とネロのささやかな話し合いが終わり、ブラーさんの方を見た。
「それでいくつなの?」
「とりあえず、14個!」
「は?」
自信満々に言ったら、目の前には信じられないと言った顔をしたブラーさんがいた。
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