236話 しりとりも鬼ごっこも奥が深い
「お腹もいっぱいになったことですし、出発しますか?」
人として何か負けたような気もしたが、そんなことは、もうどうでもいい。
周りを気にして食べるご飯など、美味しくないんだから、上品に食べようと思ってもできる物じゃない。
「そうだな。」
目指すは気球が置いてある場所。
なんだけど…
歩いても、歩いても同じ風景。
これ、行きの時も思ったんだけど、歩いてるだけって、結構暇なんだよね。
行きはワクワク感があったが、帰りは疲労いっぱいだからね?
なんかこう…瞬間移動的なものが欲しい。
…いや、そんなものがあったら、楽をして、この場に来れてしまう。
それはダメだよなぁ…
それにしても、歩いているだけって飽きる…
あ、そうだ。
私はいいことを思いつき、ネロの方を見る。
「ねぇ、ネロ。」
「なんだ?」
ネロは嫌そうな顔で、私を見た。
「なんで、そんな顔をするかな?」
「チヒロの、その顔は碌なことじゃない。」
「そんなことないって。」
「そんなことある。」
少しは話を聞いてほしい。
全く聞く耳持たず。
「ただ歩いているだけって暇じゃない?」
「別に。」
「だからね、」
「おい、俺の話を聞けよ。」
「しりとりでもして遊ぶ?」
「……遊ばない。」
ちょっと、今遊ぼうって言う流れだったよね?
あれ?
「馬鹿か?口を動かすなら、足を動かせ。」
「どこの悪徳業者なの?不当労働で訴えてやる。」
「いいぞ、やってみろ。」
ギャイギャイと二人で言い合いをしていたが、シン王子の生暖かい目を感じて気まずくなる。
「そんな目で見ないでもらっても?」
「いいじゃないか、面白いぞ?」
「面白くないです…」
「全くだ。」
こういう時ばかり、意見が合う。
「そうか。そういえば、しりとりというのは、どんな物なんだ?遊びと言っていたが?」
おっと?
シン王子は、しりとりをご存じじゃないのか。
「しりとりはですね。言葉の最後を次の言葉で繋いでいき、繋げなくなった人が負けというゲームですね。例えば、しりとりと私が言ったら、次の人がりんご、そしてまた次の人が、ゴマ…みたいな。コインというように、ん…で終わる言葉は次に続けられないので、負けになります。また同じ言葉を言っても負けですね。」
「ほう。面白そうだな。言葉を覚えるにはちょうどいい遊びだ。」
シン王子は、興味深そうに、うんうんと頷いてくれる。
これだよ、ネロ。
「私、子どものころは、しりとりでよく遊んでいたんですよね。」
「他にはないのか?チヒロの世界ならではの遊び。」
他かぁ…
なにで遊んでいたかな?
記憶の薄れた小さい頃のことを思い出しながら、一つ一つやっていたことを出していく。
「私、インドアもアウトドアも半々くらいで遊んでいたので、外での遊びなら、鬼ごっこ、かくれんぼ、ケイドロ、ボールでも遊んだりしましたし…中での遊びなら、ボードゲームとかカードゲームとか。あと、けん玉、コマ、カルタなど、昔の遊びをよくやってましたよ。」
「聞いたことのない遊びが多いな。鬼ごっこというのは?」
「鬼ごっこは、鬼を一人決めて、鬼は逃げている人を追いかける。鬼にタッチされてしまった人は、今度自分が鬼になって、追いかけるんです。一般的な鬼ごっこはこんな感じですね。他にも、高オニとか色オニとか種類がいろいろあるんです。」
「追いかけっこみたいなものか?」
「まさにそれですね。」
追いかけっこにゲーム性をプラスした物。
「楽しそうだな。鬼ごっこというのも。」
「楽しいのもそうなんですけど、鬼ごっこって、バランスよく体が鍛えられるみたいなんですよね。ゲーム性もあるから、頭も使うし。山などの不安定な所でやると、体感も鍛えられます。もちろん、追いかけっこですから、体力もつきますし。」
「遊びの中で体を鍛えるのか。先ほどのしりとりと言い、画期的だな。」
「そうですね。遊びの中で体を鍛えたり、頭を使ったりできるので楽しくできるんじゃないですかね。それに、大人になっても、鬼ごっこやしりとりと言った遊びは、体や頭を鍛えるにはちょうどいいんですよ。」
子どもの時にやったゲーム性より、よりハードな設定にすることで大人も楽しめる。
それが、いいところだよね。
「なるほど。今度、こっそりプティテーラでも広めてみるかな。」
シン王子は真剣な顔をして、考え出すので、私はその様子を黙って見守ることにした。
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