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275話 世界に尽くす王子 世界を照らす令嬢


「私も…母から月の約束の話を聞いたとき、相手はシンがいいと思った。このままずっと一緒に遊んで、笑いあえたらいいって思ってた。」


シン王子がポツリと告げた言葉に答えるように、アルビナ令嬢は、はっきりシン王子に告げた。


「アルビナ…」

「なんで、そんなに意外そうな顔をしているのよ。そんなこと、当たり前でしょ。だって、シンが私に月の約束と誓ってくれたことを、私も了承しているんだから。」

「アルビナ…!」

「なによ。」


アルビナ令嬢は、照れると口が悪くなるけど、今、まさにそれだな。


「俺は、待たせ過ぎたと思っていた。」

「待たせ過ぎなのは、否定しないけど?」

「え?」

「当たり前じゃない。一族に別の婚約者を用意されるくらいには、待たされ過ぎたわ。」

「す、すまない。」


ジトッと見るアルビナ令嬢の目に、シン王子は耐えられなくなり、目を逸らす。


「まぁ…でも、シンは必ず私との約束を守ってくれると思っていたわ。貴方って、いつも必ず、約束と誓った言葉は、守ってきてくれたもの。一緒に怒られてくれると言った時も、二人で迷ったときに手を離さないと言った時も。ね?そうでしょ。」

「当たり前だ、お前との約束を破る訳がない。」

「そうよね。」


昔から築いてきた二人の絆。

私が思うよりも、ずっと深くて固い絆だったんだろうな。


「アルビナ。」

「なに?」

「俺は、プティテーラの王になる。」

「…知っているけど?」

「そして、俺と婚約したアルビナは、その時、この世界の王妃になるんだ」

「……。」


淡々と告げる言葉に、ドッシリとした重さを感じた。

アルビナ令嬢も真剣な顔をして、シン王子を見つめ返している。


「アルビナ、外を見ろ。プティテーラは広いよな。」

「…そうね。」

「そして、プティテーラは世界を開き、今後は外交をしていくだろう。そうしたら、広い世界はさらに広くなる。」

「えぇ。」

「俺は、このプティテーラという世界が好きだ。プティテーラの民が好きだ。この広大な自然の景色、カナリスのそれぞれの街の文化、すべてが好きだ。」


シン王子がプティテーラを語るときは、愛おしく大切そうに話す。

今回も、そう。


「世界を開こうとも、この世界を汚させはしない。俺はプティテーラを守り、そして異世界の文化を取り入れ、さらに発展させていく。導いていく。そして、プティテーラへ生涯をかけて尽くしていく。アルビナ。俺と一緒に、この世界を導いていこう。支えていこう。…いや、支えていってくれないか?」

「…あら、なんで言い直すのかしら。」

「いや、強引だったかと。王妃という立場は、やはり大変だ。だから、アルビナの意思は大事だ…」


日和ったシン王子をアルビナ令嬢は、鼻で笑う。


「フン。私が立つのは、あなたの隣よ。」

「あぁ…分かっているが。」

「なら、この世界を共に導き、支えていくのは当然よ。だって、貴方がこの世界を好きな様に、私もこの世界が好きなんだもの。そして私は、貴方と月の約束を誓った時から、王妃という立場を覚悟していたわ。改めて確認する必要なんてない。」


外を眺め、そして、シン王子を見つめ返す。


「…そうか。アルビナ、俺と共にプティテーラを見て行こう。」

「もちろんよ。」


二人は見つめ合い、笑い合う。


「それにしても、俺は今後も幸せだな。」

「なによ、急に。」

「大切なプティテーラを愛しているアルビナと共に見守っていけるんだからな。」

「何を言っているの?」

「事実を言っているのだが?」


何でもないことのように、普通に告げるシン王子にアルビナ令嬢は押し黙る。


「…私だって、大好きなシンと共に一緒にやっていけることが嬉しいのに。シンばかりズルいわ。」


ムスッとしながら、ボソリと呟くアルビナ令嬢。

その呟きをシン王子はしっかりと聞いたみたいで、顔は蕩けそうな笑顔。

アルビナ令嬢は、呟きを聞かれたことに恥ずかしがりながら、でも嬉しそうに顔を真っ赤にした。


「……。」

「甘ったる…」


私は、空気。

私は、流れる風。

私は、無。

何も聞いてない…何も聞いていない。


狭い空間での甘い空気に、ネロは胃もたれを起こし、私は窒息しそうだった。

甘い…甘いよ…


そんなことも知らず、シン王子とアルビナ令嬢は、おでこをコツンと当てて、二人で甘く微笑みあうのだった。

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