301話 幻の料理があるんですか?
「昨日は、火の街に行ったんだろ?何してたんだ?」
プレゼントの材料を買いに行ってました…なんて言えるはずもなく。
「フレーブをまた食べたくなりまして、火の街に行ったんですよ。」
「じゃあ、プティテーラの食ツアーでもするか?プティテーラ四大食ツアーなんて、どうだ?」
その言葉に、ネロの耳はピクリと反応した。
こらこら、ちょっと惹かれているんじゃ、ありません。
それに、プティテーラ四大食は、一応もう食べたのだ。
虹の街アルカンシェルの水団子、火の街フーのフレーブ、雫の街ワーテルの魔水魚、太陽の街シャムスのウォーターフルーツ。
「プティテーラ四大食については、一度食べました。」
「そうか。まぁ、フレーブも食べに来ていたもんな。」
「じゃあ、幻の料理でも食べに行く?」
幻の料理ってなんだ?
ここに来て、初めて聞いたんだけど。
ネロの耳が、さらにピクピクとしている。
「疑問に思わないか?虹、火、雫、太陽、それぞれの街に特徴的な料理が置いてあるのに、月にはないことが。」
「え、でも、月は、街ではなく宮殿ですよね?」
王族の人たちが暮らしているお城。
街ではないよね。
「月も一族はいるし、民はいるだろ?」
…確かに、言われて見ればそうかも。
ルアルさんは、月の一族と言っていた。
月の民たちは、どこに暮らしているんだ?
「少し興味出てきたか?」
「じゃあ、月にも街があって、そういう料理もあるっていう事ですか?」
「あぁ、セレーネギアの敷地内に街があるんだよ。」
そうなの?
え、そうなの?
「まぁ、その他にも月の民たちは、虹や火…他の街に住んでいる人たちもいるがな。」
え?なんで?
「一度行ったから分かると思うんだけど、セレーネギアって、門があって、塀に囲まれているだろ?一般の民からすると、あれが思ったよりも不便らしい。」
そりゃそうでしょうよ。
いちいち、あそこの門を突破しないといけないなんて、面倒にもほどがある。
「だから、月の民は、王族貴族、連中の他にそれぞれの街に散って生活している奴らがいるんだよ。」
「それって、月の一族的には、どうなんですか?」
「仕方ないんじゃないか?月の民に、話を聞いた限りだと、門を通過する面倒くささは、そんなに苦じゃないらしいがな。」
「え、じゃあ、なんで?」
クラト公子は、真剣な顔をして、ため息をつく。
そんなに重大な問題が起きているというの?
「出会いがないのが、嫌らしい。」
「へ?」
「は?」
私とネロは、間抜けな声を上げた。
「月の一族って、塀に囲まれているから、閉鎖的だろ?なかなか出会いがないから、それが嫌で外の街に出てくるんだと。外の街に移り住む場合も、ちゃんと手続きを踏んでいるし、月の一族のことが嫌いな訳ではないから、イベントの時は、しっかり帰っているらしいぞ。」
あまりにも真剣に語るクラト公子に、少し拍子抜けだ。
「そんな顔するなって。確かに昔はいいかもしれないけど、今は恋愛主流。恋愛は出会いが大切だからな。閉鎖的な所よりも、出会いに開放的な方がいいだろ?」
「それで、今の話が、月の料理と、どう繋がるんですか?」
出会いの話をされただけで、全然料理と繋がる気がしないんだけど。
「月の一族じゃないと、月の領地には入れないだろ?」
「そうですね。厳重なチェックが、必要ですよね。」
「でも、月の一族がそれぞれの街にいて、住んでいるんだぞ?あるに決まってるだろ?月の料理が。」
…そういうことか。
閉鎖的な月の民たちが、月の領地で食べていたものが、他の街でも食べられるという事。
「なんで、他の街の人たちには、浸透していないんですか?」
「そりゃ、それぞれの街も自分の土地の料理には、自信を持っている。月の民の人たちもそれを分かっているのかもしれないな。」
「クラト公子は、その月の料理を食べられる場所を知っていると?」
「あぁ、俺の行きつけでよければ、案内するけど?」
ニヤリと悪い顔をしている、クラト公子。
あぁ…してやられた気分だ。
「ネロ、どうする?」
「行くに決まっている。」
食いしん坊大魔神は、行く気満々の様だ。
クラト公子に、いいように転がされた気もするけど、月の料理があるのなら、食べない訳ないよね。
ここは、好奇心に従って、外に出ることにしようか。
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