233話 焦るときほど休憩を大事に
「ここでやることは、やった。急いで気球まで帰るぞ。」
また、あのマグマのような泉を通り、炎の滝、長い岩の道、小さな海、岩の道と戻り、気球まで行かないといけないわけね…
また、北から南へと縦断するわけね…
気が重い。
正直、とほほ…と言った感じである。
精神的にも物理的にも道のりが長すぎる。
帰りは、ただまっすぐに帰るだけと分かっているんだけど、それが一層たいへんというか。
だって行きは、どんな所だろう、どんなものが宝だろうとワクワクとドキドキでアドレナリン?がドバドバと出ていたが、帰りは急いで帰らないといけないだからね?
あの美しい光景を頭に浮かべ、モチベーションを上げるが如何せん道のりが長い。
何時間たったかは、全く分からないけど、マジで歩きっぱなしだから。
「今、エンゲルストラートに入ってどのくらい時間が経ったんですかね。」
「結構経っているだろうな。カナリスでは、世界の入り口から、セレーネギアまで歩くと約六時間ほどかかる。単純に見たら、世界の入り口とセレーネギアの距離は、エンゲルストラートから炎の滝と同じくらいの距離だ。途中で休憩や、考える時間も取ったから、行きに六時間以上はかかったと言ってもいいんじゃないか?」
ろ、六時間…?
私たち、六時間かけて歩いて来て、これから六時間かけて気球まで戻ると言う事か…
あはははは…
なんか余計にどっと疲れたけど?
それもそのはずだな。
活動時間がそろそろ二十四時間を超えるんじゃないかな?
昨日の朝にアルビナ令嬢が訪ねて来てからずっと寝ていないし。
「ネロ、大丈夫?」
「あ、あぁ…平気だ…」
眠そう…
マグマの泉、岩の扉、炎の滝を超えて、現在は長い長い岩の道。
うーん、このままだと効率が悪い気がする。
ここから、また約六時間を歩くのなら、なおさら。
「シン王子…」
「休憩にするか?」
「あ…それは…」
シン王子の焦る気持ちが見える。
一刻も早く、ここを抜けて、アルビナ令嬢の所に行きたいんだろう。
だけど、シン王子も休憩を提案してくれているんだ…
この人、本当にすごい…
「はい。休憩にした方がいいと思います。このままではより時間がかかります。いったん休んで再出発した方が、効率がいいはずです。」
眠い、疲れたなどの時にやったことなど、たかが知れているのだ。
無理をして、物になるのは今までの積み重ねがある人だけだと思う。
今回に積み重ねなんて関係ない。
ただ、寝ていなくて、さらに歩き疲れているだけ。
なら、仮眠をとって万全にした方がいいはずだ。
「わかった。ここで休もう。」
そう言ったシン王子からも、疲れが見えている。
誰よりも、気を張っていたんだろう。
それは、疲れもするって。
その場でしゃがみ込み、グッと体を伸ばす。
ネロはすでに丸まって夢の中だ。
シン王子も地面に座って、ゆっくりと寝息を立て始めた。
私は、多分寝てしまうと起きれなくなりそうだから、休むだけにしたいな。
眠気に勝てなかったら、仕方なく寝るけれど。
途中で、寝てないがために足を引っ張らない様に、しっかりと休みを取る。
そう言えば、ずっと歩きっぱなしで何も食べてない。
本当に、悪循環だな。
二人が起きたら、ラーメンを作ってあげよう。
これから、帰るにあたって、ただ戻るだけならば何事もなくていい。
ただ、イレギュラーが起きた時、対応できるだけの頭は残しておきたい。
ボーっとしながら、行きに辿ってきた道を考える。
何がイレギュラーになりそうか…その場合、どう対処が出来そうか。
ここでもらった休憩を無駄にしない様に。
昨日、日が沈んでから、エンゲルストラートまでを二時間、エンゲルストラートから月の約束の地まで八時間として、もう十時間は立っていることになる。
ここから、六時間で戻ったとして、夜には、間に合うだろうけど。
きっと、プティテーラの太陽は登り、もう夜は明けているのだろうな。
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