287話 空から降ってきた婚約発表
あの後、図書館からアルカンシェルの宿泊施設に帰って、寝る準備をしてすぐに寝た。
朝早かったから。
そして朝。
今日は、ついにシン王子とアルビナ令嬢の婚約発表日だけど。
「いつ発表するんだろうね。クラト公子とアルビナ令嬢の時みたいにパーティでもするのかな?」
「パーティは、婚約パーティで行うんだろ?だったら、今回は違うんじゃないか?」
「そっか。」
エントランスで朝食を頼み、優雅に朝の時間を楽しむ。
今日は、魔水魚のスープ。
「アルカンシェルでも、魔水魚の料理が食べられるなんて…」
「うま…」
魔水魚は、雫の街ワーテルの名産品。
ここの宿泊施設、優秀過ぎ…
はぁ、朝から満足だよ…
「今日はどうしようか。」
「いつ、シン達が動くか分からないからな。」
「そうなんだよねぇ。」
お腹いっぱいに食べたら、眠くなってきた。
大きく欠伸をすると、ネロもつられて欠伸をする。
こういうゆったりした、一日があってもいいかもしれない。
ベッドに体を鎮めて、ゴロゴロとする。
わぁぁぁぁぁぁ
きゃぁぁぁぁ
「なに?」
「外が騒がしいな。」
「何かあったのかな?」
気になったので、窓の傍に寄り、ガラッと窓を開ける。
すると、キラキラと光る粒が降っていた。
「一体、なにごと?」
「上を見て見ろ。」
ネロが指し示す方を見ると、大きな物体が上に浮いていた。
「気球?」
「気球というよりは、小型の飛行船じゃないか?」
「それだ。」
その小型の飛行船から、キラキラと光の粒が降り注いでいる。
「これ、魔力の光の粒だな。」
「これ、魔力なの?」
「あぁ。性質を変化させる前の純粋な魔力だ。」
飛行船から魔力…
「ねぇ…あれって、もしかする?」
「あぁー…」
上を見上げながら、今日のイベントを思い出す。
『皆、気持ちの良い朝を過ごしているだろうか?』
「シン王子の声だ。」
「この光の粒がスピーカーの役割をしているみたいだな。」
空から降り注いでいる光の粒全てが、スピーカーってこと?
空から降り注ぐシン王子の声に、街中が色めき立つ。
『俺、プティテーラ第一王子、シン・フォルモントは、太陽の一族シュルーク公爵家、アルビナ・シュルークと婚約をしたことをここに告げる。本日は、プティテーラの民に証人になってもらいたく、このようなものを用意させてもらった。』
シン王子の声に、街中が大騒ぎになった。
「やっぱりシン王子が、アルビナ令嬢様を射止めたのね。」
「じゃあ、仮面のお方は、どうするの?月の約束でアルビナ令嬢様に、愛を誓ったのよ?」
「でも、今の発表だと、アルビナ公爵令嬢様は、シン王子を選んだという事でしょ?」
「のちの王妃は、アルビナ公爵令嬢様という訳だ。」
あはははは…
「まさか、空から発表するとは思わなかった。」
「やること成すこと、派手だな…」
『皆様、ごきげんよう。このような形で婚約を告げることにしたのは、私とシン・フォルモント第一王子の意思でございます。私の婚約の件で、大変お騒がせさせてしまったこと、お詫び申し上げます。私、シュルーク公爵家、アルビナ・シュルークは、シン・フォルモント第一王子と婚約することを、皆様の前で告げさせていただきます。』
「こんな形で、今まであった噂をかき消すなんてね。」
『最後に、シン・フォルモントから。』
『え?』
アルビナ令嬢の、え?…って声が聞こえた気がするけど…
『アルビナの婚約発表に現れた仮面をつけた男、それは俺だ。初めからアルビナを俺と取り合う男など存在しない。俺が、アルビナに月の約束を誓った。そういう事だ。』
「えぇ…もう、シン王子ったら、アルビナ令嬢のことベタ惚れじゃない。」
「これは、王宮ロマンスよ。」
「ロマンチックじゃない。」
街中は、真実を知ってさらに色めきたった。
「シン王子、ぶっちゃけてるね…」
「ただの独占欲じゃないか?」
「それはそう。たとえ真実が自分だとしても、取り合って奪われたと思いたくないんだろうね。」
『婚約イベントは、一週間後。プティテーラの民たちよ。ともに祝ってくれると嬉しい。それでは、本日も幸あることを。』
上を見上げると小型の飛行船は、去っていく。
あの方向は、観光案内所がある方だろう。
また、ラックさんが大活躍したんだろうな。
「ぷっ…これは、想定外だよ。」
「ふっ…だな。」
「さすが、シン王子とアルビナ令嬢。」
「王族が婚約をしたんだ。プティテーラは、賑わうだろうな。」
窓から下を見る。
「シン王子とアルビナ令嬢様が婚約成された。これは、街でも盛り上げなければ。」
「うちの店も、盛り上げるぞ。」
街中は、お祭り騒ぎだ。
他の街でも、同じ感じなんだろうな。
「プティテーラは、賑やかだね。」
「そりゃ、あの王子が居ればそうだろうな。」
まさか、空から婚約を発表するなんて。
思い出したら、また笑えてきた。
「やっぱり、今日は外に出ようか。」
「そうだな。」
シン王子とアルビナ令嬢の婚約発表に、盛り上がる街を見て回るのも絶対楽しいだろうし。
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