303話 この世界の女性はパワフルです
甘いお菓子?
そう言えば、プティテーラでお菓子系は食べていないかもしれない。
ウォーターフルーツも甘いけど、どっちかというと飲み物のジャンルだし。
お菓子と言えば、お菓子かもしれないけど…
ミシュティで食べてきた、チョコレートやケーキと言った感じではない。
「さて、着いた。」
案内されたのは、太陽の街に馴染む普通の家。
赤レンガの屋根に白い壁の至って普通の。
クラト公子は、家に取り付けてある呼び鈴を鳴らす。
「はぁーい。」
中から声が聞こえて、ドアがガチャリと開いた。
「あらぁ、クラトちゃん。お久しぶりねぇ。」
クラトちゃん?だ、誰?
「お久しぶりです。デウィスリ夫人。」
「あらあら、夫人だなんて、やーねぇ。今はもうただの人なのよ?」
「いえいえ、気品あふれる風格がいまだに健在ですよ。デウィスリ夫人。」
「あら、そう?もう、口がうまいわね。クラトちゃんったら。」
…めちゃくちゃパワフルな女性が現れたんだが?
そして、クラト公子は、なんだか楽しそうだなぁ。
それにしても、クラトちゃんって…なんだ?
「あらあら、クラトちゃんのお友達かしら?」
「あぁ、そうそう。俺やシン、ナンナルの友達。」
「あらぁ、そうなの?シンちゃんやナンナルちゃんともお友達なら、私も挨拶しないといけないわね。」
クラト公子が私たちの方に話を振ると、そのご夫人は、グイっと顔を目の前に近付けてきた。
び、びっくりしたぁ…
それに、シンちゃん…?
ナンナルちゃん?
第一王子と第二王子のことだろうか?
「初めまして。デウィスリ・フォルモアと言います。」
「は、初めまして。チヒロです。こちらは、ネロ。」
「ネロです。」
緊張気味に答える私と、様子を窺うように答えるネロ。
「デウィスリ夫人は、月の一族でシンやナンナルの親戚だな。」
「うえぇぇ?そうなんですか?」
「えぇ、でも今は、太陽の街があまりにも居心地よくて、こっちの暮らしを楽しんでいるのだけどね?」
確かにどことなく、気品あふれる人だから、地位が高いのかもしれないとは思っていたけど、そこの血統なんですか?
「シンちゃんも顔を出してくれないかしら?アルビナ令嬢と婚約が決まったんでしょ。やっとじゃない?もお、シンちゃんもやっと男になったのね?アルビナ令嬢はよく待ってくれたものね?」
「そうだね。俺もやっと解放されると思うと、肩の荷が下りたというか、なんというか。」
「あら?クラトちゃんも、お相手の方に何も伝えていないのよね?ダメよ。そういう所はちゃんとしないと。」
「え、俺の話になる?」
シン王子の話をしていたかと思うと、クラト公子の話題に切り替わり、クラト公子は顔を歪ませる。
「クラトちゃんもまだよね?」
「そうだね…」
「クラトちゃんは、どうするの?」
「そうだね…」
「シンちゃんの次は、クラトちゃんかしら?ナンナルちゃんかしら?」
「そうだね…」
クラト公子が、押されている…
このご夫人、凄くパワフルで、すごく強いぞ?
私は、押されているクラト公子を横目に、デウィスリ夫人のことを見る。
髪はさすが、月の一族。
銀色の輝かしい髪の毛を一つにまとめ頭の後頭部辺りにお団子を作っている。
服装は、ふんわりとしたドレス。
袖は肘辺りまでで、肘に向かって広がっていく。
デコルテは、がっつり開いているもののデコルテ周りのフリルが気品を醸し出している。
腰はキュッと窄まり、そこからスカートがふんわりとしていた。
一般の方には見えないな。
デウィスリ夫人がクラト公子を一通りからかい終わったようで、満足そうにニコニコとしていた。
クラト公子は、ゲッソリしている。
朝の私の様だな…。
「それで、クラトちゃん。今日は何しに来たのかしら?」
「あぁ…チヒロとネロは、コスモスの観光職員なんだ。」
「あら。」
「それで、月の料理を食べさせてやりたいと思ってね。デウィスリ夫人、作ってもらえないかな?」
とほほと言った感じのクラト公子であったが、頼むときはしっかり頼んでくれるみたい。
「なるほどねぇ。いいわよ?月の料理、振舞っちゃおうかしらね。」
デウィスリ夫人の言葉に、クラト公子はホッとした顔をした。
クラト公子の反応を見ると、作ってもらえない可能性もあったのかもな。
「よろしくお願いします。」
私とネロは、デウィスリ夫人に向かってお辞儀をした。
フフフと笑って頷いてくれたデウィスリ夫人。
月の料理にやっとありつける。
楽しみだなぁ。
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