272話 令嬢を見つけたけど、思ってたのと違う?
プティテーラ全部を見ることが出来る場所。
それは、気球の上。
私とネロは、ナトゥラの観光案内所に向かった。
そこにいたのは、見覚えのある美しい女性。
その女性は、気球をボーっと見上げている。
「アルビナ令嬢、おはようございます。」
「…!あら、おはよう。チヒロ、ネロ。」
私たちに気が付いたアルビナ令嬢は、にっこりと微笑んでくれた。
「本当にいたな…なんで分かったんだ?」
アルビナ令嬢の方に近寄りながら、ネロが私に問いかけてきた。
「うーん…確証があった訳じゃないんだけど、こう…何かを背負うってなった時って、その全貌を見たくなるものじゃない?アルビナ令嬢が今後背負うものは、プティテーラとその人たち。だから、プティテーラ全体を見たくなったのかなって。」
「それで、ここか…」
「そう。プティテーラを全部見渡せるのは、やっぱり気球でしょ?気球を借りるためには、ナトゥラの観光案内所に来ないといけないから。」
アルビナ令嬢の近くまで来て、私とネロはアルビナ令嬢に微笑んだ。
アルビナ令嬢は、不思議そうに首を傾げる。
「どうしたの、二人とも。朝から、楽しそうね。」
「アルビナ令嬢こそ、こんなに朝早くから、どうしたんですか?」
質問を質問で返してしまったけど、アルビナ令嬢は嫌な顔一つしなかった。
「私?プティテーラという世界がどういう所かもう一度見たいと思ったのよ。」
やっぱりだな。
「それで?二人はこんな所で何を?」
「私たちも、プティテーラを見たくなったんです。」
「二人が?」
「はい。」
「そう、一緒ね。」
アルビナ令嬢、さっきから、ずっと笑顔だなぁ。
気球を見て、何か吹っ切れたとか?
いや…気球を見て何が吹っ切れるのだろう?
ちょっとだけ触れてみてもいいかな…?
「アルビナ令嬢?」
「なぁに?」
機嫌もよさそうだけど…
「アルビナ令嬢、婚約おめでとうございます。」
「え?」
「改めて、きちんと言いたかったので。」
「あら、そうなのね。…ありがとう。」
笑顔…
私とネロは、顔を見合わせて首を傾げる。
昨日のことが原因でシン王子の元から逃げたわけじゃないのかな?
「改めて言われると、やっぱり照れるわね。」
「アルビナ令嬢、大丈夫ですよ。昨日も、凄く照れていらっしゃいましたから。」
「な、そんなことないわ。昨日は、ちゃんと私の務めを果たしたもの。」
確かに、アルビナ令嬢は立派にパーティの主催を果たしていたけれど、それはシン王子が来るまでだと思う。
シン王子が来てからは、顔真っ赤だったし、終始、シン王子を捌くので精一杯になっていました…とは言わない方がいいかな?
「そうですね」
「…なに?何か言いたいことがあるのかしら?」
なぜ、そこを追及してくるの…?
「いえいえ、昨日のアルビナ令嬢がとても可愛らしかったな…と思い出しただけですよ。」
「な…どこをどう見てそう思ったのかしら?」
だからなぜ、そんなにケンカ腰?
「…アルビナ令嬢が、シン王子に抱かれて顔を真っ赤にしているところとか…ですかね。」
「褒めてないわよね…それ。」
ジトっとした目が私の方を向いている。
「いやいや、可愛らしかったのは確かですよ、ね?ネロ。」
「なんでそこで、俺に振る?」
「男性の意見も必要かと思って…」
「ここで、男の意見なんか言ってみろ。火に油だ。」
「そこをなんとか…」
「自分で何とかしろ。」
アルビナ令嬢の前で、ネロとこそこそと言い合いをする。
すると、フフッ…と笑い声が聞こえた。
「アルビナ令嬢?」
「相変わらず、二人は仲がいいのね。」
「それ…何度も言いますよね…」
「だって、本当にそう思うんだもの。」
笑いながら言うアルビナ令嬢を見て、楽しいのならもういいやと思ってしまった。
「ふぅ…」
「笑いを提供できて、良かったです。」
「あら、不機嫌ね。」
そこまで笑われれば、それはそうでしょう。
「…そうね。昨日の私は、照れていたかもしれないわね。」
「え?」
「照れていたと言っているの。」
そんなにどや顔されながら言われても…
「だって、シンがあんなにストレートに言葉を伝えてくることがなかったんだもの。そんな耐性持ち合わせていないわ。照れるに決まっているでしょ?」
あぁ…はい。
「それにしても、シンの奴。あんな言葉を使うことが出来たなんてね。ビックリよ。」
アルビナ令嬢が知らないだけで、裏では、シン王子はアルビナ令嬢に対して甘々でしたけどね。
「それに、シンに言われて改めて実感したわ。シンと婚約するということが、どういうことなのかを。ずっと言われてきたことだったけど、シンに言われてそれが実感できた…」
「嫌なんですか…?」
「なんで?」
「なんで…って。」
「アルビナ!ここにいたか。」
アルビナ令嬢がシン王子の元から去ったから…
その言葉は、遅れてきた王子様によってかき消されてしまった。
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