316話 ネロとの関係の変化
「ん…」
なんだか、体が痛い…
開かない目を擦りながら、体を起こす。
「机…?」
体の痛さに、だんだんと覚醒してきた。
机の上には、昨日ネロと二人で作ったであろうミサンガ。
そして、机の上に体を丸めて寝ているネロ。
辺りを見回して状況を整理したら、昨日のことを思い出してきた。
「ミサンガ作っていて、寝落ちしたんだろうな。」
ネロが器用にミサンガ作りをしていたところは、覚えている。
いろいろとしゃべった気がするんだけど…
取りあえず、この散乱した机の上を片付けよう。
「それにしても、昨日は大量生産したんだなぁ。」
出来上がったミサンガを見て、ニヤケてしまう。
色を見て、ミサンガを渡す人をイメージする。
テーブルの上を一通り片付けると、ネロがもぞもぞと動き出した。
「ん…」
起きたかな?
最近、ネロより私の方が起きるのが早くなった気がする。
ネロを起こすのも、私の仕事になりつつあるし。
「ネロ…?」
「……」
まだ起きていないみたい。
「ネロー…?」
「ん…」
お、ちょっと動いた?
今気が付いたんだけど、しっぽがフニャフニャとしている。
え?何?
可愛いんだけど。
めっちゃ、モフモフしたい。
「ネロ?」
「ん…」
気持ちよさそうにしているところ悪いんだけど、そろそろ起きてもらおう。
なぜかって…
私が、お腹が空いたから。
「ネロー起きてー」
ワシャワシャと体を撫でながら、ネロを起こしにかかる。
ネロは、私の手をどかしたいのか、ネロの手で払おうと一生懸命に動いている。
全部、空振りで手が宙をふよふよとしているけど。
「ねぇ、ネロってば。」
「ん…」
「ネロさーん。起きてー。私はお腹が空きました。」
すると、ネロの片目が細く開いた。
「…チヒロ?」
寝起きの掠れた声。
「おはよう、ネロ。朝だよ。」
「…まだ、寝れる。」
「寝れませんー」
再び、眠ろうとするネロの体を、ワシャワシャとかき混ぜて起こしにかかる。
「火の街に行くって言ったでしょ?おーきーて。」
「起きてる…」
起きてないし…
目があいてないし、それに机の上にもう一度丸まろうとしないの。
起き上がるまで、ワシャワシャと体を混ぜ続けると、ネロがのそのそと動き出す。
「ネロさーん」
「起きてる…」
「起き上がってくださーい。」
「起き上がった。」
起き上がってない。
それは、寝返りを打ちました。
「ちょっと、ネロ。火の街に行くんだから、起きなさい。」
ネロの頬を摘まんで、思いっきり伸ばすと、ネロがピクンと反応した。
「いひゃいひゃろ…」
なんて?
パッと手を離すと、いつものネロのジト目が私を見ている。
「おはよう、ネロ。いい朝だね。」
「毎回言うが、もっと普通に起こせないのか…?」
「初めの方は、もっと優しく、起こしているんだよ?優しいだけじゃ、ネロが起きないのが悪い。」
最初は、優しくなでて起こしてあげようとしているんだから、文句を言わないでほしい。
ネロが起きてなくて、知らないだけなんだから。
「というかさ、いつから私がネロを起こす係になったの?前は、ネロが私を起こす係だったよね?」
「チヒロが慣れて、早起きにでもなったんじゃないか?」
それを言うなら、むしろ、ネロがだらしなくなったの間違いじゃない?
前は、私のこと起こしてくれていたよね?
目覚まし係は、辞めてしまったのだろうか?
「ほら、さっきから何度も言っているけど、火の街に行くんだから、早く起きて準備。」
「なんで、そんなに急いでいるんだ?」
「私は、お腹が空きました。」
お腹が空いたから、早く外に出て、何かを食べたい。
「宿泊施設で何か頼めばよかったんじゃないか?」
「ここで食べたら、外で食べられなくなるでしょ?」
「何か食べたいものでもあるのか?」
「いや?」
特にないけど。
「なんだよ、それ。」
「はいはい…早く準備をして。行くよ。買い出しをしたら、火の街でモノづくり体験をするんだから。」
「分かったよ。」
めんどくさそうな顔をしながら、ネロは洗面台の方へと飛んでいった。
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