289話 火の街にのんびりと向かうまで
改めて新しい味の水団子を食べて、お腹いっぱいになった。
さて、この後何をしようか。
「こんなに異世界から、人が来ていると思わなかったな。」
「そもそも、最近はほとんどナトゥラにいて、カナリスの様子を見てなかったのが原因じゃないか?」
月の約束とシン王子とアルビナ令嬢の婚約の話に夢中になり過ぎて、街の様子をしっかり見られていなかったかもしれない。
「街の様子を見ながら、お土産、何にするか見に行こうか。」
「いいんじゃないか?」
ネロがお土産に乗り気なのが面白いよね。
「どこの街に行く?」
「そうだなぁ。何かを作るなら、材料調達にちょうど良さそうな、火の街かな。出来合いの物を買うなら、太陽の街だろうし。」
「観光客が技術を学びに来ているんだとしたら、火の街は必ず見に行くだろうな。プティテーラの技術の中心地。」
「じゃあ、今日は火の街の様子を見ながら、お土産にちょうど良さそうなものを見て回ろう。」
せっかく、一週間という猶予もできたのだ。
手作りする時間もあうだろう。
「何かめぼしい物でもあるかな?」
「見に行ってみないと分からないだろう…」
舟に乗り込んで、火の街へと向かう。
水路から見る街並みも、賑やかで楽しい。
水路を利用している人もたくさんいるみたいだ。
「お昼には、フレーブを食べようか。」
「まだ食うのか…」
「じゃあ、ネロは要らないということで。」
「そんなことは、言っていない。」
初めから素直に欲しいと言えばいいのに。
まったく。
「この世界では、魔力はエネルギーとして使われているんだな。」
「確かに。何か物を動かしたり、音を運んだり。」
「刻印の技術が、進んでいる。」
「刻印って掘るのが、大変なんだよね。」
私は、舟にはめ込まれている刻印をまじまじと見る。
これに、複数の魔力を刻み込んで、複雑なエネルギーを生み出している。
この舟の自動運転も可能にしている。
「プティテーラは、世界を開いていなかった。ということは、プティテーラにそれを専門にしている人たちがいるということだ。ぜひ、見て見たいものだな。」
「やっぱり、火の一族の人なのかな?」
「さあな。」
ネロの好奇心も擽られているらしい。
ネロをここまで気にさせる技術者ってどんな人なんだろうな。
「技術者と言えば、ラックさんもそうだよね。」
「ラックも優秀だな。」
「気球をオリジナルで組み立てるなんて聞いたことないし、それに気球というよりも、変形ロボットだし。」
「あれは、よかった。」
ネロは、楽しそうだったよね。
変形したロボット型気球を見ていた時。
「ボタン一つで変形なんて、面白いだろ?」
「そうだね。」
私も、ロボットアニメ好きだったけど、ネロほど興奮していたわけではない。
上には上がいたわけだ。
ネロは、地球のロボットアニメ好きだろうな。
ロボット同士で戦うアニメや、ヒーローのマシンが合体する実写ムービー。
今度見せてあげたいよ。
「ラックに聞いとけばよかったな。」
「でも、ラックさん。今は絶対に忙しいよ。シン王子とアルビナ令嬢に忙殺されているんだろうな。」
朝、飛んでいた小型の飛行船も、きっとラックさんが用意したのだろうし。
「それは、間違いないな。」
ネロも苦笑いだ。
あの二人の要望に応えきる、ラックさんってやっぱり優秀である。
もしかしたら、ただの観光案内人じゃない?
「次回あった時に、忘れていなかったら聞いてやる。」
「そうだね。」
舟に揺られながら、のんびり旅。
ネロと話をしながらの舟移動は、楽しかった。
「そろそろ、火の街に着くな。」
クラト公子やシン王子と一緒に来た火の街が、再び見えてくる。
「ここも賑わってるね。」
「観光客も多い。婚約発表効果もあるだろうな。」
「行こうか。」
舟を停めて、火の街に降りる。
前回は、必要なものを揃えるというやることがあって、ゆっくりできなかった。
今日はのんびり火の街散策ができるだろう。
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