295話 プレゼントの意味には諸説ある?
実際に見てもらったことにより、イメージによる糸の色選びは大いに盛り上がる訳で。
「シン王子は、銀色は入れたいですよね。」
「アルビナ令嬢と色違いにするのはどうでしょう?」
「銀と黄色のシン王子と、オレンジと黄色のアルビナ令嬢。」
「いいですね。」
ネロも糸をじっと見ながら、コスモスの皆のことを思い浮かべているようだ。
「そういえば、気になったことがあるんですけど。」
「なんですか?」
糸を持ちながら、首を傾げるアピさんに、私も首を傾げる。
「ミサンガは、願掛けやおまじないで渡すと言っていたんですけど、他にも誓いと言った意味で渡すと言ってましたよね?」
言ったような気がするけど。
それがどうしたんだろう?
「恋人や結婚相手に渡すと。それって何か意味があるんですか?」
意味…
「私の世界では、身につける物を渡すとき、それ自体が意味を持つことがあるんですよね。」
「プレゼントの物自体に意味があると?」
「はい。身につける物、体に触れたり、その人を着飾るものになりますよね。なので、気軽に渡すと勘違いさせるんですよ。そのいい例が、指輪です。」
三人の方に手をぱっと開き、見せる。
「指輪には、付ける指によって意味があるんです。特に、左手薬指。この指は、結婚指輪をはめる指。この指に、指輪をはめていると、結婚している、とい意味に周りから思われるんですよね。」
「そんなことが…」
「まぁ、おしゃれで、その指に指輪をしている人もいますけど。」
恋人がいるアピールで、付けている人もいたし。
あくまで、そういう意味があるよ…というだけなので、強制ではないし。
「指輪には、約束という意味があったり、ネックレスには独占という意味があったり、とにかく何かと、裏に隠された意味があるんですよ。身に着ける系のプレゼントの裏の意味って、不穏なものが多くて。」
「独占、約束…そうですか?」
「ブレスレットは、手錠を思わせるから、束縛を意味するとか、足首につけるアンクレットは、足枷だ…とか?」
思い出しながら、昔調べたプレゼント、意味を思い出してみる。
「手錠と足枷は、確かに不穏ですね。」
「でしょ?あくまで諸説ある中の一つなんですけど。それで、ミサンガって、身につける場合、手首と足首にすることが多いんですよ。なので、つける時に、永遠を誓うと言った感じでしょうか。」
私が何気なく言うと、三人は顔をゆがめた。
「ミサンガ…不穏では?」
「なんか怖くないですか?」
「俺は、縛られたという事か…?」
いやいや、待って?
「あの、諸説あるので…素直な気持ちとして、私は、願いをかなえるミサンガとして、送らせていただきますし。それに、送られる相手によって、意味も変わるので。私は、あくまで、友人枠でミサンガをプレゼントしようと思っただけなので、縛りたいとか、独占したいとか思ってませんから。」
やばい。
このままでは、私が多くの人を縛りたい、ただのやばい奴になってしまう。
「恋人から渡されるのと、友人から渡されるのでは、またプレゼントの意味が違うんですよ。」
私の必死な説得により、三人は何とか落ち着いてくれた。
危なかった…
「それにしても、チヒロが住んでいた所では、何かと意味を求めたがるのだな。」
ネロに言われて、確かにと思う。
プレゼントするにも、意味がある。
意味があると売れるんだよね…多分。
チョコレート戦術のように。
指輪も元々はウエディング業界によるものだと聞いたことがあるし。
「形がない不確かなものを、目に見える形で残したいのかもね。」
「形に残したところで、何も変わっていないだろ?」
「そうなんだけど。でも、目に見えるだけで、気持ちの持ちようが違うんじゃない?」
だって、友情とか愛情とか、不確かなものに人生をかけるのって怖いじゃない?
だから、何か形に残し、安心が欲しいのかもしれない。
今だけかもしれない、永遠に願いを込めて。
プレゼント選びで、こんなに深く考えるようになるとは思わなかったな。
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