260話 令嬢は溺愛されているようですけど?
「あの…クラト公子?」
「なんだ?」
私は、どうしても気になって、クラト公子を引き寄せ、コソッと話をする。
「あの人が本当に、アルビナ令嬢のお父さんで、頑固とか、真面目とか言われている方ですか?」
「あぁ、ああ見えて、とても頑固だ。とくに、アルビナ嬢に関しては特にだ。さっきの見ただろう?俺の方を見て、お前はアルビナ嬢の婚約者となるんだ…分かっているだろうなって目で訴えて来ていた。あぁ…こわ…」
大げさなほど肩を震わすクラト公子を見て、首を傾げた。
確かに、アルビナ令嬢のことを本当に大事にしている感じではあったけど。
「あと、あの人、破天荒な人苦手なんだよ。」
「破天荒…?」
シン王子とか?
「公爵夫人も大概なのに。」
「シュルーク公爵夫人ですか?」
「そう。あの、ふわふわした感じがあの方の普通だから…」
パーティで大きく手を振ったりとか、駆け寄ってきたりとか、確かにあまりお目にかかれるしぐさではない気がするけど。
でも、一つ一つの動作はさすが貴族と言った感じだろうか…
とても美しい。
「そして、シュルーク公爵は、なんと言っても、月の一族が苦手ということで、有名なんだよなぁ。月の一族って、破天荒じゃん?」
え、そうかな?
シン王子は、まさにそれだけど。
他の人たちは、そうでもない気がするんだけど。
というか、月の一族のこと苦手なの?
「そのうち分かるかもな。」
それは、分からなくてもいいかもしれない。
分かるということは、何かに巻き込まれる可能性がある訳だから。
全然、大丈夫。
「クラト公子、娘はどうだ?」
「え、いや、仲良くさせていただいてます…」
「そうか。」
シュルーク公爵が突然、声をかけてきたことにより、隣にいたクラト公子は、驚きすぎて心臓が飛び出していたかもしれない。
知らないけど。
「アルビナ、そろそろダンスパーティが終わるが、君は本当にいいのか?」
「はい。約束通りです。きちんと婚約をしたいと思っています。」
「なるほど。婚約ね…それは、いったい誰となんだろうな?」
鋭い指摘で空気がひりついた。
「さぁ。」
「まぁ、いいさ。楽しみにしているよ。アルビナ。」
「はい、お父さん。」
とてもいい笑顔で返事をするアルビナ令嬢を見て、シュルーク公爵は踵を返す。
「行くぞ、ロゼ。」
「えぇーせっかく、アルビナとそのお友達に会えたのに?」
「俺らがいると、彼らの気が休まらないだろ?今はそっとしてやったらどうだ?」
「そう…そうね。またね、アルビナ。それから、チヒロさん。ネロさん。」
シュルーク公爵夫人は、ナンナル王子とクラト公子の前で一礼をして、シュルーク公爵の方へと走っていた。
「はぁ…あの人、なんであんなに怖いんだ。」
「怖い?」
「目がやばいだろ。笑っていない…お前、アルビナのこと泣かすんじゃねーよって感じが伝わってくる。」
「ごめんなさいね、クラト公子。」
「いやいや、アルビナ嬢のせいではないでしょう。」
アルビナ令嬢のこと、本当に大切に想っているんだろうな…
シュルーク公爵は、シン王子よりもクラト公子の方が、アルビナ令嬢を幸せにできると思っているのだろうか…?
それとも、そろそろシン王子に任せるのは嫌になって、後は誰でもいいと言った感じなのだろうか?
…それは、ないか。
「それにしても、お二人とも綺麗だったよね。」
「シュルーク家の人たちか?」
「そうそう。」
ホールの中央辺りでまた賑やかな声が聞こえる。
また誰か来たのだろうか?
「また賑やかですね。」
「カップルが成立したんだろうな。」
え?
今の盛り上がりがカップル成立の合図なの?
もっと、ひっそりとやるものだと思っていたけど。
もう一度、盛り上がっている場所の方を見る。
そこは、お祭り騒ぎの様な賑やかさだった。
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