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242話 ただいま、カナリス


観光案内所に無事到着。

ラックさんに夜用気球を返さなければいけないわけだけど…


「この気球を返しに行かないといけないわけですよね…」


気球は、月の約束での冒険で大活躍してくれたおかげで、水でビショビショ、そこら中に傷が付いている。

言ってしまえば、ボロボロな訳で。

安全に気球を返せるようにと思っていたわけだけど、そううまくいかなかったなぁ。

これ、高いんだよね…

弁償かなぁ。

大丈夫かなぁ。

私の頭の中は、気球を見たラックさんの反応でいっぱいになっている。


「そっと、置いて帰るか。」


え?

それは怒られませんか?

さすがに、借りていた気球が不具合のまま置かれていたら、怒られる気がするんだけど。


「直接、返しに行っても怒られるぞ?」


どっちもどっちですか…

まぁ、怒られることは仕方ないと思うけど。


「いや、ラックは意外とネチネチしている。お説教が始まったらしばらくは解放されないぞ。」


シン王子の声が悪魔の声に聞こえる。

そう言われると、逃げたくなってきたな…

正直に言おう。

既に眠気がマックスなのだ。

お布団に入ったら、一瞬で寝る自信がある。


「ラックには、手紙を置いておこう。」


シン王子はとてもいい笑顔で言った。


「おぉ、お前ら帰ってきてたのか。」


すると、観光案内所から、ラックさんが出てきた。

終わった…

これは正直に言った方がいいよ。


「どうだった?夜のナトゥラは?」

「…楽しかったです。」

「そうか。ん?なんか疲れていないか?」

「いえ…そんなことは…」


すみません。

ラックさん。

ラックさんの笑顔が、今はとても眩しいです。


「気球はどうだった?」


ギク…


「ん?どうかしたか?」

「いえ…えっと…」


シン王子、シン王子何とかしてください。

シン王子の方を見ると、そっぽを向いている。

この人!

もしかして、何とかする気がないな?


「あの…」

「ん?」


いやぁぁぁぁ。

ラックさん、そんな目で見ないでください。

心が…心が痛い。


「ラック。お前に言わないといけないことがある。」

「言わないといけないこと?なんだ、それは?」


シン王子は、意を決し、大きく息を吸う。


「気球は壊れてしまった。」

「え?」

「気球が壊れた。」


シン王子が言葉を発して、無音の時間。


「お、お前…」

「えへ?」

「えへ…じゃない。お前がかわい子ぶっても可愛くねぇんだよ。」


ラックさんは、気球の方に走り寄り、頭を抱えている。


「お、俺の愛機が…こんなにボロボロになって、返ってくるとは…」

「あの、ラックさん、本当にすみません。」


ラックさんは、私の方をじっと見てくる。

…なんだろう?


「怪我はないのか?」

「怪我…?気球は、怪我だらけですけど…」

「違う。チヒロとネロには怪我はないのか?」


私たちのこと?

それは、もちろん…


「ありません。」

「…そうか。ならいい。」


え、いいの?


「俺が大切に機能を加えた夜用気球で愛着はすごくあったが、本来乗ってもらうための物だ。傷一つなく帰ってくることはあり得ない。だがら、精いっぱい使ってもらえたのなら、こいつも本望だろう。君たち二人が、怪我無く帰ってきているのなら、役目はしっかり全うしたと言ってもいい。」


ラックさん…


「そうか、なら良かった。ラック、気球を貸してくれてありがとう。俺たちはこれから予定があるから、ここで失礼してもいいか?」

「…シン。」

「……な、なんだ?」


シン王子の顔は、引きつっている。


「お前はいいわけないだろう。」

「なんでだよ。この二人を安全運転でここまで運んだのは、一応俺だぞ?」

「そもそも、無茶な運転をするなと言っただろうが。」

「無茶な運転をしなくては、生還できなかったんだよ。」

「そこは、何とかしろよ。」

「何とかなるか!」


おぉ…

シン王子は、疲れマックスで気持ちが高ぶっているし、ラックさんも、シン王子と言い合いをするときは、精神年齢が一気に下がる気がする。


私とネロは、二人の言い合いを見つめながら、カナリスに帰って来たことを実感するのだった。

読んでいただき、ありがとうございます!


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