29話 言葉の壁に阻まれた気がします
「どうですか?」
先ほどもらった翻訳機であるトラジスのピアスを身に着ける。
透き通る明るい青色のピアス。
「似合ってるわよ」
フェリシアさん!!
ショタツインズも頷いてくれてるし、アルバートさんもにっこり笑ってくれた。
ネロは…、まぁ相変わらず我関せず、ですけども。
まさか、こんな便利アイテムがあろうとは。
地球に、トラジスがあったら、外国語は勉強要らずってわけだな。
まぁ、魔力がないから、意味ないけど。
外国語…
地球にいるときは、すごく苦手だった。
どうせ日本から出ないし、必要ないだろう、みないなこと言ってたなぁ。
今や、日本から出るし、むしろ地球からも出てしまっているけど。
アルバートさんがピアスを外した時、何を言っているのか、ほんとに分からなかった。
急に通じなくなったことに驚いたのと、戸惑い、不安になった
異世界に来て、トラジスが翻訳してくれていたことに、感謝しかない。
異世界に放り出されて、言葉も通じないってことは、辛いなんてもんじゃないと思う。
だって、私が地球にいたとき、外国の方から道を聞かれて、うまく答えられなくて悲しくなったし、申し訳なくなった。
そういうときばかりは、外国語をちゃんとやっておけば良かったと叫びたくなる。
ちなみに、道案内はボディーランゲージでちゃんと責任もって案内したけどね。
異世界言語かぁ…
イブさんが翻訳ミスしたとはいえ、地球をティエラっていうの、なんかきれいだし、おしゃれで好きなんだよな。
さっきは、不安すぎて、それどころではなかったけど、ピアスを取ったときのアルバートさんの言葉も、きれいな音の響きだったし。
異世界の言語に興味が出てくる。
地球において外国語は、まったく駄目だったけどさ。
異世界言語は、勉強してみようかな。
なにより、言葉が通じているとはいえ、なんか壁を感じる。
企画宣伝課の人たちは、それぞれの出身の世界があるかもしれないけど、ここでは共通言語を使っているように思う。
みんな、トラジスを私の言語に設定してくれているんだろうな。
それは、今の私にはとても助かることだけど、寂しいものは寂しいのである。
私も、みんなと同じ言語を共有したい。
そう思い、私は密かに異世界言語の習得を目指すことに決めた。
「さて、いろいろ説明して、サポート品も渡したことだし、早速働いてもらおうかな」
アルバートさんの言葉に、アンジュ君とアンヘル君が書類の束を持ってきて、次々と私の目の前に置いた。
な、なにこれ?
「これが、チヒロのステータスでも行ける、旅行先の書類ね」
私は、観光者の駆け出しであるEランク。
Eランクでも、こんなに行けるところあるんだったら、ステータスを上げる必要あるかな?
もっと、ステータスを上げないと行ける場所が少ないから、どんどんステータスを上げよう、的なものだと思ってたのに、正直、今の私はステータスを上げる必要性を感じられなかった。
これ、観光部じゃなかったら、ステータス絶対に上げないと思う。
「こら。ステータスは、上げるとちゃんといいことあるのよ」
例えば??
「魔物VS魔物の戦いとか見れたり、上に行けば行くほど、スリルが味わえるわ。」
…ごめんなさい、フェリシアさん。
良さが分からなかった。
というか、フェリシアさんって結構、血の気が多いよね。
「…まぁ、観光部への貢献のためにも、頑張りはします。」
「まぁまぁ、フェリシアのことは置いておいて。
ステータスを上げると、流通課承認の幻のアイテムとか持って帰って来れたりする。
他の世界に影響しうるものって、なかなか手に入れることができなかったり、手に入れたとしても、その異世界から出すことが難しかったりするんだけど、そこも融通が利くし。
ステータスが上がっていくと、ランクが下だと入れなかった場所に入れたり。
そういう場所って案外レアアイテムが落ちてたりするんだよね。
ある意味、特典と言いてもいいと思うよ。」
レアアイテムか、それは確かに気になる。
せっかく、異世界に行くなら、その異世界ならではの物とか欲しいし。
「ステータスの話はこのくらいにして。せっかくだし、一番初めの旅行先は、この書類の中からだけど、チヒロが選んでいいよ。」
そう言われて、私は書類をペラペラとめくっていく。
それぞれの世界の特徴が書かれた紙は、見ているだけでワクワクする。
「ちなみに一応言っておくと、観光者のステータスがEランクだから、行ける旅行先もEランク評価の所って訳じゃないからね。むしろ、評価が高い旅行先の方が多いと思う。異世界旅行が初心者の人たちでも楽しめる、いい旅行先がそろっていると思うよ。」
確かに、景色の写真もきれいだし、惹かれる世界がたくさんある。
水の王国…、魔術都市…、空中帝国…魔獣の森…
そして、一つの世界が私の目に留まる。
これは、一度は誰もが、夢見た国なんじゃないか?
実際にお目にかかれるとは!
「ここにします!」
私は、その書類を取って、企画宣伝課の人たちに見せる。
そこに書かれていた場所。
お菓子の国。
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