304話 ふわふわモフモフのジェラートみたい?
「じゃあ、さっそく作っていこうかしらね。」
何ができるんだろう。
楽しみだなぁ。
「…ずいぶんとキラキラとした目ね?」
「へ?」
「そんなに楽しみなのかしら?」
ニコニコとした、デウィスリ夫人。
「はい!楽しみです。だって、プティテーラの四大食を食べたのに、月の料理を食べずに帰るなんて、できませんから。」
「そうだな。ここまで来たら、制覇に決まっている。」
私は、食べる準備は完璧ですと言った風に、お腹はいい感じに空いている。
ネロもフスフスと鼻を鳴らしている。
「そんなに楽しみにしてくれているなら、近くで見てみる?」
「え?料理しているところを見せてくれるんですか?」
「えぇ。見たければ、どうぞ?」
そんなの見るに決まってるじゃーん。
私とネロは、デウィスリ夫人について、キッチンに向かった。
私とネロがついて行くので、クラト公子も仕方なくといった風に、後ろをついて来ていた。
「じゃあ、せっかくだし手伝ってもらおうかしらね?」
「手伝えることがあるなら、ぜひ。」
食べさせてもらうんだから、それくらいは働かないとね。
「チヒロちゃんとネロちゃんだったわね?じゃあ、二人には、まずこれをどうぞ。」
デウィスリ夫人が持っていたのは、シルバーのスプーン。
その上に、白い塊みたいなものが乗っていた。
「え?」
「食べてみて?」
これを?
なんだろう。
恐る恐るスプーンを受け取り、スプーンの上に乗っている白い塊をジッと見つめる。
「そんなに怖がらなくても大丈夫。今から、それを作るつもりなの。だから、最初に味見をね?今日は、パーティにしましょ。」
「お、いいな。パーティ。」
「そうでしょ?いろんな種類を作るんだから。」
デウィスリ夫人とクラト公子は、二人でとても盛り上がっている。
じっと見つめているだけじゃ、物事が進まないので、気合を入れて、口を開け、スプーンに乗っているものを口の中に放り込んだ。
「ん!」
甘い。
舌触りなめらか…
そして、頭の方に来るキンとした冷たさ。
アイスみたい…
いや、ジェラート…?
でも、地球で食べたことのあるジェラートと違うのは、ふわふわとした食感。
まるで、雲を食べているみたい…
食べたことないけど。
「コンジェラルチェって、言うのよ。」
コンジェラルチェ…
「どお?今食べてもらった、コンジェラルチェは、普通のスタンダードなもの。クリームとお砂糖、ミルク、それからエキスを凍らせたものよ。」
「甘いです。そして、おいしい。そして、ふわふわ、もふもふです。」
言うなれば、冷たい綿雲って感じ。
口に入れた瞬間に甘さを感じ、ふわふわモフモフを感じる。
そして、シュワっと口の中で消えていくのだ。
おもしろい。
そして、おいしいんだけど。
「気に入ってくれたようね。」
「はい。食べたことないです。」
「そう。それは、作っていく過程でワクワクするわね。」
デウィスリ夫人に興奮気味に言うと、まるで子供を見るかのように、微笑まれてしまい、なんだか照れくさい。
助けを求めるかのように、ネロの方を見たが、ネロはコンジェラルチェに夢中だった。
おい…
いや、夢中になるのは、分かるけどね?
「へぇ、これはデウィスリ夫人。今回は、ふわふわしたコンジェラルチェだったんだな。俺も初めて食べたわ。」
クラト公子も、先ほどもらったコンジェラルチェを掬い、口の中に入れている。
「初めて?食べたことがあるんじゃないんですか?」
「いや、この食感は初めて。前食べた時は、もっと粘り気があって、コンジェラルチェ自体も伸びていたよ。」
そうなの?
「えぇ、新たに作り方を開発したのよ。魔力の調整の仕方によって、味も食感も匂いも違うんだから、コンジェラルチェを作るのは、やめられないのよね。」
え?
魔力を使うの?
ただのジェラートじゃない理由は、そこにあるってこと?
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