292話 心を映す植物らしいです
まさか、あのフレーブのお店の女の子と再び会い、こうして知り合いになるとは思わなかった。
それを言うなら、ファイさんともう一度会うとも思わなかったのだけど。
「それで、繊維の店に何を?」
あぁ…
再会に盛り上がり、本来の目的を忘れる所だった。
「お土産探しをしていて。」
「お土産ですか?ならば、ここではなくガラス細工などの方が向いているのでは?ここにあるのは、布と糸など、お土産になる前の物ですよ?」
アピさんは、首を傾げながら、私たちに問いかけてくる。
「どうせなら、手作りの物を渡したいと、ファイさんにお願いしたところ、ここに連れて来てもらいまして。」
「あぁ、そういう事だったんですね。手芸などの手作りには、布や糸は必須ですから。それで、何を作るか決まっているのですか?必要なものなどありましたら、ご案内しますよ?」
ニコニコと親切なアピさんには、本当に申し訳ないんだけど。
「まだ、何を作るか決めていなくて。実際に見に来てから決めようと思っていたので。」
「そうだったのですね。私は、なんて早とちりを。」
「いえいえ、アピさんのせいでは、ありませんから。」
ぺこぺこと頭を下げるアピさんにフォローを入れつつ、お店の中をグルっと見回した。
「少し見て回ってもいいですか?」
「もちろんです。ぜひ見て行ってください。分からないことがありましたら、何でも聞いてくださいね。」
本当に親切…
接客の鏡。
居心地のいい接客って、こういう事を言うんだよ、絶対。
アピさんに許可をもらったので、さっそく店内を見て回る。
「種類がたくさんあるな。」
ネロも興味があるみたいで、キョロキョロと楽しそうに見まわしている。
こういうお店って、糸一つでも種類が豊富だ。
色、長さ、太さ、原料、その他もろもろ。
「せっかくだし、プティテーラで採れたものを使いたいな。」
「ならば、天然繊維じゃないか?」
植物や動物からとれた繊維。
「おい、あれを見て見ろよ。」
「あれ?」
ネロが促す方を見てみると、ひと際目立つコーナーが出来ていた。
なになに?
「コロロヴァート?」
なんだろう、これは。
見た目は、糸みたいだけど…聞いたことがないな。
「それですか?」
「アピさん。」
「辺りを見回していたので、声掛けに来ちゃいました。」
えへへという効果音が付きそうな無邪気な笑顔に変な声が出そうになる。
「た、助かります。探していたので。」
「やっぱり!」
当たりましたね…と喜んでいる姿は、可愛さ満点なんだけど、今はそうじゃなくて…
「あの、これは、なんですか?」
「そうでした。これは、コロロヴァード。色のついた綿花からとれた糸です。」
色のついた綿花?
説明通り、そのコーナーには、いろんな種類の色の糸が並べられていた。
「色のついた綿花ということは、染めていないんですか?」
「はい。花が元々持つ色がそのまま糸の色になっているんです。」
「こんなに種類があるんですか?色の種類。」
100…いやもっとあるかもしれない色の種類に正直、圧倒されてしまう。
「本当は、もっとあるんです。このコロロヴァードって、同じ色がないのではないかと言われるほど、いろんな色になります。」
「じゃあ、色は出来てからのお楽しみということですか?」
「いえ、ちゃんとコントロールしてあげれば、欲しい色になりますよ。」
コントロール…
花の交配みたいなものだろうか?
「気持ちのコントロールです。」
「気持ち?」
「コロロヴァードは、心に影響されると言われています。その人を映す鏡なんですよ。といっても、ここに置いてあるコロロヴァードのほとんどが、ナトゥラの天然物なので、コントロールが一切されていないものになりますけど。」
「コロロヴァートを育てることもできるということですか?」
「もちろん。種からでも、苗からでも手に入ります。」
コロロヴァードか…
心を映す植物って、なんか面白そうじゃない?
これは、お土産候補になりそうだと思い、楽しくなってきたのであった。
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