259話 シュルーク公爵とその夫人
アルビナ令嬢のお茶目な、でもシャレにならないシン王子への挑戦状に、大丈夫かなと思っていると、ホールの入り口の方が賑やかになる。
なんだろう…?
ネロの方を向くと、ネロも一緒に首を傾げた。
「賑やかですね。何かあったのでしょうか…?」
アルビナ令嬢の方を見ると、賑やかな方をじっと見つめている。
ナンナル王子とクラト公子も同様に。
えっと…何だろう?
「クラト公子、どうかしたんですか?」
「チヒロ、これから少し緊張するかも。」
え?
騒ぎの元がだんだんと近づいてきている…
もしかして、こっちに来るってこと?
「あ、いた、いたぁ。」
声の方を見ると、大きく手を振っている女性。
長い茶色ウェーブの髪を大きく揺らし、ニコニコと笑っている。
誰?
近くまで来て、アルビナ令嬢の前に着くとアルビナ令嬢の頭を勢いよく撫で始めた。
だから、どなた?
「アルビナ。あなたがこんなに大きなパーティを主催するようになるなんてね。」
「や、やめて…」
「もう、可愛いんだから。」
アルビナ令嬢は、やめてと言いながら、大人しくその女性に撫でられている。
首が取れそうなほど、グルグルと撫でまわしているけど…
撫でまわしている最中に、もう一人スラっとした男性がアルビナ令嬢の方に歩いてきた。
金色の短髪に、オレンジ色の瞳。
どこかで見たことあるような…
「もう止めてって言ってるでしょ。お母さん。」
お母さん?
この人が?
ふわふわふわとした女性らしい女性で、とにかく、ふわふわしたお姉さん。
この人がアルビナ令嬢のお母さんということは、このお隣の男性が…
「お父さんも来てくれたのね。」
「当たり前だ。いいパーティじゃないか。」
アルビナ令嬢の頭を撫でる男性に、あれ?想像と違うぞ?と戸惑ってしまう。
真面目で、頑固…?
「もう、撫でなくていいから。」
アルビナ令嬢がお父さんとお母さんの手を取り、そっと除ける。
「もう、私一応、仮面がフルフェイスなのによく分かったね。」
「当たり前よ。アルビナを見つけられないなんて、あり得ないわ。」
「当然だ。アルビナはどこに居ようと分からない訳がないだろ。」
…真面目で、頑固…?
「シュルーク公爵、シュルーク公爵夫人、お久しぶりですね。」
「お久しぶりでございます。」
ナンナル王子とクラト公子の方を見て、アルビナ令嬢のお父さんは、きりっとした顔に戻る。
「ナンナル王子、クラト公子。お久しぶりでございます。娘のパーティにお越しいただき、ありがとうございます。」
「シュルーク公爵は、相変わらず元気そうですね。」
「それは、どうも。」
アルビナ令嬢のお父さんは、辺りを見回し、ため息をつく。
もしかして、シン王子を探していた…?
まだ来ていないです…
「この後もパーティは続くみたいなので、ぜひ最後までいてくださいね。ねぇ、クラト公子?」
「…そうですね。ぜひ最後までいて欲しいものです…」
ニッコリとしている顔の目は、全く笑っていない。
クラト公子の笑顔は、引きつっていた。
「お父さん、お母さん。この二人を紹介するわ。コスモスの観光職員のチヒロとネロよ。」
「あぁ、あの初日のパーティの…」
その覚えられ方はどうなんだろう…
「コスモスから来ました、チヒロです。」
「ネロです。」
アルビナ令嬢のお父さんとお母さんにも、しっかりとお辞儀をする。
するとお父さんの方の雰囲気が少し柔らかくなった気がした。
「あの時も思ったが、今回はより綺麗なお辞儀だな。」
「そうね。すごく嬉しいわ。」
練習しておいてよかったかもしれない。
「初めまして。シュルーク公爵家当主、バルドル・シュルークです。」
「アルビナの母のロゼ・シュルークです。」
「体を崩して大丈夫ですよ。」
バルドル公爵の声で私とネロは、姿勢を戻した。
真面目とか頑固とか。
その片鱗が見えてこないんだけど…
この人が、本当に今回の話の中心なのだろうか?
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