24話 文字通り、世界が変わった
お腹もふくれて、明日に備えて寝るかとなるはずが…
私は現在、カニもどきの燻製を作っている
二人で、カニもどきのお湯茹でを食べていたのだが、
味のないカニもどきを食べ進めていくうちに気づいたのである。
これは絶対に余ると。
やっぱり、16本の足に左のハサミと右の鎌は多いって。
それなのに、あのカニもどきフィーバーのとき、カニもどきは、カニもどきを食べ続けていたわけで。
一体どこに、あのカニもどき達が入っていったのか全然分からない。
同類を口にいれて、異世界にでも飛ばしているのだろうか。
そんなわけで、この余ったカニもどき達を保存する方法を考えなくてはならない。
長持ちすると言えば、塩漬けや燻製。
ちなみにこれは、料理漫画の知識から引っ張り出してきている。
塩漬けは、まず塩がないから無理なのだが、燻製も、塩漬け工程いるんだっけ?
でも、煙で燻せばいいって書いてあったし、大事なのはそれのはず。
今回は燻製にしてみよう。
うーん、
まず、燻す前にカニもどきの水分を抜かないといけないのかな?
ついでに、帽子貝も燻製にしちゃおうかな。
乾燥させるにも、すでに日は暮れているので、かまどの傍に置き水分を飛ばしていく。
水分が飛ぶのを待っている間に、簡易的な燻製器を作る。
要は、煙がしっかり当たり、尚且つ煙が外に漏れないようにすればいいわけで。
拾ってきた枝とヒモを使って長方形の箱に組み立てていく。
そして真ん中ちょっと上あたりに、棒を入れて長方形を仕切る。
真ん中の棒の上に物を乗せられるようにヒモで結ぶ。
ヒモで大きい葉っぱを括り付けて隙間がないようにし、それを先ほどの長方形に付ける。
このとき、煙漏れることのないように、とにかく葉っぱで密閉する。
長方形を縦に使い、棒で仕切った下の部分に火を入れて、上の部分に、食材を乗せる。
これでいいかな?
なんかヒモが燃えそうで怖いけど、こんなもんでしょ、多分…。
簡易的な燻製器を完成させ、カニもどきと帽子貝を上の仕切りに乗せ、
下にはかまどから持ってきた、ちょっと小さめの火種を持ってきていれる。
これで放置。
味も匂いも付けていないけど、保存できればなんでもいい。
これで食料にも困らなくなるかな。
そんなことを思い、作業を終えると、ネロがいないことに気が付く。
あれ?どこいったんだろ?
ネロを探すため、いったん海の方に出てみると、砂浜に座って空を眺めているネロがいた。
「なにしてるの?」
「空を見ていた」
「こういうとこ来ると、人工的な光源が全然ないから星がきれいに見えるね」
「…あぁ」
私も、ネロにならって空を眺める。
真っ暗で、吸い込まれそうで、そんな終わりのない空間がとても澄んでいる
「ネロは、夜みたいだね」
「はぁ?…なんだ、それ。今は真っ暗だ。俺は濃い青の色なんじゃないのか?」
「それ、覚えててくれたの?それは、瞳の色を見てそう思っただけ。」
「うるさい。じゃあ、なんだよ」
私を見上げるネロを抱き上げる。
ネロは私に抱き上げられることに慣れてきたのか、睨みはするけど暴れなくなった。
「こんなに小さい猫ちゃんなのに、大きいってこと」
「はぁ??あ、おい、やめろって」
ネロの頭をグリグリと撫でると、短い前足で、私の手をぺしぺしと叩いてきた。
おぉ!かわいい、これは癒し。
一通りネロを撫でまわし満足すると、抱いたまま砂浜に横になる。
そうすると、空一面に星が広がっていて、まるで星を敷き詰めた絨毯のようだ。
星を輝かせる広い夜空に、静かな澄んだ暗闇の空間。
人に休息を与えてくれる優しい夜。
さりげなく見守り支えてくれる、そんな時間。
透き通るような濃い青の色、それがネロの瞳の色で、ネロの色だと思っていたけれど、
ネロは、夜そのものだな。
そのことに気が付き、思わず顔がにやけてしまった。
「何、気持ち悪い顔してるんだ」
「ネロは夜みたいに優しいね。」
「何言って…」
「ネロ、今日は1日助けてくれてありがと」
「何言ってるんだ。俺は何もしてないだろ」
「ネロこそ何言ってるの?危険があったら、助けられるように、ずっと見てくれてたじゃん」
「はぁ??勘違いも甚だしいな、お前。それに、何かあったら怒られるのは、俺だ。」
ネロは相変わらずそっぽを向くけど、しっぽが腕に絡んできた。
また顔がにやけそうになるが、必死で耐える。
そういう、ぶっきらぼうな言葉の中に、ネロの優しさが詰まっているってちゃんと気づけた。
研修1日目は、生きるために必死で、だからこそ小さいことにも喜びを感じていた。
元世界では、いろいろ揃っていたけど、こんなに自分で、何かやってやったと思える充実感はなかなかないと思う。
だって、生命を維持しなければならない状況なんて、そうそうないし。
いや、むしろあったら怖いし。
今日1日濃かったな。
まず、拠点探しでひたすら砂浜を歩き回って、死なないために水を確保した。
全然、火が付かない火起こしをして、ほんとに大変だったし。
ネロにも気を使われたし。
食料確保のために、カニもどきと戦ったし。
カニもどきの異様さ半端なかったのに、急に空飛んできて驚いたし。
あの採ったカニもどきを、もっとちゃんと料理できればよかったなぁ。
燻製楽しみだけどね。
そして、ネロといっぱい関わって、新たな一面をたくさん見た。
うん、1日楽しかったな
「ねぇ、ネロ。私の元居た世界ではね、こういう所に来たら、キャンプファイヤーっていうのをやるんだけど、私はよく花火やってたんだ。ネロも私のいた世界に行けるようになったらさ、今度一緒にやろうね。」
異世界に来て
世界が変わるだけで、こんなに気持ちが変わるんだと、改めて私は実感したんだ。
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