293話 切れたら願いが叶うもの
「植物は、心を癒す効果もあります。なので、コロロヴァードの種や苗は、よくプレゼントに選ばれるのですよ。」
そうなんだ。
お土産にぴったりじゃん。
普段、仕事で忙しい企画宣伝課の人たちに。
「そして、コロロヴァードから採れた糸も、不思議な効果があるんです。」
「不思議な効果?」
「はい。ナトゥラで採れたコロロヴァードは特になのですが、それぞれの色によって、お守り効果があるみたいなんですよね。」
お守り効果。
ほんとだ、書いてある。
なになに?
「赤色の糸は、恋愛の色。恋愛運アップ…」
「緑の糸は、健康の色。健康運アップ…」
お守りじゃなくて、占い…?
「それは、販売促進のためのポップで、完全に私の家の両親の主観というか…あてにしないでください…」
「いやいや…」
「あたしが見て欲しいのは、こっちです。」
占いの文が書かれたのとは、別の紙。
「切れない糸?」
「はい。コロロヴァードから作られた糸は、丈夫で切れないと言われています。切れることが珍しいので、切れた時に願いが叶うと言われていたりします。」
「切れた時なんですか?」
「はい。なかなか切れないので…自然に切れる方が珍しいんです。」
なんかどっかで聞いたことあるかもなぁ。
切れたら願いが叶う…
「なかなか切れないので、縁結びとしても使われることがあるんです。良縁を結ぶ。結婚する方の贈り物に送る方や、恋人に送って、二人で永遠を誓うものとしても利用されていますね。」
「シン王子とアルビナ令嬢にぴったりだなぁ。」
「ですね。結構タイムリーな話題だったかもしれません。」
こういう裏の意味がある贈り物って、なんかいいよね。
「糸かぁ…」
「刺繍をしたりする糸にも、ちょうどいいですよ。」
刺繍。
「この糸で、さりげなく縫い合わせて、送る方もいます。」
手芸。
「あ…思い出した。」
「なにをだ?」
「切れたら、願いが叶うというもの。私の世界にもあったような気がしていたんだけど、それを思い出した。」
いいじゃん。
材料はちょうど、糸だし。
作れるじゃないか。
しかも、誓いの意味を込めて、手首や足首に巻くオシャレなアイテム。
「ネロ、私は決めました。」
「だから、なにをだ…?」
「お土産兼お世話になった人たちへのプレゼント品を。」
思い出したことと、プレゼントを何にするか決まったことにより、スッキリとした。
そうと決まれば、さっそく糸の色選びから、しようと思う。
それぞれの人の色のイメージを糸でも使いたいな。
「ネロも色探し手伝って。」
「だから、何を作るんだ。」
「糸選びを手伝ってくれたら、教えるから。むしろ、モノづくりも手伝ってもらうし。」
決まったことにより、早く作りたいという、ソワソワした気持ちが出て来てしまう。
「わかった。手伝うから、俺を引っ張るな。」
ネロを引っ張り回して、色選びをスタートしようとしたら、ネロに怒られた。
「ごめーん。テンションが上がってしまって。」
「思考が危険すぎて、ついていけないんだが?」
「そんなこと言わないで。」
満面の笑みをネロにプレゼントしたら、ネロがボソリと呟く。
「こわっ…」
どういう意味だ、こら。
「ほら、早く。」
「分かったって。」
ネロを引っ張っている様子を、アピさんとファイさんがじっと見ていて、少し恥ずかしくなる。
「何を作るか、決まったんですか?」
「はい。」
「どんなものを作るんですか?」
「切れたら、願いが叶うものです。」
「コロロヴァードとおそろいですね。」
そう。
だって、コロロヴァードのおかげでピンと来たんだもの。
アピさんには、本当に感謝しかない。
プティテーラの人たちにもプレゼントをしたいから、ファイさんとアピさんにも色選びを付き合ってもらおう。
なにせ、私が作るものは、糸の色が結構重要になるのだから。
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