231話 夜を照らすペレの宝石
一直線に延びている道を歩き、奥の空間へ。
無事、三人とも、このマグマ地帯を超えて、道を歩ききることが出来た。
「怪我はしていないか?」
「私は大丈夫です。シン王子は、平気ですか?」
「俺は、なんともない。」
よかった。
異世界の王子にけがを負わせるのもダメだが、いち友人としてもシン王子に怪我をされると困ってしまう。
本当に良かったな。
そして、ちらりとネロの方も確認する。
「なんだ?」
「ネロは、怪我してないよね?大丈夫だよね?」
空を飛んでいたから、怪我はないと思うけど…
でも、ネロって自分が怪我をしても、自分から怪我をしたなんて言わないと思うんだよね。
だから、確認しておかないと。
「俺が?しないだろ?」
「分からないじゃない。跳ね返ってきた水が思ったよりも高く飛んで、ネロにあたっていたら怪我しちゃうでしょ?」
「はぁ…してない。安心しろ。」
私の心配に呆れたのか、大きくため息をついたが、今度は私を安心させるように、しっかりと私を見て答えてくれる。
ネロも怪我をしていない…
良かったな。
「安心するな。まだ、目的地にたどり着けていない。」
「そうだ。この奥に進んでみないと、まだ分からない。」
一本に続く道の先にあったものは、狭い穴。
クヴェレ殿下の話は、もう続いていない。
そして、何となく雰囲気なんだけど、この先に月の約束の宝があるんだろうなと感じだ。
ネロとシン王子も同じなのか、緊張感はあるが、期待感が勝っているように見える。
「行くか。」
「はい。」
ゆっくりとその穴の中へと入っていく。
中に入ると岩の空間。
「……」
「うわぁ…きれい。」
穴の中は、そこかしこが黄緑の光を出し輝いていた。
暗闇を照らす眩しい光。
さっきのマグマの泉も眩しかったけど、眩しさの雰囲気が全然違う。
マグマは荒々しく燃え上がる炎だとすれば、この緑の光は、清廉で静かに輝く星。
それは、まるで夜空の中に光る星空の様に。
「この光って何ですかね?」
「分からない。だが、洞窟内のいろんなところで光を放っているな。」
あたりをキョロキョロと見まわし、シン王子に問いかけてみる。
シン王子も見たことがないみたいだ。
ネロは、その光の下に近づき覗き込んでいた。
「ネロ?」
「よく見たい。チヒロ、明かりの刻印を貸せ。」
ネロは、光の下を覗き込みながら、私を手招きしている。
「はいはい。」
明かりの刻印を再び灯らせる。
私も一緒に観察しようと、ネロの近くにしゃがみ、光の元に、明かりの刻印をあてた。
「石…みたいじゃないか?」
「うん。みずから光を出す石…」
しかも、光っている部分は透明度が高い。
これって…
「宝石…」
「これが、マニがアイネに送ったものなのか…。」
財宝よりも輝き、美しい白布よりも美しく、珍しい獣の皮よりも珍しい。
確かに輝いていて、とても美しく、プティテーラでは珍しいものなのだろうな。
…?
月の約束の結末が分かったというのに、シン王子はどこなのだろうか?
あたりを見回してもいない。
さっきまでいたのに。
「シン王子?あ、あんなところにいる。」
私たちとは少し離れたところにシン王子は立っていた。
「シン王子?」
「本当に月の約束の終わりには、太陽があったみたいだ。」
え?
シン王子が見つめる先には、さっきまで見ていた黄緑色に光る石の何倍もの大きさのものが、置かれていた。
さっきの比じゃないほど眩しい。
「先ほどまでの小さな光ではない。この暗闇を照らすのは、まさに太陽の石ではないか?まるでここだけ、昼みたいだ。あまりにも美しいな。」
そう、ここまで薄暗い中歩いていた私たちにとって、この光はとても眩しく、美しく見えた。
太陽が暗闇を照らす、それは当たり前ではない。
「マニがアイネにこれを渡した理由が分かった。この光は唯一無二だ。マニは、アイネに君は俺の太陽だと言ったんだ。そして、マニは知っているんだ。月は、太陽を導く、存在であると。」
シン王子がその石を見つめる様子は、まさに愛しいものを見つめる瞳で…
シン王子はきっと、アルビナ令嬢のことを思い浮かべているんだろう。
その石に近づいて、観察してみる。
本当に眩しいな…
でも、明るくて落ちつく暖かい色。
…あれ?ここに何か書いてある…
「ペ…レ…?」
「どうかしたか?」
首をひねっていると、ネロがそばに来る。
「ここに書いてあるの。この石の名前かな?」
「ペレ…」
ネロは一度、石の方に目を移し、穏やかにほほ笑んだ。
「ネロ?」
「あぁ、これは、この石の名前だな。」
ネロは、何か懐かしいものを見るように、その石を見つめていた。
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