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【第一部完結】(サークルクラッシャーの)私が旅に出ようとしたら、 いつのまにか異世界の旅行会社に就職してました  作者: キサキエム
第一章 新しい環境というのは、気づかない間に疲れていくものである
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26話 飽きたら、寄り道もありだと思います


サバイバル生活がスタートして、一日半。

表面が硬いイチゴを卵のように割り、中の実に齧り付く。

うん、甘酸っぱくておいしい。

今朝採ってきたフルーツを食べながら、サバイバルについて考えているのだけれど…


これホントにどうやったら、帰れるのだろうか。

ネロの時は、暴れすぎて強制終了だったって、ネロが言ってた。

ネロの時は、半日。

私は、現在1日半。


これが、もっと続くのであれば、どうしても欲しいものが、いくつかある。

ほしい物その1は、拠点バージョン2。

昨日、寝てみて分かったことだが、ほんとに腰が痛い。

まだまだ、帰る予定がなければ、木の上とかに家を建てようかな。


ほしいものその2、塩。

甘味を手に入れた今、しょっぱいものが食べたくなってくる。

味のないカニもどきと帽子貝の燻製は、もしかしたら栄養はあるかもしれないが、とにかく味がしない。

とにかく、口の中の味を変えたい。

しょっぱい、酸っぱい、辛い、そこら辺なら何でもいい。

その中でも、一番手っ取り早く手に入りそうなのが、塩かなと。


うーん…

これから、あと1週間とか言われたら、さすがに欲しい物、二つを手に入れると思うんだけど。

欲しい、でもなぁ、欲しいなぁ

それを繰り返し、考えるのが面倒くさくなった私は、考えるのをやめた。


スカッとしたいな。

海は、入れないし…砂浜…森…木…

よし、ブランコ作るか。


という、良く分からない思考回路になったのである。

ブランコ、ブランコ!

ブランコを作るために材料を集めに行く。

と言っても、森に落ちてる、いい感じの板があればいい。


「今度は何を作るんだ?」

「ブランコを作ろうかと」

「…なぜ?」

「なぜって…さぁ?」


なんでだろ?

まぁ、こういう所に来たら、何かしら作って遊んで帰りたいよね。

人間の最低欲求を満たすと、今度は違う欲求が出てくるらしいし…

いいじゃん、ブランコでもいいでしょ。

ちょっと道に逸れてもいいだろう…と自分に言い聞かせ、ブランコづくりを始めた。


やるしかないという状況は、人間を成長させるもので、私のナイフの扱いは、一日で格段にレベルアップしていた。

木を平らに削り、座るところを作り、板の両端をヒモでしっかりと結ぶ。

私がぶら下がっても丈夫な木の枝を見つけて、ブランコのヒモ部分をしっかりと結んだ。


作るのは、1日半で培ったスキルで簡単にできたんだけど…

形としては、ちゃんとブランコ…。

これ乗っても大丈夫かな…

テンションが上がって、作ったはいいが、ちょっと不安になってきた。

よし、ネロ乗せてみるか。


「ネロ!」

「はぁ?」


はい、すみませんでした。

思いっきり睨みつけてきたよ、あの猫ちゃん。


仕方ない。

ここまで来たら、やってやる。

恐る恐るブランコの板に腰を掛け、体重をかける。

……

お?

おぉぉぉ!!

乗れてる!


少しだけブランコを漕いでみても、ヒモが外れることはなかった。

徐々に漕ぐ速度を上げていく。


き、気持ちいい!!!

ブランコに最後に乗ったのが、小学生くらいだったと思うけど、久しぶりに乗ってすごく楽しい。

自作したからかな、達成感もある。

海も見えるし、景色もきれい。

めちゃくちゃ、いいじゃん!


「ネロも来て!」

「俺はいい」

「いいから早く!」


ブランコに乗りながらネロを呼ぶ。

一緒にこの気持ちよさを味わいたいし!

そして、ネロはなんだかんだ言いつつも、私に付き合ってくれる。


ブランコをいったん止めると、ネロが仕方なさそうに、私の目の前に飛んできた。

飛んできたネロを、両手で捕まえて膝の上に乗せる。


「お、おい!」

「いくよー!しっかり捕まってないと、落ちるよ!」


ネロが、膝から降りてしまう前に、私はブランコを漕ぎ出した。

落ちるという言葉に、ネロはブランコのヒモと私の服を握った。

ブランコを前方向に60度くらいまで漕ぐ。


「ネロ、どう?」


漕ぎながら、ネロに声をかける。

ネロは、黙って景色を眺めていた。

綺麗な夜の色を輝かせて。


ブランコ、もしかしたら新鮮だったのかな?

だとしたら、少しはネロにお礼ができただろうか。

そう思うと、ブランコを作ってよかったって思う。

少し、寄り道して休憩するのもやっぱりありだよね。

そう思いながら、私たちはブランコを満喫するのであった。


ブランコに飽きるまで乗って、ふと思ったことはというと…

意外にモノづくり楽しかったな。

他にも作ろうかな。

ネロのほうを見ると、ネロはブランコが気に入ったのか、まだちょこんと乗っている。

気に入ってくれたみたいで良かった。

ああいうネロを見ると嬉しくなるんだよなぁ。


よし、他にも作ろう。

うーん

家もいいけど、その規模を作る前に、ベッドが欲しい。

寝るのを快適にしたい。

その後に、住む場所を快適にしていけば、いいんじゃないか?


木材を集めて、必要なら木を削り、組み立てるを、繰り返す。

そうして、黙々と作業を進めるのであった。


気付けばもう夜で、あたりは暗くなってきた。


ベッドを作り、テーブルを作り、椅子を作り…

……

思ったよりも快適な環境を作り上げたのである。


ネロはというと、いつの間にかブランコを降りていて、私の方を引きつりながら見ていた。


「お前、ここに住む気かよ?」

「そういうつもりは、なかったんだけど、作り出したら止まらなくなっちゃって。それに、いつ研修が終わるか分からないなら、自分で快適な環境を作るしかないでしょ?」

「…その必要はないと思うがな」

「え?」


ネロの視線の方に目を向けると、


「フェリシアさん!!」


数字で見れば、一日ぶり。

だけど、その優しい顔がすごく久しぶりのように思えた

あれ?でも少し焦ってる?


「チヒロが、そろそろ本気で島に暮らす準備を始めるぞって、ネロからの報告が来たので、お迎えにきました。」


ん?

もしかして、張り切って、いろいろ作りすぎた?

だから、ネロの顔があんなに引きつっていたのか!

というか、コスモスに帰るのを諦めて、ここに住むと思われた?

それは、諦めるの早くない?

まだ、一泊二日だよ!?


とはいえ、基盤を作る1日目はともかく、今日は割と楽しんだ気がする。

もう少しいても良かったかも、と思ったのもホントなんだけど。


「確かに、ずいぶんといろんな物が、出来上がってますね…」

「ちょっと楽しくなってきちゃって、熱中しすぎました」

「帰りましょう。」


私の言葉にフェリシアさんは、食い気味に来た。


何をそんなに心配しているのだろうか。

さすがに一生ここで暮らすのは嫌だし、ちゃんと帰るけど。

全く、ネロはなんて報告したのだろうか。


あきれながら、ネロの方に目線を向けると、ネロはブランコをじっと見つめていた。

私はネロの方へ向かって歩く。


「ネロ、今度はもっといいブランコ作ろうね」

「ふん」


私の言葉に、ネロはいつも通りそっぽを向くが、その口元は少し笑っていて嬉しそうに見えた。


こうして私の、1泊2日の研修旅行という名のサバイバル生活が終わったのである。

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