表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
303/953

297話 人に触れて、心温かくなりました


「アピさん、ファイさん、今日はお世話になりました。」


昼食をいただき、そしてまた糸選びをして、辺りはどんどん暗くなっていく。


「二人のおかげで、いい物と出会えました。」

「いえいえ、うちの糸をいい糸と言ってもらえたこと、嬉しいです。こちらこそ、ありがとうございました。それに、糸をたくさん買ってもらいましたし。」


そういって、私の手元にある袋をニコニコしながら覗き込んでいる。

白熱したのもあるが、久しぶりにしたハンドメイドに、作りたい欲が大爆発して、結果、糸をたくさん買うことになったのだ。

盛り上がりに盛り上がった…

酔っぱらっているのかと言われてもいいほどに。

もちろん、飲んではいませんけど。


「もしよかったら、出来上がりを見せてもらえると…お店でも置いてみたいな…なんて。」

「ミサンガをですか?」

「はい…コロロヴァードと意味がぴったりのミサンガ。置かせて貰えたら嬉しいです。」


ほうほう。

商売の鏡だねぇ。


「もちろん、良かったら置いてください。」


そういうと、顔をぱぁっと明るくするアピさんに、撃ち抜かれそうになる。

しばらくなかったから、慣れたと思っていたけど。

可愛い物は、やはり可愛いのである。


「じゃあ、アピ。僕も行くね。」

「うん。ありがとう、ファイ。また来てね。」


アピさんに大きく手を振ってお店を後にする。


「ファイさんも、今日はありがとうございました。わざわざ、休みだったのに。」

「いえいえ。とても楽しかったので。こちらこそありがとうございました。舟まで送ります。」

「え?いいんですか?」

「はい!」


元気いっぱいに答えてくれるので、お言葉に甘えて送ってもらうことにした。

歩きながら、街並みを見ていく。

人同士の交流が盛んみたいで、笑いが絶えない。


「…前に来た時も思ったんですけど、火の街ってなんだか温かいですよね。」

「そうですか?」

「はい。クラト公子と来た時に、思った事なんですけどね。それに、クラト公子は、大人気だったじゃないですか?」


ファイさんは、キョトンとした後に、少し考えるそぶりをする。

そして、ニパっと満面の笑みを見せてくれた。


「そうですね。火の街の人たちは、クラト公子が大好きかもしれないですね。」

「かも?」

「はい…恥ずかしながら、あまり自覚をしていなかったというか…でも、クラト公子に会うと、クラト公子に声を掛けずにはいられないと言いますか…クラト公子の言葉で気合が入ると言いますか。」


え?

あんなに人が寄ってきていたというのに?


「街の人も、クラト公子がふらっと現れて、様子を見に来ることに、あまり疑問を持っていませんし。でも、改めて言われると、街の人みんな、クラト公子に寄り過ぎでしたね…」


照れながら、ポリポリと頭をかくファイさん。


「街の人たちが温かいと言うのは、そうかもしれないです。」

「やっぱり。」

「モノづくりって、一人で黙々とやると思われがちなんですけど、モノづくりの裏で支えてくれる人たちが、大事なんです。材料や、燃料を届けてくる人たちとか。それに、代々受け継がれる技。それも、繋がりあってこそですから。それに、買ってくれる人たちとの繋がりもありますしね。」


そうか。

だから、この街は、ヒトとの繋がりが強く見えるのか。

人との繋がりって、奥が深いんだんぁ。


「いいですね。人との繋がり。」

「ですよね。」


火の街を再び眺めながら、舟までの道のりを歩く。

笑いが絶えない街並みに、心が温かくなるのを感じる。


「あ、舟、見えてきました。」

「あれですか?」

「はい。」


舟のところまで行き、ファイさんの方に振り返る。


「改めて、今日は本当にお世話になりました。」

「いえいえ。まだしばらく滞在するんですか?」

「はい。」

「時間があったら、また火の街に来てくださいね。」

「ぜひ!」


そう言って、ファイさんに再びお礼をして、舟に乗り込む。

ファイさんは、姿が見えなくなるまで、手を振ってくれていた。


「楽しかったねぇ。」

「いい街だな…」


ネロがそんなことを言うなんて、珍しい。

いつもなら、まだ街の一部しか見ていないだろう…とか言いそうな物なのに。


「そうだね。」


温かい親切に触れて、気持ちも温かくなったのだろう。

読んでいただき、ありがとうございます!


よろしければ、

評価、ブックマーク、感想等いただけると

嬉しいです!


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ