317話 旅行の醍醐味、モノづくり体験
「おはようございます、クラト公子。」
「あれ?今日は出迎え準備が万端なんだけど。」
「何押し寄せてきて、歓迎ムードだと、驚くんだよ。おかしいだろ。」
クラト公子は、やっぱり今日も来てくれてたので、しっかり火の街を案内してもらおうと思う。
ここまで来たら、申し訳ないと思うよりも、使える物は使う精神でいた方がいいだろうし。
「いや、連日通い詰めたら、絆されてくれるんだと思ったら、驚いてしまったよ。」
クラト公子に言われたくない。
もしかして、チョロいと思われましたか?
「通い詰めてみるものだね。」
そこまで通い詰めていませんけどね?
ちょっと、来る頻度が高いだけですからね?
「それで、今日はどこに行く?」
この人、本当に何しに来ているのか、もう一度聞きたいんだけど。
絶対に、面白半分で来てるでしょ。
「質が悪いな…」
「ネロ?なんのこと?」
「いや…」
ネロもツッコむ事を諦めてしまっているじゃないか。
「で?今日は?」
「あの、これだけ聞きたいんですけど…」
「なんだ?」
「失礼を承知で言うのですか…暇なのですか?」
「まさかー。」
何だ、その棒読みは。
このやり取りをしても、クラト公子は、居座るだろうし、さっさと本題にいこう。
「今日は、火の街に行きます。」
「え?また?」
また?じゃないですけど?
「え?だって、一昨日だっけ?火の街に行ったって聞いたけど?」
「いいましたね。」
「え?え?そんなに火の街のことを好きになってくれたの?」
好きかどうかは置いておき、体験モノづくり、楽しいじゃないか。
旅行でも体験とかふれあいとか、そういうのは、人気だと思うんだよね。
「火の街は、モノづくりを体験できるので、しかもプティテーラの文化のモノづくり。」
「そうだけど、他の街でもプティテーラの文化は、知ることが出来ると思うけど。」
「それに、デウィスリ夫人に、何かプレゼントをしたいと思って。」
「プレゼント?」
「はい。お世話になったし、せっかく私とネロの先生になってもらったので、私たちも、デウィスリ夫人に何かお渡ししたいと思って。ネロと話をして、せっかくだから何か作りたいねってことで。」
まぁ、これはクラト公子対策。
言っていること自体は、嘘じゃないんだけど。
クラト公子には、悟らせない様にね。
「何を買うか決まっているの?」
「糸を買いに行きます。」
せっかくだから、デウィスリ夫人にもミサンガを渡したい。
私とネロのも作って、こっそりおそろいにしたい。
「糸?あぁ、アピの所かな?」
「そうです。」
「前に行ったんじゃなかったっけ?ファイから聞いたけど。」
「はい!あそこの糸が気に入ってしまったので、また買いに行こうかと。」
「なるほど?」
ごまかせたかな?
アピさんもファイさんも、一緒にクラト公子の分の糸を選んだから、内容自体は内緒にしてくれるとは思う。
「あと、モノづくり体験がしたいんだろ?」
「そうそう。ネロもモノづくりしたいよね?」
「まぁな。」
「モノづくり…?なんでもいいのか?」
お、紹介してくれるのだろうか?
「そうだな。ガラス工作でもしてみる?」
「ガラスですか?」
息を吹き入れて膨らませたりするのだろうか?
「あぁ。綺麗だし、お土産にもいいと思うぞ?」
クラト公子がここまで言うんだ。
きっと、いい物なのだろう。
「それでいいか?」
「はい。ぜひ。」
お土産選びも並行して行わなくてはいけないし、ちょうどいいかもしれない。
「じゃあ、さっそく火の街に向かうか。」
「クラト公子は、引き返しですね。」
「ほんとだよ。まさか、火の街に行く予定だったとは…それを知っていたら、火の街で待ってたのにさ。」
もしそうなら、私とネロは、今日一日は部屋の中で、ミサンガ作りをしていたと思う。
クラト公子が来たから、大急ぎで部屋の中のミサンガを隠したわけだし。
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