254話 盗み聞き?だって立派な戦略
アルビナ令嬢の話が出たけど、ご本人はどこにいるのだろうか?
まだ、来ていないとか?
「あの、アルビナ令嬢は、もう来られているんですか?」
「アルビナ嬢?アルビナ嬢なら、ほらあそこ。」
ん?
え…?
ナンナル王子が指さす先。
動きやすいパンツ姿でテキパキと動き回る女性が一人。
「え?スタッフ仕事をしているんですか?」
「あぁ。やらなくていいと周りが言ったんだが、急遽、仮面舞踏会に変更したことを自分が考えたからと、やると譲らなくてだな。」
パーティの概要を知っているクラト公子が補足するように教えてくれる。
えぇ…
言われなかったら気が付かなかったかもしれない…
いや…スタッフ服を身にまとっても隠し切れないオーラがあるから、アルビナ令嬢だとはわからなくても、そのうち気になって聞いたかもしれないな…
「それに、動いていた方が落ち着くんだと。パーティに参加するよりも、パーティの奉仕をする方が、今はいいとアルビナ嬢が。」
アルビナ令嬢とクラト公子の婚約パーティのはずが、片やスタッフに扮して働いているとは誰も思わないだろう。
仮にも妻になる予定のアルビナ令嬢が働いている中、クラト公子は何を担当しているのかな?
二人のパーティだから、クラト公子も何かお仕事中だったりする?
クラト公子の方を見て、首を傾げると、ニヤリと悪い顔をしたクラト公子。
「俺がただ遊んでいると思ってるだろ?俺は、見回り兼挨拶回り。アルビナ嬢がしない分、会場を回ってきてほしいと頼まれて、一通り回ってきたところだ。ちゃんと仕事はしていたんだからな?」
「別に疑っていませんけど?単純に気になっただけです。」
「ほんとかぁ?」
「本当です。お仕事中に引き留めていたら、申し訳ないですから。」
クラト公子の、ニヤニヤとからかう視線がとてもうるさいんですけど。
気にした私がバカだった。
「悪い、悪い。俺の方の仕事は、とりあえず片付いているよ。ありがとな。」
人がいいって、ズルいなぁ。
それに、この人の場合、顔もいい。
何でも許されると思ったら大間違いだからな。
今回は許しますけど。
「私も何か手伝えることがあればいいんですけど。」
「アルビナ嬢は、正体を隠して、あの仕事をしているし、大丈夫だ。チヒロ達が今するべきことは、仮面舞踏会を楽しんでもらって、プティテーラをもっと知ってもらおうことだ。」
まぁ、何も知らない私が手伝っても、戦力にはならないだろうな。
それなら、クラト公子が言うように、プティテーラの良さを知って、コスモスに持ち帰るのが、私の仕事だろう。
「それから、パーティは情報戦だが、情報の宝庫でもある。壁の花をやっているなんて勿体ないんじゃないか?」
それを言われると、心が痛い。
私が仕事をしていないみたいじゃないか…
実際していないんだけど。
「壁の花をしつつ、あたりを観察しているのでいいんです。それに、秘儀、盗み聞きの術があるので。」
「ただの盗み聞きだろ、それ。」
ネロはうるさい
盗み聞きというのもバカにならないんだからね?
アルスの情報だって、盗み聞きをして手に入れたんだから。
「吹っ切れてるなぁ。」
「いいんです。向き不向きがありますので。私は、この格式高いパーティ内で情報の駆け引きをやる自信がありません。なので、そこは諦めて、私なりに情報を収集するんです。」
「それから、潔いな…」
ナンナル王子は、けらけらと笑っているし、クラト公子は苦笑いだけど。
まぁ、アルスの情報も盗み聞きというか、たまたま聞こえてきただけで、タダ運が良かったわけなんだけど。
「チヒロには、パーティマナーを意識しつつ、情報の駆け引きは無理だろうな。」
「よく分かってるね、ネロ。」
本当のことなので、何とも言えない。
「情報戦ならしたことあるが、ひっくり返されることも多々あったし。」
そうだね。
よく覚えてるね。
「でも、なんだかんだ良い情報集めてくるのも確かなんだよな。」
え?
「それ、分かる。的確なこと言うよね。」
ナンナル王子まで?
「俺も仕掛けられたことあるわ。なかなかのやり手だったな。」
あ、いや…
「もういいです。どんな気持ちになっていいか分からなくなります。」
飴と鞭の使い方がうまい。
もう、勘弁して。
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