30話 子供のころの夢が、一つ叶うかもしれない
新章突入です!
「お菓子の国か。いいんじゃないか?」
お菓子の国。
小さいころ、誰しも、お菓子にまみれて暮らしたいとか、そういう夢あったんじゃないの?
可愛いスイーツ、芸術的な細工を一日中眺めていたいとか。
ちなみに私はあった。
クッキーやビスケットで出来た家に、噴水から湧き出るチョコレート。
キラキラした飴細工の花に、マシュマロやグミ、ケーキで飾り付けられてた広場。
そしてなにより、お菓子のお城!
うんうん、考えるだけで幸せである。
「食い意地を張るな」
「張ってないし」
「よだれ出てんぞ」
「え?うそ!!」
「ウソ」
この猫は!!
目の前で、小さい舌をべぇっとやってくるネロに腹をたてつつ、
…この猫、あざとい…
ビジュアルは可愛すぎなんだよなぁ。
ネロのかわいさにやられ、どうしても強く出れないのである。
「お前、こういうメルヘンチックなの好きそうだな」
「好きだけど、なにさ」
「別に、そう思っただけだ」
全く、ネロはとても意地悪だ。
ネロだって、お菓子を目の前にしたら、きっと目をキラキラさせるに決まってる。
サバイバルの時に、夢中で甘いフルーツに、噛り付いていたのを、私は忘れてないんだから。
お菓子の国の書類に目を通す。
異世界名 ミシュティ
スイーツが有名であるこの国には、
女性や子供だけでなく、家族連れやカップルも良く訪れる。
観光名所の一つである、お菓子の城、クレーム・アラ・シャンティの前で愛を誓いあうと、甘い恋に成就するという言い伝えがある。
ホントかよ…。
だいたい、そういう夢のあるところで誓い合ったカップルは、3か月、もしくは1年で恋愛という魔力から解き放たれ、破局すると私は思っている。
続くカップルは、そういう場所で誓い合わなくても続くのだ。
諸説あり。
と思いつつ、お菓子の城については大変興味をそそられる。
先ほど、ああいう風に言っても、お菓子の城なんていう、メルヘンでロマンのあるものを見てしまったら、感情が高ぶり思わず、愛をささやいてしまうのも分からなくない。
むしろ、私は乙女ゲームよろしく、愛をささやいていた側の人間だからだ。
今、思うと恥ずかしい黒歴史だが。
お菓子の城はなにで出来ているのかなぁとか
お城に、かっこいい王子様いるのかなぁとか
そこにお姫様が出てきちゃったりしてとか
物語上の存在だと思っていたお菓子の城について、想像を膨らましていく。
だって、お菓子のお城だよ?
そりゃ、地球にもお城はあったし、歴史あるものだし、カッコよかったけど。
そうじゃない
いままで妄想でしかなかった物が、現実で見れるなんて。
書類を見て、他にも有名な名所があるみたいだし、楽しみがどんどん増えてくる。
ウキウキしながら書類を読み進めていくと、少し気になる点が出てきた。
あれ?なんか…
書類をペラペラと行ったり来たりして、首をかしげる。
「どうしたんだ?」
「なんか観光客が、ここ最近、減ってるような?」
私が見ていたのは、観光客のデータ。
ずっと右肩上がりなんて、あるわけないけど、ずっと横ばいというか、むしろ減ってる気がする。
契約を見る限り、新規客が減っているわけじゃないよな。
ということは…
「リピーターが減っているということか」
「正解!お菓子の国へは、なぜか2度目は、行きたがらなくてね。企画課として悩んでたんだ」
リピーターが減る…
確かに、一度行ったら、次は別の場所に行きたいから、しばらくは行かなくていいかなって思うけど、2度目はもういいって言われるって、どんな状況?
お菓子の国なんて素敵な所に、2度目はいいかなって思わせる何かがあるってこと?
「治安か悪いとかそういうのもないんですよね」
「聞いてないね」
「魔物とか?」
「いるにはいるけど、人が二度と行かなくなるほどのレベルじゃないと思う」
要因は、お菓子の国にあると思うけど…
「楽しんできてもらって、大丈夫なんだけど、そのことを頭の片隅にでも、入れておいてくれるかい?」
「わかりました」
お菓子の国、ミシュティ。
もしかして、ただ楽しむだけじゃ済まないのかな?
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