302話 丸いお月さまのような料理ですか?
クラト公子に連れられてやってきたのは、太陽の街。
昼前の太陽の街は、人の通りが多いように感じる。
「幻の料理を食べられるのが、太陽の街なんですか?」
「いや、月の民が居れば、どこでも食べられるだろうけど、俺が知っている人は、太陽の街にいるってだけ。」
「火の街にはいないんですか?」
「うーん…。いるけど、月の料理を作っているところを見たことがないな。火の街に移り住む人たちって、店を開業する人たちが多いからさ。家庭では、食べているかもしれないけど、人に振舞っているみたいな話は、あまり聞いたことがないかも。」
月の民ということは、内緒にして移り住んでいるのだろうか?
「移り住んでいることは、秘密なんですか?」
「いや、大っぴらに言う人はいないかもしれないけど、そこまで隠すようなことでもないんだけどね。もしそうなんだとしたら、そういう人たちにも住みやすい街づくりをする必要があるな。」
クラト公子は、一族のトップの息子という立場なので、いろいろ大変なんだろう。
「シンが良く、城を抜け出しているだろ?」
「あぁ…視察…ですか?」
視察という名の脱走のような気もしないでもないけど。
「そうそう、城から抜け出す口実ではあるんだけど、ちゃんと視察もしているんだぜ?」
「そうなんですか?」
「そこまで驚かなくても…各街の様子を見ると同時に、移り住んだ月の民たちの様子を見に行っているらしい。俺も知らなかったんだけど。」
ちゃんと、仕事していたんだなぁ…
あれ?
なんで、その情報を知っているんだろう?
「なんで、知ったんですか?」
「火の街に住んでいる月の民に聞いた。たまにシン王子が様子を見に来てくれるんです…ってさ。」
「それにしては、シン王子。火の街に行った時もよそよそしかったですけどね。」
「こっそり見に来るんだと。初めは結構驚いたらしい。」
なぜ、こっそり見に行くんだ。
抜き打ち視察でもしているのだろうか?
「前、こっそり見に来ているシンに話しかけて見たら、元気そうにやっているのであれば、問題ないだろ…と言われたらしくね。こういうのは、人目を気にしていない自然体の姿を見るのが一番いいらしいぞ。バレていたら、意味ないのにな。」
プティテーラのことが大好きなシン王子らしいと言うか。
「今から行く所も、シンに紹介してもらったんだ。シンがたまたま視察に出た時に、俺がシンに声をかけて、一緒について行ったときに、出会った場所。」
本当について行ったんだろうな。
半ば、強引に。
「なんか、不本意なことを思われている気がするけど?」
「いえ、クラト公子のことをしっかり考えてましたよ。」
「それのどこが、いえ…なんだよ。」
疑いの目を向けられたため、慌てて目線を逸らし、ネロへと話を振る。
「ネロ、これから行く月の料理って、どんなものなんだろうね。」
「…そこで俺に振るな。」
「どんな料理なんだろうね。」
「知らん。」
少しは、私の相手をしてくれよ。
呆れた顔をされ、フイっと顔を逸らされる。
「そこは、なんで俺に聞かないの?ネロよりも俺でしょ?」
「えー…どんな料理かネロと想像するのも楽しいかと思いまして…」
「そう。面白そうなゲームだね。じゃあ、どんなものを想像する?」
別にゲームなんて、言ってませんけども?
「そうですね…黄色いスープとかですかね?」
「ちなみになんで?」
「え…月だから、黄色をイメージした何かかなと?」
四大食でそんなに街の名前と関係した物なんてなかったけれど。
でも、それとなく特色をとらえていたと思うし。
「はずれ。」
まぁ、だよね。
「全然わかりませんって…」
「そうか?」
「そうです。どのようなジャンルかだけでも、教えてくださいよ。」
じゃないと、ゲームになりません。
むすっとした顔でクラト公子に訴えると、クラト公子はクスクスと笑っていた。
「そうだな。ジャンルは、あまぁーいお菓子だな。」
そう言うクラト公子は、とても色っぽくにんまりと笑っていた。
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