3話 0円という言葉は魅惑の響き
私のことを誰も知らない土地に行きたい
そう思った私はスマートフォンをタップしながら旅行プランを調べていく。
「やっぱ海外かなぁ。でも、海外に行かなくても知り合いに会わない場所ってあるよなぁ」
いざ探してみてもピンとくるものはなく、行先と金額が並んだ欄をずっとスライドしていくだけの作業となりつつある。
やはり、旅などと考えず家にこもるかと引きこもりムーブを発動した矢先に、気になる広告を見つけた。
“まだ見ぬ世界へ”
“行先自由”“移動も即日” “サポートも充実”
“初めての登録は0円”
“しかし今なら豪華サポート品プレゼント”
“一緒に楽しみましょう”
“コスモス 観光部企画宣伝課”
「初めての登録0円ってほんと!?」
大学二年生で生活が落ち着いてきたとはいえ、まだ学生のため金銭面との相談をするとあまり遠出はできない。
海外逃亡したいがやはりお金が厳しいため、早々に海外に行く選択を切り捨てた。
行先自由で移動がすぐできて、サポートも充実していて、初回は登録のため0円。
よく考えればすごく怪しく、冷静な判断をすれば、絶対にこんなところを選択するなどありえないのだが、私の頭の中は、今までの出来事により、知り合いに会いたくない、自分探しの旅に出たいという旅行の目的からだいぶおかしなことになっていたため、そのおいしい文句に飛びついた。
記載された欄をタップして、登録画面を開く。
登録画面には名前を入力する場所と、なぜか自分の特徴、現在の服装等を入力する場所がある。
行先の入力は、次のページからなのだろうか。
何ページかに渡り、入力していくことも確かにあるしと深く考えず、名前欄に有間千紘、特徴欄に髪の色や長さ、身長、服装を入力し確定ボタンを押す。
「え!?」
確定ボタンを押したと同時にスマホ画面が光りだした。
入力を確認しました。
入力を確認しました。
と音声が当然鳴りだし私の視界はホワイトアウトした。




