25話 食べれるものにありつくのは、大変
朝、とても気持ちのいい、スッキリとした朝である…そんな訳でもなく体中が痛い。
穴の中は、地面が土で柔らかい方だし、ベッドになる、柔らかい素材の葉っぱも敷いたが、いかんせん寝心地が悪い。
というか、昨日砂浜でネロと話した後、どうやってここまで戻ってきたのか記憶にない。
んー、寝ぼけて戻ってきたのかな。
そういうネロは、まだ丸まって寝てる。
ニコニコしながら、見つめていたが、ふと何かが頭に引っかかる。
ん?なんか忘れているような…
ちょっと待って、燻製器の火を放置してないか?
慌てて、穴の外に出て燻製器を見る。
というか、よかった、燻製器が燃えてなくて。
中を覗いてみると、カニもどきも帽子貝も、ちゃんと水分が飛んでて上出来。
火も、もともと小さい火を入れていたから、自然に消えたんだろうな。
かまどの火は、火の番をしてなかったから不安だったけど、火は消えてない。
よかった。
また、あの火起こしをするのは嫌すぎる。
まぁ、誰も見てないのに、火をつけっぱなしにするのは、大分危ないけどね。
良い子の人たちは、絶対にやめた方がいいと思う。
もう一度、燻製器の中を見て、カニもどきの燻製を口の中にいれた。
…やっぱり味ないな
カニもどき、おいしく作れなくてごめんね
ただ、燻製にしたカニもどきと帽子貝が手に入ったため、すぐに食料に困ることはない。
余裕があるうちに、またなにか確保しに行こうかな。
海か、森か。
私、銛やってみたかったんだよね。
朝早いし、銛らしきもの作ってみようかな
材料は、ナイフと鉄棒くらいの太さの木の棒と、ヒモ。
作ると言っても、ナイフを木の棒の先端にヒモで括り付けるだけなんだけど。
だけど、サバイバルでよく見る、銛に、テンションが一気に上がった。
ネロをまだ寝かせておいてあげたい気もするが、一人で海に行って、迷惑かけたらそれこそ大変である。
仕方がない、起こそう。
「ネロ、起きて」
「…なんだ」
「海に行きます」
「…本気か?」
ネロは、短い前足でコシコシと目を擦る。
まだ夢の中なのか?
「ほら行くよ」
ネロの右前足を掴んで、外へと向かった。
光が当たってキラキラとしている水面。
昨日も思ったけど、ほんときれいな海だよな
潜るために、服を脱ごうとすると、ネロが私の腕をつかんでくる。
「なにしようと、している?」
「潜るから脱ごうと思って。服濡れたら困るし」
「本気で潜るのか?」
「え?だめなの?」
ネロは大きくため息を吐き、私の腕を離すとクルッと後ろを向いた。
…ん?なぜ?
まぁいいかと思い、上はオフショルの長袖を脱ぎキャミソールに、下はそのままハーフパンツで海に入った。
今思うと、サバイバルしに来て、なんでこんな服装なのかとなるが、仕方ないじゃないか。
フェリシアさんに起こされて、そのまま、ここに連れてこられたのだから。
辛うじて、丈の長い上着を入れておいてもらえてよかったわ、ほんとに。
そして、私は海の中に潜り、光速で陸上に戻った
あれは、何なのだ。
ネロを捕まえて睨みつける。
こいつ気付いてたな。
ネロは笑いをこらえるかのように丸まっていた。
「ちょっと、あんなにデカいなんて聞いてない」
「言って無いからな」
透き通る海の中は、地獄絵図だった
とにかく、巨大魚がひしめき合っていた。
そして、海の中で、しっぽでビンタをし、ヒレでチョップをかます。
銛で突くなんてものじゃない。
これは、私が丸呑みされる未来しか見えなかった。
「言ってくれればよかったじゃん」
「昨日のマウントクラブの大きさで分かるだろ…」
マウントクラブ?
カニもどきか!カニもどきはそんな名前だったのか。
マウントって、あのハサミの大きさが、そういうこと?
ハサミが大きかったら、強そうみたいな、そういう。
……
大きければいいってもんじゃないでしょ。
海の中の巨大魚たちには、むしろ、食べるとこ多くなって良かったくらいにしか、思われてない気がする。
せっかく服を濡らしてまで入ったのに、銛経験できなかった、残念。
拠点に戻り、濡れた服を脱いで、丈の長い上着を着る。
濡れた服は、燃えないように気を付けながら、かまどで乾かしておこう。
めちゃくちゃ丈が長くて、ワンピースみたいになっている。
むしろ、一回濡らすことを想定し、用意されたのかと思うほどだ。
さて、海はダメだとわかった、ということは森を攻めるしかない。
「ねぇ、ネロ」
「なんだ」
「このきのこ食べれるかな?」
紫色の斑点が付いたキノコを見つめながら、ネロに問いかける。
「……あのな、さっきからなんで、いかにも毒です、と言っているようなキノコばかり、俺に聞いてくるんだよ」
「ちがうじゃん!いかにも毒です、って言ってるキノコしかないじゃん!」
海は、魚に食われかけたが、森ではキノコに苦しめられている。
紫の斑点キノコしかり、黄色と黒の危険信号ばっちりキノコ、何に主張しているのと思いたくなるショッキングピンクのキノコ。
毒々しい…
普通のキノコがあったかと思えば、キノコの裏側を見てみると、急に真っ赤になったり。
テレるな、恥ずかしがるな。
これまた普通のキノコかと思えば、触れようとした瞬間に尖ってきたり。
反抗期なのか?
ここにある普通に擬態したキノコたちは、思春期なのか?
キノコの何を見ても毒に見えるため、キノコ探しは断念したのである。
そしたら果物っぽいものがたくさん採れたわけで、灯台下暗しだった。
やはり、変わった見た目が多いのだが。
小粒なリンゴがブドウのように、たくさんついている房や、見た目はイチゴなのに、表面が硬かったり。
果物も元世界にはない物ばかりだった。
これらを木登りで採ってるとき、チラッとネロを伺うが、何も言わずに採るのを手伝ってくれているので、毒ではないのだろう。
キノコの時なんか、手を出そうともしなかったから。
拠点に帰り、果物たちを広げてみる。
小粒リンゴブドウを一つとって食べる。
「あまぁぁい!!」
1日ぶりの甘さに、喜びを感じる。
ネロも、それに齧り付き、夢中で食べていた。
まだ、お昼くらいかな…
思ったよりも、食糧探索が早く終わったのは、断念を決めるのが早かった探索のおかげだろう。
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