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299話 ドア越しの攻防


昨夜、お土産の件でネロとギャイギャイ言い合いをしているうちに、二人で寝落ちたらしい。

目が覚めると、ベッドに倒れこむようにして、私とネロは寝ていた。


「はぁ…ねむ。」


目をこすりながら、もぞもぞと起き上がり、のそのそと着替えをして、ベッドから這い出る。

すると、部屋のインターホンがピンポンと鳴った。

ドアの方を一度見て、聞こえなかったふりをしようかと悩む。

だって、今の恰好じゃ部屋の外になんか出られないし。

すると、もう一度、インターホンが鳴った。

どうやら、出ないという選択を取らせてはくれないらしい。

まったく朝から誰だというのだ。

また、ピンポンとなる。


「…寝ていることにしていいかな…」


ピンポン。


「…髪の毛だけでも…」


ピンポンピンポン


「顔洗いたい」


ピンポーン


う、うるさい。


「分かったよ、出ればいいんでしょ。出れば。」


あまりにもしつこく鳴る呼び出し音に、耐えきれなくなり、ドアの方に行きガチャリと開ける。


「はい、どなたですか?」

「よぉ。」


そこに立っていたのは、爽やかな笑顔をした、クラト公子であった。

私は、クラト公子をじっと見つめ、ドアをそっと閉じようとする。


「ちょ、ちょ、待てって。」


ドアの隙間にクラト公子が足を差し入れてきて、ドアが閉じ切らない。

ちょっとでも力を入れて、ドアを閉じようとするとクラト公子の足がお亡くなりになるだろう。

こんな、悪徳販売人のようなことを、しないでほしい。

ギリギリと力は抜かず、ドアを閉める手も緩めない。

もちろん、クラト公子もドアから足を抜かないし、ドアを開ける手を緩めないけど。


「あの…何の御用で?」

「いやいや、久しぶりに会った友に対して、これは、どんな歓迎の仕方だ。」

「歓迎されているように見えるなら、医者に行くことをお勧めします。」


クラト公子とドアの隙間からにっこりと笑いつつ、ドア越しの攻防を繰り広げる。


「いやいや、ちゃんと用があって来たんだって?」

「だから、ご用件は何かと聞いているでしょう。」

「それは、もちろん。チヒロとネロと一緒に遊ぼうかと思ってね。」


それを聞いて、ドアを閉める力を一層強くする。


「待って、待って。ちゃんと用があって来たのは本当だから、いったん部屋の中に入れてって。」


あまりにも必死に、クラト公子が言うので、しかたなくドアを開ける。


「侯爵家の俺に対してこんなことをできるようになるなんて、なかなか神経図太くなったよね。」

「なんですか?追い出しますよ?」

「あはは。ごめん、ごめん。」


全然謝る気のなさそうな、クラト公子にため息をつき、仕方なくお茶の準備をする。


「なんで、プティテーラの人は、アポなし、さらに朝早くの訪問なんですかね。」


お茶を出しながら、クラト公子に問うと、クラト公子は、あははと笑っている。


「それで、何か御用で?」

「ネロはまだ寝ているのか?」

「そうですね。昨日の言い合いが白熱しまして、まだ寝ています。それで、何の御用で?」


この人、私の質問に答えるつもりがあるのだろうか?


「昨日、ファイに会ってさ。チヒロとネロが火の街に来たと聞いたから、元気にしているかなと思って様子を見に来たんだ。」


…それ、用事と言うほどの物なのかな?


「あとは、様子を見るついでに、シンとアルビナ嬢のことも知りたいかなと思って。」


シン王子とアルビナ令嬢。

いや、でも派手な婚約発表を行ったのも昨日だしな。

多分、元気なんだろうけど。


「お二人のことですし、元気にやっているのでは?」

「あぁ、元気だよ。」


じゃあ、特に伝えることもないように感じるけど。


「だから、今日は遊ぼうと誘いに来ただけだって。」

「…なら初めからそう言ってくださいよ。」


公子という立場は、暇なのだろうか?

火の街の様子を見る限り、そんな訳ないと思うんだけど。


「シンとアルビナ嬢から、二人をもてなしてと頼まれているしね。」


…え?

今なんと?


「どういうことでしょうか?」

「滞在時間を延長したんだろ?だから、暇にならない様に、案内をしてほしいと二人から頼まれたんだよ。」

「それで、こんな朝早くから…?」

「あぁ、さて何して遊ぶ。」


この公子、私の話を聞いているのだろうか?

公子ではなかったら、きっと手が出ていたかもしれない。

私も図太くなったかもしれないが、プティテーラの人たちも、私に対する扱いが、客人ではなくなってきている気がする。

クラト公子に会えたことは、別に悪いことではないけど…

ちょっと、扱いが雑じゃない?と思わずには、いられなかった。

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